初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて問題なく帰ってくるためのメンテナンス方法を紹介する連載企画。続けて読んでもらえれば、ライド前に必要な準備はもちろん、ライド中のトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。無事に100㎞ライドを終えたころには脱・初心者です!
速く・遠くへ走るために快適な変速は不可欠!
みなさん、変速機の調子はいかがですか? だんだん調子が悪くなってきて、チェーンからカラカラ音がしてるのに「こんなもんだろう」とそのまま乗っている人もいるかもしれません。そんな状態では、多段変速で気持ち良く効率的に走ることができるスポーツバイクの持ち味を台無しにしちゃってます。購入したばかりのときのように、「スチャッ、スチャッ」と気持ち良く切り替るのが当たり前と思ってください。地形や速度に応じた小まめな変速は、体力を温存しながら、速く・遠くへ走るために重要なファクターですから、ロングライドにはバッチリ変速が決まる状態でチャレンジしましょうね。変速がうまく決まるための条件を、次の2つの要素に分けるとメンテナンスがしやすくなるかなと思います。
①パーツ群に磨耗や不具合がなく、正しく取り付けられている
これは変速が“ビシッ”と決まる大前提になります。前後ディレイラー の取り付け位置と動作範囲の調整、それにワイヤーの長さの調節と端部の処理は、納車時にショップがばっちりやってくれているのでビギナーの方がいじる必要はないです。ホイールやスプロケットを交換すると再調整の必要が生じますが、ショップがみてくれるはずです。熟練のメカニックはワイヤーの処理など変速調整には独自のノウハウを持っていますから、プロに任せるのが一番です。
ただし、チェーン、スプロケットやチェーンホイールのギアが摩耗していると、変速の調子が悪くなります。チェーンの交換時期は3000~5000km走行したらと言われていますが、メンテナンス頻度や走り方で大きく変わってきます。伸び具合を調べて交換時期を知るチェーンチェッカーという専用工具が各社から出ていますので、これは持っておきましょう。僕はパークツールのチェッカーを使っていますが、シマノからも同様の製品が出ています。
気付きにくいですが、チェーンは案外伸びるものです。よく走る人で年に1、2度、あまり走らない人でも1~2年に一度は交換の必要が生じると思います。伸びたチェーンは変速の調子が悪くなるだけでなく、ギアの摩耗も早めてしまいますので、そこまで頻繁にする必要はないですけど、ときどきはチェーンの伸びをチェックしてあげてください。専用工具を買えばチェーンの交換は自分でできますが、はじめはショップにお任せしてください。なにかあったら事故に繋がりかねない大事なパーツですからね。
②変速時に各パーツが正しく動いている
以前紹介したチェーンとディレイラーの洗浄・注油は、変速系統のパーツが気持ち良く動くためにも大事なメンテナンスです。ビギナーの方も空気圧管理と洗車だけは早く覚えて、頻繁に行ってくださいね。
電動ではないワイヤー式の変速機では、ワイヤーが抵抗なく上手く動くことが変速の調子を良い状態に保つために欠かせません。納車から数カ月乗ると、いわゆる「インナーワイヤーの初期伸び」が出て変速が少しもたつくような場合があります。実際にインナーワイヤーが物理的に伸びているのではなく、アウターワイヤーのゴムの皮膜が縮んだり、アウターワイヤーのキャップが奥まで差し込まれたりするのが原因で、ショップの組み付けが良ければ不具合はほとんど出ないこともあります。購入から数カ月後の初期点検でチェックしてくれますので、特に不具合を感じなくても、指定された時期に必ずショップに持っていきましょうね。
シフトワイヤーの潤滑を滑らかな状態に保つために、インナーワイヤーへのグリスやオイルの塗布は効果的です。新品の状態ではアウターワイヤーにグリスが封入されているので必要ありませんが、しばらく乗った後は注油が必要なポイントです。
シマノが推奨しているケーブルグリスやシリコン系のオイルがアウターを傷めないのでおすすめですが、僕が信頼するメカニックは、チェーンオイルを使っていたので、これでも良いでしょう。
注油ポイントは以下の3点です。
①シフトワイヤーがチェーンステーとリアディレイラーを繋いでいるRがキツい部分
②BB(ボトムブラケット)裏側
③シフターへの入り口
※ワイヤーが内装式の場合は、②の「BB下」を除いた2点でOKです。
①への注油は、リアをローギア(直径が一番大きなギア)に変速させ、シフターを空打ちしてトップギアのポジションにすることで、ワイヤーをたるませます。こうすると、チェーンステーのアウター受けからアウターワイヤーを外すことができます。
②のBB裏側もワイヤーをたるませているときに注油します。
③のシフター入り口は、ブラケットカバーをめくります。
汚れがひどい場合は、パーツクリーナーや泡タイプのクリーナーで洗浄してから塗布してください。グリスやオイルは薄く塗りましょう。あまり多く塗ってしまうと、汚れを呼んで逆効果になってしまいます。シリコン系のオイルは引きが軽いですが落ちやすいので、メンテナンス頻度の高い方にオススメです。ワイヤーが外装式の場合は、露出部分が乾かないように見えている部分全体にも、薄く注油してあげましょう。
変速機が「まあ、なんとか変速する」状態と「気持ち良く正確に変速する」状態では、走りの気持ち良さも大きく変わってきます。変速の調子が悪くなったと感じたら放置せず、しっかりメンテナンスしてあげましょうね。
次回はワイヤーの張りとディレイラーハンガーの調整を説明します。
●バックナンバー
第1回/空気の入れ方
第2回/簡単なチェーン掃除法
第3回/水を使わずチェーンを洗う(準備編)
第4回/水を使わずチェーンを洗う(実践編)
第5回/出先でのパンク修理に必要な七つのギア
第6回/確実実にサッと行う出先でのパンク修理法
第7回/ねじ、ナメたことない? 正しい工具の選び方
第8回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(前編)
第9回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(後編)