3つのスキルでコーナリングの達人になろう(外足荷重編)~自転車の処方箋#14

「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。今回は、ロードバイク2年目のTETSUさんからいただいた「コーナーを見るたびに手元に力が入り、足がすくんでしまう」という悩みをいただきました。前回の「①クランク水平でのコーナリング」に続き、今回は「②外足荷重のコーナリング」を紐解きます。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!

ビシッと決まるとクセになる! 外足荷重のコーナリング

ツール・ド・フランスをテレビで観戦していると、胸を低く片足を突っ張って颯爽とコーナーを抜けていく選手たちに思わず惹かれてしまいますよね。このライディングこそ、今回紹介する“外足荷重”のコーナーリングテクニックです。

彼らが外足荷重でコントロールする大きな理由は、レース中のハイスピード域でコーナーへ侵入するシチュエーションにあります。具体的に時速何kmで入ると外足荷重になるか? この部分に関しては体重×スピード、そしてコーナーの角度や路面状況によって条件が異るため、一概に時速何kmとは言えません。ただし、大きな横G(※脚注)で車体がカーブの外側へブレてしまう動きを外足で踏ん張ることにより、安定できるのです。

※注釈:スピードを出した状態でカーブへ侵入すると、遠心力により車体と身体が外側へ膨らむ慣性力

今回紹介する外足荷重のコーナーリングが得意なシーンは大きく以下の2つです。

  • レースなどで遭遇するスピードが落ちない状態でのきつめのコーナーリング
  • 下りきった先の直角コーナー


難しい理論はさておき、この外足荷重のフォームは何かに似ている…そう目線以外はほぼほぼライダーキックのフォームなのです。つまり迷ったらコーナーから飛び出すようにライダーキックを使えば、外足荷重の踏ん張りが利くのです

外足荷重のポイントは5点

②-1. 外側の足を伸ばす
②-2. 内側の足はコーナーラインに沿うイメージで開く
②-3. 顔は地面に垂直に、目線はコーナーの先へ
②-4. 胸を低くし、下ハンドルを握る
②-5. 内ヒザでバランスをとる

では、それぞれのポイントを解説していきましょう。

②-1. 外側の足を伸ばす

前述の通り、横Gによりバイクがグリップ力を失うのを防ぐというのが、外足荷重にする大きな理由です。上体をやや倒れている車体に被せて外足を伸ばすことで外足のペダルに荷重がかかり、地面に最も近い支点に重心バランスを置くことができるのです。これは前輪を外し、コーナリングの荷重を再現してみると容易にイメージできるでしょう。

横Gによる車体のブレで走行ラインが崩れてグリップを失うのを防ぐために、車体の上から荷重を掛ける。
▲横Gによる車体のブレで走行ラインが崩れてグリップを失うのを防ぐために、車体の上から荷重を掛ける。

コーナーリングにおいてグリップは重要なファクターです。車体を安定させてグリップを効かせるために外足を伸ばすのです。特にコーナーの出口程、横Gを感じやすく外足で踏ん張る必要があります。

たまに、ロードバイク初心者がコーナーリングで内足に加重しているのを見かけます。
これは、人間は両足で地面に立っている状態で遠心力がかかると、円の中心側である内足に荷重を掛けます。この感覚でロードバイクのコーナーリングに臨むと、コーナー側に荷重が動きグリップを失う上に、倒れ込んだ側の足が地面を掻いて落車してしまいます。内足の使い方は、次項を参考にしましょう。

NG動作:内足に荷重がかかっている状態を、前輪で再現。
▲NG動作:内足に荷重がかかっている状態を、前輪で再現。

②-2.内側の足はコーナーラインに沿うイメージで開く

外足荷重しているとき内足は、ヒザの先端を開いて回転の軸にするとよいでしょう。内足のヒザをコーナーラインに沿って車輪で円を描いていくことで、コーナーの中心軸を身体で感じながらコーナーリングができるはずです。そして実はこの開いた内足が外足へ上体を傾けるフォームを作りやすくしてくれるのです。

ヒザをコーナーの内ラインへ沿わせるだけで安定感抜群のラインが描ける
▲ヒザをコーナーの内ラインへ沿わせるだけで安定感抜群のラインが描ける

②-3. 顔は地面に垂直に、目線はコーナーの先へ

顔を地面に対して垂直に構えると、上体の荷重を外足へ掛けやすくなります。コツは、コーナー中は常に地面が水平に見えるようにコントロールするだけです。逆に顔がコーナー内側に傾くと、上体の重心も内足に寄りやすくバランスが崩れてしまいます。
そして最も重要なポイントが、いかなるコーナーリングでもコーナーの先へ目線を置くことです。。コーナーを曲がる意思を保ち続けることで、自然とコーナーリングへ重心を向けることができるのです。

②-4. 胸を低くし、下ハンドルを握る

外足荷重のフォームで、ヒジをピンと伸ばして身体を起こしているライダーをよく見ます。両足荷重でのコントロールに対し、外足荷重は前後への重心移動が柔軟でないため、腕を伸ばしてしまうと路面の凸凹でハンドルに荷重が乗り、バランスを崩しやすくなります。Uターンなど小さく曲がる時以外は胸を低くすることで、自然と腰が引けて体幹部とフレームが近くなり車体との一体感が増すことを感じられるでしょう。
ブラケットよりも、ヒジが軽く曲がりやすい下ハンドルの浅いアールを中指で持ち、ヒジを軽く広げて持つと安定感が増すでしょう。

②-5.内ヒザでバランスをとる

②-2で、内ヒザをコーナーラインに合わせて開くというレクチャーをしました。これは、車体が倒れ込むほど内ヒザを開くのが基本なのですが、コーナーのラインが湾曲していて一定でなかったり、目線の先に濡れた落ち葉やマンホールなどの障害物を見つけた際には内ヒザをフレーム側に寄せることで車体が少し立ち、コーナーラインを膨らますこともできます。次回で紹介するリーンイン、リーンアウトなどのテクニックを知ると、この内ヒザコントロールの理解が深まるでしょう。

以上が外足荷重のコーナーリングのレクチャーになります。ライダーキックを思い出してビシッとコーナーリングを決めてみましょう!

また、外足荷重のコーナーリングが苦手とするシーンも紹介しておきます。

  1. シケインやS字コーナーなど頻繁にバイクを立て直すシーン
  2. 初見のブラインドコーナー
  3. レースシーンなど左右にライダーがいる状態で、集団のペースが不安定な場面

ちなみに1と2は、前回の両足荷重でのコーナーリングで詳しく解説しました。3に関しては、次回のリーンイン・リーンアウトのコーナーリングにて紹介していきたいと思います。乞うご期待!

●バックナンバー「自転車の処方箋」
第1回:上手い下りの走り方
第2回:楽しく上るための回転数と心拍数の関係
第3回:予習が上りを楽にする
第4回:緩い上りは“もも裏”で効率的に上る
第5回:平均勾配7.8%の激坂の走り方
第6回:斜度に合わせてシッティングとダンシングを使い分ける
第7回:バイバイ立ちゴケ! 走行スキルを高める“スタンス”とは?
第8回:「自転車が下手だな」と思うなら…各段にうまくなる“チョコチョコ乗り”を
第9回:段ボールでマスターする平地のダンシング前編
第10回:“華麗なダンシング”のための3つのポイント
第11回:スマートに止まるブレーキングの極意
第12回:安全に止まるためのバイクコントロール
第13回:3つのスキルでコーナリングの達人になろう

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WRITTEN BY管洋介

1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。

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