山好きには堪らない時坂峠。ロマン溢れる秘境は都内にあった!

こんにちは、山を登るのが大好きの篠です。
今回は私が一押しする峠の話をしたいと思います。
それは東京都内にあるのに知る人ぞ知るという、素敵な秘境峠「時坂峠」です。

混雑も少なく、輪行アクセスは上々!

時坂峠は東京都檜原村にあります。
檜原村は東京都の多摩地域西部にある都内唯一の村で、最寄り駅がJR五日市線の武蔵五日市駅になります。
輪行は立川駅or八王子駅からがメジャー。以下のように拝島駅で一度乗り換えが必要ですが、五日市線は混雑が少ないので、快適にできます。

  1. 青梅線(立川駅)→五日市線(拝島駅)→武蔵五日市駅 (約33分)
  2. 八高線(八王子駅)→五日市線(拝島駅)→武蔵五日市駅(約35分)

時坂峠は武蔵五日市駅から約10km離れた場所にあります。
檜原村役場のT字路を右に曲がって500mほど進み、檜原とうふちとせ屋の左脇に見える道が登り口になります。

秘境峠なのに「ちょうどいい」理由とは?

武蔵五日市駅を始点に走ることができる、檜原村エリアのメジャーな峠道というと、毎年開催される東京ヒルクライムシリーズHINOHARAステージのコースとして知られる都民の森(風張峠)コースがあります。そのほか都内屈指の激坂として知られる風張林道コースや、さらにマニア向きとなる檜原村から奥多摩に抜ける大ダワ林道もあります。

とはいえ、長距離の林道となると整備も難しいため、そこそこ路面状況が悪いのは止むを得ないので、ヒルクライムを始めたばかりの方にオススメする時は少し戸惑います。
そういう意味でも、ちょうどいい選択肢となるのが時坂峠です。

距離は4km未満、獲得標高が300m以内。頂上は標高570m。
自動車の通行量はほとんどなく、よくある峠道よりも車幅が広いので、急な対向車が来てもちゃんとすれ違えるので安心です。
道の様子は「The林道」なのですが、舗装については林道の中でもだいぶきれいな部類に入ります。林道ゲートなし、冬季閉鎖もない道なので、積雪がない限り年中走れる貴重な峠とも言えます。

時坂峠頂上の広々とした展望台。

都民の森へ通じる奥多摩周遊道路と同じ檜原村なのに、時坂峠は大通りからちょっと外れているというだけで全く違う風景が広がります。
秘密基地を見つけたような素敵な気持ちになります。

若干舗装が荒れている箇所や道端に生えた苔も、怖いどころかいい味を醸し出しているので、林道のロマンを知ってもらうには持ってこいの峠道。林道布教用にちょうどいい峠でもあります。

景観 or 激坂?選べる2コース詳細

時坂峠には「本宿ルート」と、県道205号線にある小岩バス停の横から登る「樋里ルート」があります。

道の様子や雰囲気がだいぶ異なりますが、アクセスのしやすさ、景色の移り変わり様は本宿ルートが本当に素敵なので、初めて行かれる方には是非そちらから登ってみることをオススメします。

峠道の良さを凝縮した「本宿ルート」

距離:3.6km
最大標高差:300m
平均斜度:8.3%
獲得標高:300m

距離が短いので程よいサイズの峠というイメージですが、平均勾配は8.3%ですが、これは途中で1か所だけある下りを含めてなので、基本登りは10%前後です。
登り始めからいきなり斜度10%まで上がるので、決して初心者向けとは言いきれません。

でも不思議なことに、峠の雰囲気や景色に気を取られて、気が付けばキツい区間を通り過ぎているので、坂がちょっと苦手だという方でも登れてしまう峠です。

このコースは檜原とうふちとせ屋の看板の左側の道から入っていきます。

本宿ルートの登り口。お店が目印なので見つけやすいです。

登り口の近くに観光地「払沢の滝」があるため、土日は飲食店付近の駐車場が混み合う場合もありますが、平日は常にガラガラです。
駐車場を通り抜けると、一気に静かな空気に包まれます。

道端に積もった落ち葉で実質1車線になるのは林道あるある。

登り始めて600mほどできれいな巻き貝カーブが目に飛び込んできます。視覚上のインパクトがありますね。このカーブの後は一旦斜度が落ち着いて、緩やかな勾配が続きます。

巻き貝カーブはイン側を登るとグッと斜度がきつくなる。

山の中腹には民家が何軒か点在しています。山里の檜原村では当たり前にような光景ですが、初めてここを登った時はびっくりしました。

ここに住めば毎日この峠をロードバイクで登れるね!なんておかしなことを思い浮かびながらペダルを回していました。民家の横を通り抜け、見上げればこれから登るであろう道のガードレールがきれいに折れ曲がっており、ワクワクが止まりませんでした。

集落の間を登り進めば、遠くの山肌にガードレールが見える。

カーブひとつひとつの間隔が短い上に、山の斜面に沿って道が作られているので、登ってきた道を上から眺められる贅沢を味わえます。

この九十九折はコースの中でいちばん斜度がキツい区間で、最大13%というデータがありますが、イン側を登った時のガーミンの勾配表示は15%でした。
このきれいな九十九折は地形美から生まれたものだなあとつくづく思います。

下から見上げていた九十九折を辿っていく。

ガードレール代わりの石垣がいい味を出している。

木の葉が散った真冬と春先にだけ見られる、木の隙間からのワイディング。

美しいカーブの連続。

いちばんのお気に入りはやはり茂みを抜けてからの見晴らしポイントですね。

目の前に一面に広がる青空、ガードレールも石垣もなく、山肌に沿って道があるのみ。
登っているとすぐ左手側が断崖絶壁なので、普段なかなか見られない景色に心躍らされます。

まるで「天空の道」のような見晴らしポイント。

かなりの高さなので覗き込むと吸い込まれそうな錯覚に陥ります……。高い場所が苦手な方はちょっとヒヤリとしますね。

実は2年前までは高い木が生い茂っていた区間でしたが、一斉に伐採されてからは見間違えるように開放感のある道になりました。

登ってきた九十九折や集落まで一望できるので、個人的には風張林道の見晴らしポイントと引けを取らないほどの満足度が得られると思います。

スリル満点の高さ、登ってきた道と民家の屋根がくっきり見える。

見晴らしポイント以降は開けた感じの道が続きます。この辺りは、斜度6%〜9%ぐらいなので、景色を楽しみながらゆっくり登るにはちょうどいいです。

しばらく続く開放感のある峠道。

大きな岩の間を抜けていく……。吹き抜けにはロマンがある。

たった4km未満の距離でこんなにも景色が移り変わる峠は、今まで登ってきた中でも滅多にありませんでした。コンパクトながら峠道のロマンが詰まっている素敵な場所です。

コースの残り500mのところで一旦下りますが、そのまま登り返して「峠の茶屋」の看板がゴールになります。

本宿ルートのゴール地点。

頂上からは日本二百名山のひとつ、大岳山が一望できます。

向かい側の山にある細い峠道がくっきり見えるのでついつい目で追ってしまいます。
うっかり長居してしまいそうな、静かで心地よい空間。

時坂峠展望台からの眺め。

プチ激坂が味わえる樋里ルート

距離:1.7km
最大標高差:177m
平均斜度:10.4%
獲得標高:177m

樋口里ルートの登り口、ゼロスタートでいい斜度の坂に突入します。

樋里ルートの登り口は檜原とうふちとせ屋のある県道205号線を6.2km進んだところにあります。実は樋里は2016年までは約半分が未舗装路でしたが、舗装工事が少しずつ進められ2018年の5月でようやく完全な舗装路に。

今になってはロードバイクでも気兼ねなく通り抜けられるようになりましたが、何年も前から通っていた私にとっては感慨深いものがあります。

2016年に撮影した樋里ルートの時坂峠、まだ半分以上が未舗装でした。

距離は本宿ルートの約半分ですが、スタートから斜度16%超えるので短くてパンチのある坂というイメージです。

スタート直後のドーナツ坂、最大斜度17%。

本宿側と違って、道がかなり入り組んでおりミスルートしやすいので、初めて登る方のためにルート案内を紹介しておきますね。

ドーナツ坂をクリアしたらきれいなアスファルト舗装に切り替わります。
舗装を辿っていくと違う方向に行ってしまいますので、「べサニー通り」方面の矢印に従ってまっすぐ進みます。

道なりに左の方に行ってしまいそうですが、正規ルートは真ん中の細いコンクリート舗装路。

集落の間を抜けていく急坂。

2回目の「べサニー通り」方面の看板の通りすぎたあと、もうひとつ分岐がありますが、そこは直進で登る道を進んでいきます。

あとはゴールまで道なりです。

この辺りがいちばん斜度がきつい区間、道路の真ん中に砂利が溜まっている箇所もある。

本宿ルートの表情豊かな九十九折とは違って、空に向かって長い坂がまっすぐ伸びていくイメージでした。

斜度15%前後の坂が続き、茂みに突入することもなく、ずっと青空の下を走っていた気がします。普段あまりきつい勾配を登らない方には激坂初チャレンジにぴったりのコースですね。

真夏は直射日光がずっと当たるので、けっこう汗だくになります。登る方は水分補給にお気を付けください。

まっすぐ伸びていき、どこまでも続きそうな急勾配。

一気に登って、最後の500mほどは山の形に沿ってアップダウンを繰り返します。

本宿側とは違う美しさがある、アップダウンの激しいワインディング。

大きな岩壁を右手に登り進んでいく。

樋里側は本宿側と比べて山肌が脆い印象があります。

できたての道で舗装はとてもきれいですが、何かと落石が多い。大雨の翌日だと土砂が道になだれ込んできていることが多いです。

2018年台風が原因で起きた土砂崩れの名残り。

登りながら左手側に見える麓の様子。

山頂にある大山祇神社。

樋里ルートは距離が2km弱ですが、普段あまり民家の間を抜ける細い道を登ったことがない方にはとても新鮮で楽しいかもしれません。

時間に余裕があれば、ぜひ両方登って見比べてみてはいかがでしょう。

時坂峠のグルメ&見どころ

檜原とうふちとせ屋

時坂峠本宿ルートの登り口にあるとうふ屋さん。
檜原の源流水・北海道の高級大豆・赤穂の天然にがりを原料に使ったこだわりの手作り豆腐が有名です。

サイクリング中でも手軽に食べられる揚げたての「うの花ドーナツ」、濃厚な豆乳、豆乳ソフトクリーム、湯豆腐などがあって、どれもとても美味しいので、檜原村を走りに行く日は必ず立ち寄るようにしています。

Link:檜原とうふちとせ屋

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「ちとせ屋」のうの花ドーナツ。

ひのはら四季の里

時坂峠の麓にある、檜原村の畑でとれた新鮮な野菜を中心に、家庭の食卓のような雰囲気で提供しているやさしい味の定食屋さん。

風張林道の途中にあるきのこセンター産の舞茸やちとせ屋の豆腐など地元の美味しい食材を使用したメニューが特徴です。

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「ひのはら四季の里」の舞茸天ぷら定食。

払沢の滝

日本の滝百選に入る払沢の滝は檜原村の滝を代表する名瀑で、1年を通じて多くの観光客が訪れます。

観光スポットまでは徒歩10分ほどですが、ゆるやかな傾斜の遊歩道で、ウッドチップが敷かれているためビンディングシューズでも歩きやすくなっています。滝付近は岩の階段になっているので、そこだけ注意しましょう。遊歩道に自転車持ち込めますが、マナーを守って乗らずに押して歩きましょう。

遊歩道の途中には、村の陶芸作家の作品を展示するギャラリー喫茶や、昔の郵便局の建物を利用したおしゃれな土産物店があり、滝と合わせて檜原村の文化を楽しめます。

払沢の滝は冬に美しく結氷することでも有名で、滝も氷のオブジェも壮観。
12月~2月中旬までが見頃なのでぜひ観に行かれてみてはいかがでしょう。

厳冬期にだけ観られる氷のオブジェ。

Link:桧原村 払沢(ほっさわ)の滝

ひのじゃがバーガー

払沢の滝の遊歩道沿い、沸沢園敷地内にある移動販売車。
檜原生まれの「じゃがバーガー」。

バンズの代わりに檜原村特産のじゃがいもをつぶしながら鉄板で焼き上げ、それに、キャベツのサラダをのせ、ハンバーグならぬ味付けした豚バラ肉を挟んだ少し変わったハンバーガーです。味はさっぱりしていますが、見た目のボリューム以上に満腹感が得られる一品。

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レトロ感漂うひのじゃがバーガーの移動販売車。

終わりに

武蔵五日市駅からアクセスしやすい時坂峠、距離も短いので気軽に登れます。景色を楽しみながらちょっとヒルクライムしようかなという気分の日にはぴったり。
県道峠でマンネリ化してきた方にはいいスパイスになるでしょう。

都民の森を登って物足りない時にちとせ屋でおやつ食べてから1本追加、なんてことできます。

時坂峠経由で風張林道を登ってから都民の森から下ってくる周回コースも、風張林道の後に奥多摩方面に下って大ダワ林道で檜原村に戻る周回コースも組めるので、丸一日がっつり走りたい時はそういう楽しみ方もぜひお試しください。

時坂峠頂上の展望台。
▲時坂峠頂上の展望台。
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WRITTEN BY篠 ♡ 山は性癖です

ヒルクライムは芸術、峠道はロマン。/ASSOS Ambassador/TeamGOCHI/ブログ:山は性癖です。/Instagram⇒shino_138 https://shinorz.hatenablog.com/

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