ストライダー カスタム【シャフト・スキュアー・ベアリング編】〜抵抗を減らし・スムーズな走りを〜
ストライダー カスタムの豊富な経験を持つ筆者が、カスタムの効果やおすすめパーツを紹介する連載企画。第四弾となる今回は、シャフト・スキュアー・ベアリングのカスタムがテーマです。
ベアリングの交換は、ストライダー カスタムの中で「基本中のきほん」となります。お子さんのストライダーを「より速く走れるようにする」には、この部分のカスタムは必須です。シャフト・スキュアー・ベアリングをカスタムするポイントとオススメなものをご紹介したいと思いますので、ぜひ参考にしてください。
目次
シャフト・スキュアー・ベアリングカスタムの位置づけ
ストライダーがスムーズに走ってくれると「ビューンって走れる」ので「スピードが出て、気持ちいい!」お子さんの顔に笑みがこぼれるはずです。坂道を駆け下りる爽快感は、スピードが出せてこそ感じられるもの。スピードは「楽しく走れる魅力の一つ」と言っても、過言ではないですよね。
カスタムシャフトとベアリングは、「よりスムーズに速く走らせるため」の部品です。純正品はコスト的な問題もあり、高性能なものが取付けられていません。それを補うことが、これらをカスタムする理由と考えてください。
スキュアーは、速く走らせた時(後述します)に「ケガを防ぐもの」と位置づけられます。それぞれ目的がありますので、用途に合ったカスタムを取り入れていきましょう。
シャフト・スキュアー・ベアリングをカスタムする効果は?
「レースで速く走らせたい」と考えている場合には、シャフトとベアリングのカスタムは、間違いなく「速さのアドバンテージ」になります。一蹴りで進むスピードが、目で見て違いがわかるほど、効果が出やすいカスタムです。ベアリングについては、後ほど深堀りしますので、楽しみにしてください。
ノーマル仕様のストライダーは、ホイールを固定しているナットが外側に飛び出しており、しっかり最後まで後ろに蹴ると「くるぶし」が「このナット」に当たってしまいます。これをスキュアーにカスタムすることで、この問題が解消できます。スキュアーのカスタムは、速く走らせるためだけでなく、お子さんに「痛い思いをさせないカスタム」とも言えるでしょう!ストライダーには、楽しく乗ってほしいですよね。この部分をカスタムする意味は、大いにあると思います。
*フラット形状のアクスルボルト
STRIDER:PRO
注記:現在はストライダープロのみ、ホイールを固定するボルトの突出長さを短くし、フラット形状のアクスルボルト(上の写真)を採用することにより「くるぶしヒット問題」の改善が図られています。
※他のモデルに関しては、以前のままです。
シャフトをカスタムする
シャフトカスタムの2つのポイント
- 軽量化
- ベアリングをしっかりサポートできるシャフトを選ぶ(高精度化)
1.軽量化する
純正品のシャフトは「スチール製」です。前回、材質について触れましたね。スチールは重いので、回転部品に使うと「タイヤの回転上昇が鈍くなり、加速が悪く」なってしまいます。この部分には、軽量で剛性がある材質を選ぶべきです。そして、他のカスタム部品と比べて「軽量化の優先順位が高くなる箇所」だと認識してください。
「回転部品は、軽くする!」これが鉄則です。タイヤとホイールも同様です。
例えばシートポストを60グラム軽くするより、シャフトを30グラム軽量化した方が、加速が良くなります。つまり、アドバンテージが高くなります。
しかしながら「軽さを追及し、剛性がないものを使うのは逆効果」です。剛性がないと「しなり」が出てしまい、スムーズな加速を妨げてしまいます。「軽くて、剛性があるものを選ぶことがポイント」ですね。
2.シャフトを高精度なものにする
次に「シャフトの精度の問題」です。純正のシャフトは外径の太さが、まちまちです。加工精度が、あまり良くないと言うべきでしょうか。これだとベアリングとシャフトの「はめ合い」にガタが生じてしまい、スムーズに走らせることができません。カスタムシャフトの寸法許容差は、一桁違う高精度なものとなるため、ベアリングとシャフトがガタつくことなく、スムーズに回転してくれます。これも、アドバンテージです!
※ガタつくことで「フリクションと呼ばれる、摩擦抵抗」が発生します。この摩擦が大きいほど、蹴った力が奪われることになり、結果としてスピードが遅くなってしまいます。この摩擦抵抗は「速度が高いほど、増大してしまう」ので、よちよちライダーよりも「お兄さんライダーのカスタムに効果的」と言えるでしょう。
スキュアーをカスタムする
スキュアーのカスタムは、「くるぶしヒット」を防ぐことが目的です。できるだけ車両から部品の突き出しを少なくし、脱輪ワッシャーを兼ねた「涙目タイプのナットを採用する」のが効果的です。軽量化もさることながら、スムーズに走りやすくするためのカスタムを行うようにしてください。
スキュアーは「英語で、串という意味」があります。太いシャフトで両端にネジを切って締める純正品は、太さがデメリットとなり、重くなってしまいます。しかしスキュアーを使うことで「軽量化しながら、しっかり締める」ことができます。
スキュアーの材質に、アルミを使って軽量化しているものがありますが「アルミは柔らかすぎて、耐久性があまり良くない」です。使っているうちにナットの頭が削れたり、すぐにネジ山が潰れてしまうので、注意してください。
ベアリングをカスタムする
今回のテーマの主役と言える「カスタムの王道、ボールベアリングのカスタム!」
そもそもボールベアリングとは「回転による摩擦抵抗を、大幅に少なくしてくれる部品」です。しかし、このスムーズに回転させてくれるベアリングは、じつはピンキリで、数百円から数万円もするものもあります。一体、何が違うんでしょう?
まずは、このベアリングの種類から説明します。
これは「非常に大切な知識」となりますので、しっかりと覚えて下さい!
ボールベアリングの2つの種類
- オープンベアリング(オイルベアリング)
- シールドベアリング(グリスベアリング)
1.オープンベアリング
このベアリングは「定期的にベアリングオイルを差して、潤滑させてあげる」ことで「優れた回転効率を維持できる」特徴があります。
逆に言えば、オイルを差さないと回転が悪くなったり、ベアリング内の小部品が錆びてしまい、性能が著しく低下してしまいます。しかし、きちんと手入れをしていれば、抜群の回転効率でタイヤが回ってくれますので「ストライダーレースにおいて、付加価値の高いアイテム」であると断言できます。
デメリットとしては、オイルを差せるようにスキマがあるため、そこから「ゴミや水が入ってしまう」ことです。どちらも「ベアリングを傷め、回転が悪くなってしまう」原因になります。また「定期的なメンテナンスは、面倒だ!」という方もいらっしゃると思います。
一長一短のある「可愛げのあるベアリング」と言うべきでしょうか。もしくは、耐久性は悪いが「一発の速さを手に入れることができる」ベアリングとも言えますね。
2.シールドベアリング
一方で、「シールドベアリングは、メンテナンスフリー」です。なんて素晴らしいベアリングなんだろうと思いませんか?「選ぶなら、これしかない!」とも思えます。
しかしこれにも、一長一短があります。
このベアリングの特徴は、ベアリング内にあらかじめ「グリス(潤滑用)が封じ込められているシールド(蓋で閉められています)構造」になっていることです。このグリスがベアリングの潤滑をしてくれるので、オイルを差す必要がありません。しかし、グリスはオイルより粘性(ネバネバ)が強い(抵抗となる)ため、回転効率が僅かではありますが、オープンベアリングより悪くなります。これが、デメリットでしょう。
しかしながらレーシング用のシールドベアリングは、絶妙な粘度のグリス(ちょうどいいネバネバ)を選んで使っているため、特に大きな問題になることはありません。メンテナンスから解放されて「常に最高のパフォーマンスで、ストライダーを走らせることができるのが、最大のメリット」です。雨が降っても水が入ることは、ほぼ無いと言っていいでしょう。水中を走らせることを除いては(笑)
カスタムホイールには、あらかじめこのシールドベアリングが使われている場合が多いようです。理由は「メンテナンス等によるリスクを減らし、ベアリングの寿命を長持ちさせる」狙いがあるからです。しかし経時劣化により、「永年的に乗れる物ではない」ことも、付け加えておきます。異音や回転が悪くなったら、交換時期でしょう!これは、オープンベアリングも同様です。
ベアリングの良し悪しとは?(上級者編)
カスタムベアリングは「高性能なベアリングを使用している」ため、よりスムーズにタイヤを回転させることが可能になります。スムーズになることは、少しの力で走らせることにも繋がりますので、レースに出場しなくても「長い時間、楽しく乗れるカスタム」になると考えることもできます!
では、どんなベアリングが高性能なんでしょうか?
どんな物質でも表面には凹凸がありますが、高精度なボールベアリングがスムーズに回る理由は「凹凸が限りなく小さく、より球に近い(真円に近い)ので摩擦抵抗が少なくなる」からです。ベアリングの中にあるボールがいかに丸いか、そしてそれを保持する部品のスキマが少なく作られているほど、ベアリング内のガタつきが少なくなります。
高精度なベアリングが高価な理由は、ボールを完全な球体(1万分の1ミリレベル)に近づけるために丁寧に時間をかけて磨くので、製造コストがかかるためです。セラミックを使ったものもありますが、耐久性が良くないようです。
そしてタイヤを空転させて、シューっと回転させている動画をたまに見ますが、回転時間が長いことを注視して「いいベアリングだ!」と言っている意見があります。精度が良くないベアリングは、そもそも良く回りませんが「空転時間は、一つの目安として考える」ようにしてください。
大切なのは「ライダーが乗った時に、スムーズに回ることができるか?」これが、一番重要です。空転時間のみを重視することは、ベストな選択とは言えません。なぜかというと、ベアリング内の「スキマが小さいほど、接触面積が広くなるので、空転時間が短くなってしまう」んです。しかしライダーが乗って荷重が掛かると、しっかりベアリング全体で荷重を受けてくれるので、スムーズに走ることができます。
おすすめのカスタムシャフト
【ZERO BIKE FACTORY】ZERO FRICTION
ゼロフリクション(EVAホイール用 高性能ベアリング付)
ゼロフリクションは、エンジョイカップなど純正ホイールでのレース時に、アドバンテージをつけることができる、高性能のシールドベアリングとシャフトが付いたセット品です。
<特徴>
- シャフトが組み付けしやすい構造のため、取付ミスが減らせます。
- 純正ベアリングと段違いの日本製の高性能シールドベアリングが付属。滑らかさを手軽に試せる価格設定が魅力です。
- シャフトのガタツキがほぼなく、ボールの回転を一切邪魔しません。
- 左右のバランスを考えなくてもしっかりと固定できる構造なので、ホイールのガタツキの発生や脱輪のリスクが減少します。
- 軽量かつ高剛性のステンボルトを使用。余計なシャフトのしなりが出ません。
- 純正より頑丈なのに、前後セットで60g近くも軽量化できる!
参考:純正ベアリングセット269g EVAホイール用ベアリングセット214g
(サンプルでの実測値のため若干の誤差があります)
おすすめのスキュアー
【ZERO BIKE FACTORY】
スキュアーリブセット(EVAホイール用 前後セット)
上記のゼロフリクションをさらに進化させたものが、この新型スキュアーリブセットです。違いは、シャフトを中空(シャフトに穴が空いています)にして軽量化し「スキュアーを通して片側で締める」ようになっているところです。重くて大きいナットを使う必要がなく、とても合理的な構造になってます。
スキュアーリブセットは、高精度なシャフトでありながら軽量化されており「カスタムシャフトの中で、一番優れた製品」だと思います。
※ベアリングは付属していないので、別途購入が必要です。
おすすめのベアリング
【ZERO BIKE FACTORY】
ZERO ABSOLUTE チタンコートベアリング
TANGESEIKIと共同開発された、史上最強のオープンベアリングです。
<特徴>
- チタンコートは、表面硬度が上がって摩擦抵抗が減るだけでなく、コーティングされているので錆びにくく、耐久性が非常に高いベアリングです。
- EVAタイヤだけでなく、ダディラボやZEROFRICTIONにも取り付けできます。
- ボールの真円度が、高精度のC1で作られています。C3のボールドラム缶売りと違い、球一個がいくらと単価で売り買いがされている、とんでもない商品です。
- ランバイク用に硬度計算され、球の大きさや焼き入れ温度を決めて作られているレース専用のベアリングです。日本でしか、こんな手のかかる製品は作れないでしょう。
注意するポイントは?
ベアリングの型番
今回のカスタムは「大会規定で、ホイールを交換できない場合のカスタム」とも言えます。純正のEVAホイールしか出場できないストライダーエンジョイカップにおいて、車両の最大のアドバンテージを得ることができるカスタムです。
ストライダーEVAホイール用のベアリングの「サイズ(型番)は、608規格」です。これも憶えておいて欲しいポイントです。参考までにダディさんのホイールも、このサイズのベアリングを使用しています。
ベアリングの種類
先ほど述べたように、ベアリングは種類によりメンテナンスが必要かどうかが異なります。適切に使用するためには「お使いのベアリングが、どの種類なのかを知っておく」必要があるのです。
基本的に「シールドベアリングを分解して、洗浄することはしない」でください。
逆に「オープンベアリングの場合は、定期的な洗浄や給油が必要」です。給油はベアリング専用オイルを使うようにして、間違っても「CRC 5-56のような商品を絶対に使用しない」でください。
パーツクリーナーの成分
ベアリングの多くは、ボールを保持するリテーナーに樹脂を使っています。洗浄に使うパーツクリーナーの中には、洗浄成分が樹脂への攻撃性があるものがあり、ひび割れなどが起きてベアリングを傷めてしまう可能性があります。「パーツクリーナーは、樹脂に攻撃性のないものを選ぶ」ようにしましょう。
以下に、おすすめのベアリングオイルと洗浄剤をご紹介します。
おすすめのベアリングオイル
【ZERO BIKE FACTORY】
FINALE ベアリングオイル 15ml
レースで一発の速さを発揮するために作られた、ストライダー専用のベアリングオイルです。
<特徴>
- 特殊な合成油を使用しているため、優れた潤滑効果を発揮してくれます。
- 独自の添加剤により、200時間近い耐久性を確保しています。
※注油の仕方
洗浄したベアリングに両側から数滴ほどオイルを差して、流れ出たオイルは拭き取るようにしてください。その後、ホイールに組み付けて完了です。
おすすめのベアリング洗浄剤
MOTUL パーツクリーナー 840ml
作業性の良い速乾タイプで、ゴムやプラスチックパーツを傷めにくい成分配合のクリーナー。容量はジャンボサイズ缶の840ml、溶剤も672mlの経済的な大容量タイプです。作業者の安全に配慮した有機溶剤中毒予防規則適用外製品。RoHS(特定有害物質使用制限)指令にも適合しています。
<特徴>
- アセトンを含まず、塗装面やゴム・プラスチックパーツを傷めにくい成分を使用。
- 金属パーツのガンコな油汚れを強力に落とします。
- 金属表面の脱脂にも、すぐれた効果を発揮。
- 速乾性に優れたお手入れしやすいクリーナー。
- 缶を逆さにしても使用できます。
まとめ
ベアリングの寿命は、使い方で大きく変わります。仕組みを理解し、レースで最大のパフォーマンスが発揮できるように、ストライダー同様にベアリングも可愛がってあげてくださいね。
ベアリングを購入する際は、どこの国で、どのメーカーが作っているかが、品質のカギを握っています。日本製ならば、良質なモノに間違いないと言っていいでしょう。
カスタムは、悩む時間が一番楽しい時間とも言えます。高ければいいという訳でもないので、いろいろ吟味してみてください。
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WRITTEN BY"ランバイクカスタム講座"管理人
東京都在住。個人ブログ「Tsuguo Yamaguchiのランバイクカスタム講座」を書いています。自身が所有していたレーサーレプリカNSR250SEをカスタムした経験から、子供用のランバイクも妥協のないカスタマイズをしています。大学で自動車工学を学び、専門分野はエンジンです。二輪・四輪以外にも、ヨットの運転も大好きです。