【BH✕ASSU対談】BHが日本展開を拡大! 驚異の軽さを誇るE-バイク『CORE』もやってくる!?

スペインの自転車ブランドBH BIKES(以下、BH)が、イオン・シグナ・スポーツ・ユナイテッド(以下、ASSU)とパートナーシップを締結した。

100年以上の歴史を持つ老舗ブランドのBHだが、日本市場における取り扱い店舗は少ないのが現状。そんなBHが、EC・実店舗の双方のメリットを持つASSU(Probikeshop)で展開されるとあっては、待望のニュースとなるユーザーも多いのではないだろうか。

BHアジアのゼネラルマネージャーであるジェンセン・リー氏が来日。ASSU代表の泊 剛史氏とのトップ対談が実現した。

BHがアジアで成功するキーは日本市場

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ASSU代表取締役の泊 剛史氏

泊 剛史氏(以下、泊):まずは我々が日本市場展開におけるパートナーシップ締結に至るまでを振り返ります。これまでの日本市場においてBHはどのような立ち位置だったのでしょうか。

ジェンセン・リー氏(以下、リー):BHの日本展開はもう10年以上前から始まっていました。今この場で、私は日本の市場を完全に理解しているとはいえませんが、アジアの中でも日本の自転車市場はベストマーケットだと考えています。

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BH BIKES アジア ゼネラルマネージャーのジェンセン・リー氏

リー:日本のライダーたちは自転車への関心が高く、新しいイノベーション、デザイン、テクノロジーを積極的に受け入れています。海外ブランドであるBHがアジアで成功するためには、日本はもっとも注目すべき市場なのです。

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1909年創業と100年以上の歴史をもつ老舗ブランドのBHだが、日本での認知度は高いほうではない Image: BH BIKES

リー:これまでの10年で、すでに我々は施策を打ってきました。その結果、日本でもユーザーを獲得し、彼らはBHの技術革新、品質、ブランドイメージの良さも理解してくれています。
非常によい基盤は築けていると認識していますが、同時に新しいステップへ進むときだとも考えています。もっと幅広いモデルを日本のユーザーに届けていきたいのです。

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リー:BHは本場ヨーロッパで長い歴史を持つブランドであり、幅広い製品群を誇ります。ハイエンドのプロレース用ロードバイク、マウンテンバイク、E-バイク、そしてライフスタイルバイク、トレッキングバイクまで、あらゆる自転車のカテゴリーを網羅しているのです。

BHグローバルの公式サイトより。E-バイクだけでもこのラインナップを誇る Image: BH BIKES

リー:この製品群の幅広さは、日本市場へのフィットを意味するはずです。今こそ絶好のタイミングであると確信し、アジア戦略の一つとして、BHが再び日本市場に注力することになりました。

:コロナの混乱も落ち着きつつある中で、とくにE-バイクは日本需要の高まりを感じますね。旅行産業の回復もあり、密になることなくアクティビティを楽しめるサイクルツーリズムの需要にも応えられる。私たちも今がラインナップ拡大のときだと考えています。

戦略の柱のひとつは「E-バイク」

:今回のタッグで、我々はいくつかの戦略を打ち出しています。そのうち今回注目したいのがE-バイク」と「ミドルグレード」の二つです。

まず一つ目となるE-バイク。ご存じのとおり日本におけるE-バイクのマーケットは巨大で、なかでも我々はスポーツタイプのものに目を向けることになりました。

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リー:そうですね。おっしゃるとおり、日本のE-バイク市場は非常に大きく、同時に制限があります。日本独自の電動アシスト自転車としての規定*です。海外ブランドのE-バイクをそのまま日本で展開するのは難しい状況なのです。

*)道路交通法施行規則でアシストによる速度の上限、アシスト比率などが決められている

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リー:しかし、そろそろ日本のユーザーにも、優れたデザインと高度な技術を持つE-バイクを楽しんでもらう時期だと思います。日本の電動アシスト自転車の販売台数を独自に調査してみたところ、年間80万台ほどでした。これは非常に大きな数字です。

経済産業省の調査においても電動アシスト車の上昇はめざましく、自転車産業振興協によると2021年には792,985台出荷というレポートも
グラフ出典:経済産業省ウェブサイト(電動アシスト車が牽引、堅調な自転車産業

リー:ただし、これらのほとんどは “ママチャリ” です。これからはスポーツ用途としての電動アシスト自転車にも目を向けるべき時機なのです。

海外における電動アシスト自転車の原点はスポーツ用で、特に高齢者や体の不自由な人たちがスポーツを楽しむために作られたものでした。ヨーロッパでは運動習慣が根付いていますから、若いころは自転車で高い山に登ったり、長い距離を走ったり。そして彼らが年老いたり、若いときのように体を動かせなくなったとき、E-バイクがスピードと運動する楽しみを提供してくれる。

日本でも同じように、フィットネスとしてのE-バイクが人気を獲得していくべきだと思っているのです。

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驚異の軽さを誇るCOREシステム搭載のE-バイク

:BHにはE-バイクだけでも複数のカテゴリーがありますね。日本に適したモデルとしてのレコメンデーションはありますか?

リー:わたしたちはE-バイクをモーターシステムでカテゴライズしていて、主要なモーターシステムが3つあります。そのうちのひとつである「CORE(コア)」が日本市場にフィットするものと考えています。COREは最も先進的なE-バイクシステムです。

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Image: BH BIKES

リー:モーターはセンターに配置されていて、クランクセット側から自転車を見ると、モーターが見えません。クランクセットに隠れるほど小さく作られているのです。そしてバッテリーはダウンチューブに統合されています。

この場にいま私がCOREを持ってきても、きっとE-バイクだとは思わないはずです。

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CORE RACE 1.2 Image: BH BIKES
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クランク裏側から見ても、そのコンパクトさに目をみはる Image: BH BIKES

リー:クランクの反対側からBB部分を見ない限り、E-バイクと気付かない。もちろんスマートフォンと連携してバイクを管理することも可能です。

さらに、走行距離の長さも特筆すべき点です。インチューブバッテリーだけで約160kmもの距離を走れるうえに、もうひとつバッテリーを追加することで、220kmまでも走行距離を伸ばすことができます。

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追加バッテリーを使えば220kmという驚異的な距離のアシストが可能に。しかもケーブルを別途用意する必要がないというから驚きだ Image: BH BIKES

リー:そして最後に重量。現在市場に出回ってるE-bikeは約20kgが平均値です。

モデルにもよりますが、COREシステムを搭載したモデルは、約11〜12kg。E-バイクでないロードバイクが約11kgか10kg以下、マウンテンバイクが約14kgと考えると、非常に軽ことがわかるでしょう。

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Image: BH BIKES

リー:COREシステムを搭載したモデルは、ロードバイク、マウンテンバイク、そしてトレッキングバイクと、幅広い商品群から選ぶことができます。COREは日本のE-バイク市場を開拓するのにベストな選択肢になるはずです。

:私自身、COREの大ファンです。デザインが良いし、本当にE-バイクには見えない。とてもシンプルに仕上がる点は大きな魅力ですよね。

日本でのミドルグレード浸透を狙う

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:E-バイクに続き、我々の戦略のうち二つ目のポイントが「ミドルグレード市場」です。この10年、日本ではBHブランドはややカジュアルなイメージがもたれてきましたが、そこから新たにBHのミドルグレード以上のモデルを日本のユーザーに浸透させていきたいと考えています。

このカテゴリにおいて、おすすめできるモデルはどのあたりでしょうか?

リー:ミドルグレード〜ハイエンドのカテゴリとして、私たちは105以上のロードバイクにフォーカスしています。おすすめとしてピックアップするなら三つのシリーズ、パフォーマンスモデルのRS1、そして残りの二つはフラッグシップのエアロライトウルトラライトです。

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カーボンフレームのオールラウンダー「RS1」 Image: BH BIKES

多くの海外ブランドと同じように、BHもトップモデルとして2つのプロダクトを用意しています。1つがエアロロードバイク、そして軽量クライミングバイクです。

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エアロロードのエアロライト Image: BH BIKES
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軽量クライミングバイクのウルトラライト Image: BH BIKES

:ミドルグレード市場という観点からも、ASSUとしてはまずE-バイクに注力していきます。最初はCOREブランド(Core アーバン)の日本展開から。そして同時に力を入れていきたいのがマウンテンバイクです。各観光協会と提携し、地方観光地でのサイクルツーリズムを推進する中で、BHのマウンテンバイクを使いたい。各観光協会のニーズや課題に応じて、マウンテンバイクでも幅広いラインナップを誇るBHを提案していきます。

観光地のレンタサイクルとして、BHのマウンテンバイクを目にする日もそう遠くない?

BHは「革新的」で「山が好き」

:BHのバイク群をもってすれば、日本でも十分ビジネスできると思います。すでに日本には多くの海外ブランド、たとえばスペシャライズドやトレックなどが進出しているわけですが、BHの強みはどこにあるのでしょうか?

リー:そうですね、スペシャライズドもトレックも、他のブランドも私は非常にリスペクトしていますし、どのブランドにもそれぞれの強みがあると思っています。技術に長けている、デザインへのこだわり、乗り心地に優れたもの。どのメーカーも異なるテクノロジーを持っているわけです。

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リー:BHの場合はというと、まずは「革新的」である点でしょう。

裏付ける事例は多々あります。今では大径化したヘッドチューブはポピュラーなものですよね? オーバーサイズのヘッドチューブを発明したのはBHです。同じくインテグラルシートポストもBHの発明なのですよ。

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フレームと一体成型される(セミ)インテグラルシートポスト Image: BH BIKES

リー:あとはBB386*も。これらすべてBHの開発ですが我々は独占せず、業界に共有しました。これこそBHの精神なのです。

*)BB386: 圧入系のボトムブラケット規格のひとつ

自転車産業全体のために自らのイノベーションを共有することが大切だと、そう考えています。もし我々がイノベーションを特許として保持してしまったら、BH以外誰もそれを使うことはできません。ユーザーからしてみれば、フェアではありませんよね。

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リー:ほかにもグラフィックデザインや剛性の高さなど特徴的ではありますが、もう一つ具体的なアドバンテージをあげるなら、フレームジオメトリです。

ほぼすべてのBHのバイクが持つ非常にユニークな特徴として、他社フレームと比較したときに、BHのフレームはチェーンステーが短いのです。数値でいうと、400〜402mm。その理由はヒルクライムにあります。

我々の本社はビトリアにあります。ビトリアはピレネー山脈の奥に位置し、いわばヒルクライムに最適な場所です。私たちはヒルクライムが好きなのです。

短いチェーンステーは、それだけパワーを送る距離も短くなります。BHのバイクに乗ると、リアホイールへのパワー伝達が早いと感じるはずですよ。

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Image: BH BIKES

デジタル化とイオンのネットワークでより多くのユーザーにBHブランドを届けていきたい

:では最後に、実際にBHは日本市場をどう開拓していくのか、そのあたりをお話ししていこうと思います。

冒頭で話にあがったとおり、BHは直近では日本市場での成長に苦しんできました。しかし、ブランドが持つ強みや品質、デザインをもってすれば、日本の若い世代のお客様にもっとアプローチできるはずです。

そのための手段として、我々イオングループのネットワークは大いに活かされることになるでしょう。

リー:すばらしいですね。購入体験において、今は変化の時といえます。これまではお店に訪れて自転車を買うことが重要でした。それは今でも変わらない部分はありますが、近所にお店のないお客様だっているわけです。

では彼らにどうやって自転車を届けるのか? そう、デジタルというモダンなアプローチです。

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リー:オンラインだけに集中しても成功はしませんし、逆にオフラインの店舗販売だけではすべてのお客様に販売することが不可能になる。大都市圏であればお店はたくさんありますが、地方では店舗が遠いことだってありますね。

この状況で、新しいモダンなアプローチを持つことこそ大切だと考えています。日本はとても興味深いマーケットで、保守的でありながらも、モダンな面も持ち合わせていますから。

そこで大切なのは現地のマーケットを理解したパートナーです。外国人がいきなり日本に入ってきてコロンブスみたいに征服できるとは思えませんし、そうすべきでもない。現地のパートナーが現地のマーケットを管理できるようになればいいと思っています。

:これまでは日本市場で伸び悩んできたBHですが、ブランド力、クオリティ、デザイン性を鑑みて、イオングループのネットワークを使えばより多くの日本のお客様へリーチできると感じています。従来の日本のロードバイクビジネスモデルを、デジタル、イオングループネットワーク、既存のディーラーの存在を活かしながら、BHというビックブランドを通して、お客様に新しい価値観を提供していきたいですね。

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WRITTEN BYFRAME編集部

FRAME編集部はロードバイク、MTB、ミニベロ、トライアスリートなど、全員が自転車乗りのメンバーで構成されています。メンテナンスなど役立つ情報から、サイクリングのおすすめのスポット情報、ロードレースの観戦まで、自転車をもっと楽しくするライフスタイル情報をお届けします。 https://jitensha-hoken.jp/blog/

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