社内の運用ルールはどこまで必要か?急成長するfreee株式会社が自転車通勤を推奨する理由【後編】
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サービスを運営しているfreee株式会社では、2012年7月の創業時から自転車通勤を推奨してきました。その理由については、ファウンダーの佐々木大輔代表と、PRの前村菜緒さんのお話を中心に、前編で紹介しました。
前編の記事はこちらです。
「スタートアップに自転車は必須アイテムだった」?急成長するfreee株式会社が自転車通勤を推奨する理由【前編】
後編の今回は、実際に自転車通勤をしている人たちの話を紹介します。前回にご登場いただいた佐々木代表とPRの前村さんのほかに、UXディレクターの関口聡介さんにも加わっていただき、自転車をとりまく社内のカルチャーについて取り上げます。
目次
増えつづける社員の交流を考えた時、自転車部ができた
??お二人は、自転車通勤なんですよね?
前村 「私は会社の近くに住んでいて、クロスバイクで通っています」
関口 「自分はロードバイクで、住宅補助の出る2km圏内だと物足りないので、世田谷区内から通っています。最短距離は11kmほどなんですが、色々と気分のいい回り道を選んだりして、15kmコースにしています」
??みなさん、かなり本格的な自転車に乗っていますね。
関口 「ロードバイクは、屋外や不用意な駐輪場には置けない。その点、社内に置いておけば安心だし、仕事がなかなか終わらないときも、終電を気にしなくていいという便利さもあります。このビルに移転してくるときに、貨物用のエレベーターなら自転車を乗せてもいいか、ビル側と交渉して許可をもらったんです」
前村 「みんな、手軽な運動だとかリフレッシュに自転車を取り入れています。20km乗ってきている人もいるみたいです。
当社は、自転車に限らず、運動好きな社員が多いですね。会社を設立して2年半くらい経って、人もだんだんと増えてきたのに伴って、部活が結構活発になってきました。そのなかで、自転車部は古くからある部活です」
関口 「会社という組織をどう変えてどのように社内の交流を図っていくかという話になった時に、部活をやろうという話は初期の頃から出て、色々と誕生しました。
僕は自転車で来ているので、自転車部やります、みたいな感じで始めました。会社公認の部活は、他にテニス部、バドミントン部、米々倶楽部など。会社のランチタイムに、炊飯器でご飯炊くやつがいるんですよ。おかずだけ買ってきて、みんなでワイワイ食べる部活(笑)」
??すごい。ランチでワイワイ過ごす活動まで会社から公認されるんですね。
関口 「みんなでカルチャーを作っているんです」
今は管理していないが、自分たちでルールを作っていく段階
??自転車通勤を推奨するにあたって、社内の制度のようなものは?
前村 「今は特に管理はしていません。会社全体の保険のことは、今検討しているところです」
関口 「どんな手段で通勤するかは個々の判断に任されているので、自転車が置けるなどの環境はとりあえず整えておく。
最近は特に人数が増えて自転車置き場が一杯になってきたので、どうしようかと悩んで、自転車を置くスタンドを買ってみたりしています。問題があったら、みんなでその都度考える、みたいな文化です」
前村 「今は、ルールを自分たちで作っていくフェーズなんですね。社長がこうだと言ったからやるというカルチャーではなくて、自分たちが一番仕事しやすい環境を整えていく。
自転車通勤と仕事のしやすさは関係あることが、自分たち自身がよくわかっているので、環境を整えて、人数が増えても運用できるようにするにはどうすればいいのか、当事者たちで考えていくようにしています」
??自転車置き場以外にはどんな課題が?
関口「実は、自転車を乗せてはいけない人間用のエレベーターに乗せてしまったということが判明して、ビル側から3回ほど苦情が来たんです。自主性に任せていても、放っておくとそういうことは起きてしまう。
そこで、みんなで話し合いました。ここは一応ルールを決めなきゃダメだという結論になり、同様の問題を起こした場合には、その人は3ヶ月自転車通勤禁止というルールを設けました」
前村 「エレベーターはビルの共有部分なので、そこはしっかりルールを決めていかないと、という形になりました。他は個々の良識でやれるはずなので、できればルールはないほうがいい。どうしても成り立たなくなるところに、ルールを作らなければいけないですね」
関口 「そうそう」
自分たちで「よくする」文化
??そういう自発性を重んじる文化はどこから?
関口 「代表の佐々木と僕は、Googleから来たので、そこでのカルチャーを継承しているのかも。Googleってベースにあるのは、お前の良識に任すからそれでよくしていこうとか、自由にできるけどちゃんとやろうよ、というような文化です。
ルールを決めようとすると、多分うちのカルチャーだと、本当にこれは必要なのか? という議論になると思うんです。そういう人と人の信頼関係で成り立っているというのは、うちの会社のすごくいい所だと思う。
自発性に任されている方が、責任感がうまれる。ルールに縛られている形じゃなくて、自分たちの自浄作用というか、よくしていかなきゃいけないという思いが常に働いていると思います」
佐々木 「重要なのは、これをやってしまったら今あるこういう環境の良さが、なくなるよねということを、ひとりひとりが理解していることが重要なんじゃないかな」
前村 「そうですね。あとはどうしても、良くないことをしてしまうことも実際はあります。でも、そういうことをお互いに指摘できる文化になっていると思います」
課題が見つかれば、その都度みんなで議論をし、ルールを設けるかどうか決める。freeeの自転車通勤の特徴は、働きよくしていくために自分たちで環境を整えていく、こうした社内の文化にあるといえるかもしれません。
??スタッフが増え続ける中で、ルールに縛られずに社内の文化を育てていくためにはどんなことが必要でしょうか?
佐々木 「会社が大きくなっても創業からやっていることは変わっていないのですが、実際に見えてきた景色は違う。事業計画の数字に表れてこない部分があります。例えば、人が増えても、生産性がその分増えるかというと必ずしもそうではなくて、そうするためのいろんな努力が必要です。
会社が小さかった時は、社内で起きていることを全部把握することはできたけれども、それはもうできなくなっているわけで。じゃあ、把握できなくても大丈夫な体制を作るにはどうしたらいいのかとか、どうやってみんなの意識を揃えるかとか、考え方や判断基準をどう揃えるかとか、そういう話になってきます。
そこで、freeeらしい世の中の変え方って何なのだろう?ということを、みんな共通の見解を持っている状態をつくるのが僕の今のテーマだと思っています」
みんなで40km、80kmのロングライドに挑戦
??自転車についてもう少し深く話を聞かせてください。自転車利用にはリスクが伴いますが、何か対策をしていますか?
関口 「自分は、自転車保険に加入しています。長い距離を乗ってきている人は自発的に保険に入っていますね。
また、部活でみんなでロングライドに行くこともあるんですが、最低でもグローブとヘルメットをつけるよう声をかけています。守らなくて何かあったら自己責任だよ、と。もちろん、基本的に車道の信号を守ろうとか、横に並ばないようにとか、そういう確認もスタート前にはするようにしています」
??今までどのような場所に行ったのですか?
関口 「僕は100kmとか走ってしまうんですが、うちの自転車部は気軽に参加できることが重要なので急に長い距離は無理ですよね。だから、最初は片道20kmくらいの横浜にしました。『サンアロハ』というカレー屋に行って、食べて帰って来ました。
その次は、もう少し頑張ろうと言って、町田に行きました。『パンステージ エピソード』というパン屋を目指して、五反田からなので往復80kmくらい。僕はそういうのを考えるのが大好きなんです」
前村 「私もみんなも、そんなに走ったのは初めてでした。日中だし、10人くらいでチームに分かれて。女性一人だったのでゆっくり走ってもらいました。正直辛かったです……でも、みんなと一緒だからなんとかなるかなと、初めて長い距離を走るなら、みんなと走りたいと思っていたので」
関口 「あ、それをきいて、泣きそう」
??関口さんは、何がきっかけで自転車に目覚めたのですか?
関口「僕は、バイクも車も趣味で、とにかく高速で移動したいんです(笑)。自転車は4年前、Google時代に、友達に誘われて始めました。
買ってすぐに、袖ヶ浦サーキットでやった5時間耐久レースに出たんですよ。4人のチームリレーで、ひたすら5時間走って、一番多く周回した人が勝ちというもの。おかしいでしょ。ヘロヘロになりながら。3月なのに大雨で超寒くて。
車でも耐久レースをやっていたんですけど、自転車でゴールした時のあの感覚は、全然今までにない体験だったんです」
??すごいですね。どんな感じだったんですか?
関口 「いやもう、泣けてきました。4人みんなでゴールしたってことが。しかもその時、いきなりクラス優勝しちゃったんです。そこから自転車にはまりました」
??前村さんは、普段から自転車に乗ってるんですか?
前村「雨でない限りほぼ毎日乗っていますね。小回りがきくし、自転車の方が楽なので、渋谷や銀座にも乗っていきます。
学生の頃に初めて購入したクロスバイクなのですが、そろそろ買い換えたい。ロードにするか新しいクロスバイクにするか決めかねているところです」
会社のそばにセキュアな駐輪施設があるといい
??自転車通勤が快適になるサービスがあるとすれば、どのようなものだと思いますか?
関口 「実はオフィスが手狭になってきたときに、ロードバイクでも預かってもらえるサービスはないのかな? って探したんです。でも、五反田にはなかった。今は、オフィスには10台ちょっとしか置けなくなっています。家が近い人には我慢してもらっている。本当は、セキュアなボックスのサービスがあれば、それで十分なんですけどね。
前村 「そうですね。あとは、できれば会社から近くて、24時間利用可能だと助かります」
社員同士の仲が良く、休日も部活などを通じてよく集まるというfreeeのスタッフのみなさんは、繁華街と住宅街がほどよく隣接する五反田という街がとても気に入っている様子でした。急成長を続ける会社の力をよりパワフルに引き出す秘訣は、街ごと自転車で通勤しやすく整えられていくことなのかもしれませんね。