松山・電動アシスト自転車の旅~三津浜港、坊ちゃん列車、道後温泉~
目次
「サイクルトレインに乗って下さい」と言われたものの
オッサンの自転車放浪記。香川・小豆島に続き、再びの四国!!今度は愛媛・松山だ。実は、松山は4月に行ったばかり。広島・尾道〜愛媛・今治のしまなみ海道をレンタルロードバイクで走り、松山まで足を伸ばした。その時はあいにくの雨模様。松山での自転車旅は叶わず、徒歩で伊丹十三記念館や松山城などをめぐった。
愛媛出身の姐御編集長に「今度は松山の自転車旅について書きたいのですが……」と申し上げると、「いいですよ。ただし、条件があります。電動アシスト自転車とサイクルトレインを使ってください。だって、多くの観光客は電アシ車のほうがラクでしょ? あ、温泉もマストです。道後は宇宙一いいお湯なんで!」。
サイクルトレインかぁ。さすが、姐御編集長。目の付け所がシャープです。乗ろうじゃないの。と、思いきや……、あゝ無情。伊予鉄道のサイクルトレインは土日のみ運行。オッサンが行く6月1日は木曜日。走ってない…。
「サイクルトレインがキモだったですよ、あーあ」とつれない姉御編集長。ボツかぁ。落胆する48歳のオッサンであった。しかし、姐御編集長はこんな提案をしてくれた。「じゃあ、三津浜に行ってください」。三津浜? そもそも、どこ? オッサンは、松山城とか、坂の上の雲ミュージアムや秋山兄弟生誕地、鯛めしで有名な郷土料理店「五志喜」など王道の松山を紹介したかったのだが…。もっと少しディープな松山を紹介してよ、ということらしい。
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↑「『五志喜』は大定番で、松山初回の人には、超超オススメです。ただ、“鯛そうめん”はもともと松山よりもっと南の愛媛県南予地方のもの。オッサンにはもうちょっとディープを掘ってほしいっす」と編集長。
電動アシスト自転車が1日300円!
松山まではジェットスター(5990円〜)。8:40成田発、10:20分着。松山空港からは10:35発、道後温泉駅前行きのリムジンバスに乗る。空港からは市街まで15〜20分と近い。バスの中では、フリーWi-Fi「Ehime Free Wi-Fi」が使えるので、情報収集だ。目指す電動アシスト自転車のレンタルは「松山城観光レンタサイクルポート」で扱っている、という。
11:06、最寄りの大街道着。運賃460円。秋山兄弟生誕地を横目に、松山城ロープウェイ下のレンタサイクルポートへ。電動アシスト自転車は2台のみ。なかったら、企画はボツか……。
あったよ! 先ほど、1台出たばかりで、残り1台。ここにはジャイアント製クロスバイクもある(本当はこっちに乗りたかった)。「バッテリーは2時間しか持ちませんよ」と女性の係員さんは言う。小豆島でも、電動アシスト自転車を借りたが、そんなこと気にもしなかった。電動の魔法は、2時間しか持たないのか。
レンタル料はたったの300円(午前8時30分から午後5時まで)。申込時に、免許証・保険証・パスポート・住民基本台帳カード・障がい者手帳等の本人確認書類が必要。お忘れなく! ワイヤーロックも渡されるが、こんなド派手な広告がついた自転車を盗む輩はいないだろう、とも思う。
三津浜 なだまる 三津の渡し 港山城跡
松山城には見向きもせず、ホテルで荷物を置き、短パンに着替える。曇り空だが、気温は26度。結構、暑い。自転車ナビタイムによれば、三津浜までは7.6km、時間28分。バッテリー切れしないように、エコモードを選択する。
松山市内の道は平坦。自転車専用のブルーラインも敷かれていて、走りやすい。県庁前を走っていると、坊ちゃん列車が通りかかる。絵になる近代建築に、絵になる列車。走っている姿を見るのは初めて。平日の運行数は少ない。開始早々、得した気分だ。
野球の強豪校、松山聖陵高校の横を通り、海へと一直線。パームツリーの植え込みが南国ムードを盛りたてる。潮風の匂いで近くに海を感じる。
12:38、三津浜港に到着すると、ちょうどフェリーが着岸したところ。今回の自転車旅はツキまくっている? 待合室で時刻表や地図を確認すると、中島行き。もっと時間があれば、島に渡ってみるのも楽しいだろう。
朝から何も食べていなかったので、腹ぺこ。大通りに面した「居酒屋なだまる」で刺身定食を注文。赤エビ、戻りカツオ、カンパチ、シャケ…。これで、750円。しかも、食後にはコーヒーのサービス付き。ランチとはいえ、東京では信じられない価格破壊ぶり。ご主人によれば、近くに市場があるので、安く、美味しい近海の幸を届けたい、とのこと。「それでも、儲けは少ないですが…」。ごちそうさまでした!
近くに面白い渡し船がある、と聞いたので、行ってみる。「三津の渡し船」だ。但し書きによると、ここは室町時代から対岸の港山城に物資を運ぶために使われた。渡船料は無料! 三津浜は価格破壊の町なのか。船着き場にいると、80m先の対岸から渡し船がやってくる。船長さんと補助員さんの2名が乗船している。補助員さんが自転車の運搬の手伝いをしてくれるらしい。
しかし、「あ、電動アシストかぁ」と補助員さん。ともかく、30kg以上ある電動アシストはサポート外のよう。小豆島でも、渡し船に電動アシストを載せた実績のあるオッサンはひるまない。自ら運び入れて、乗せてもらった。乗船時間は約5分。
運行時間は午前7時から午後7時まで、随時運航、年中無休。市営渡船で、年間4万人が利用。祭りの開催時など、多いときには1日150往復以上することもあるという。江戸時代には俳人、小林一茶も使ったという由緒ある航路。海だけども、市道高浜2号線の一部なんだそうだ。
渡った先には、一茶が句会を行った洗心庵跡地がある。その脇にある竹林の登山路を登っていくと、港山城跡。山頂広場は2016年3月に整備されたばかり。海と空が溶け合ったような荘厳な光景。正面に見えるは興居(ごご)島の小富士。この絶景も、オッサンが独り占めである。
坊ちゃん列車、気分はVIP 20分の小旅行
せっかくだから、坊っちゃん列車に乗ってみたくなった。15:42発の最終便、松山市発・道後温泉行きがあるようだ。厳島神社で旅の安全を祈願してから、松山市駅へ。市内には、4つのサイクルポートがあり、レンタル自転車はどこで返却してもよい。15:10、松山市駅に一番近いと思われるJR松山駅前観光サイクルポートで返却した。ちなみに、電池のゲージはひと目盛減っただけだった。
坊っちゃん列車は、文豪、夏目漱石が代表作「坊っちゃん」で、「マッチ箱のような列車」と形容したのがいわれである。確かに市電よりもサイズが小さい。文豪ならではの的確な表現。市電は一律大人160円だが、坊っちゃん列車は800円。切符は駅の車掌から購入できる。
昔は蒸気機関車だったが、現行モデルはディーゼル車で、煙の正体は蒸気という。車窓を眺めていると、観光バスが並走し、乗客が手を振ってくれる。VIPになった気分だ。唯一の欠点は、この列車を外から眺めることができないことだろう。
道後温泉駅までは20分。道後温泉駅では、ディーゼル車と客車は切り離され、坊っちゃん列車がターンするという珍しい光景も見ることができた。軽便鉄道だけに小回りが効くのだ。
道後温泉 本館も椿の湯も休館間近
前回訪問済の「道後温泉本館」は外観を見るだけにして、「椿の湯」に向かう。ここは本館の姉妹湯で、聖徳太子ゆかりの温泉場だ。利用料金は大人400円。別途60円払って、貸しタオル(みかん石けん付き)をゲットする。
男湯の湯釜には、正岡子規の句「十年の汗を道後の温泉(ゆ)尓(に)洗へ」が刻まれている。熱い温泉に浸かると、旅の疲れも吹き飛ぶ。聖徳太子も、正岡子規も、夏目漱石も、同じ湯泉に浸かっていたのだ。ありがたや。
道後温泉は今こそ、行くべき温泉地である。道後温泉本館は来年4月以降、改修工事に入る。工事期間は少なくとも数年に及ぶ。また、椿の湯も、「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」開館後の9月頃をメドに12月まで改修工事のため、休館となるからだ。
今回は坊っちゃん列車に乗るために、JR松山駅でレンタサイクルを返却したが、道後温泉駅前観光レンタサイクルポートもあるので、道後温泉まで走ってもよい。さらに、返却先が大街道観光レンタサイクルポートなら、0時までOK(5時以降の返却は要連絡)だ。
市内に温泉も兼ね備えた松山は、サイクル天国である。