
自転車メカニックが教える、チューブの選び方と交換の方法
こんにちは。サイクルメカニックの石橋です。
自分でチューブ交換ができるようになれば、通勤時やサイクリング中の急なパンクにも落ち着いて対処できますよね。しかし、どのチューブを選べば良いか分からないという人も多いでしょう。
チューブ選びのポイントは「空気口のタイプ」「タイヤサイドに書いているサイズ表記」「リム高」の3点。これでチューブの選び間違えを極力防ぐことができます。
今回は自転車のチューブの基本と選び方、おすすめのチューブについて解説します。
目次
タイヤとチューブの構造
自転車のタイヤは内側にチューブを入れることで空気が入り、使用できる構造になっています。最近はチューブを使用しないチューブレスタイヤが登場していますが、まだまだ数は少なく、大部分がチューブを必要とするタイヤです。
自転車のチューブは、タイヤの中に入れるいわばゴム風船のようなものです。チューブに空気を入れ、膨らませることによって初めて走れるようになります。
また、自転車のタイヤには複数のサイズがあり、700Cや20インチなど、それに対応するチューブも同じくらい数が存在します。
空気口の種類は3つ
チューブにはそれぞれ空気口(バルブ)の形状の違いで、仏式、米式、英式の主に3つの規格が存在します。
仏式
仏式はスポーツバイク全般で利用されているタイプです。ロードバイクをはじめ、細いタイヤは空気圧を高める必要があるため、高圧に対応できる仏式を採用しています。
米式
オートバイや自動車も利用する空気口が米式です。空気口が太く、強度があり、マウンテンバイクなどの太いタイヤに採用されています。
英式
ママチャリをはじめとしたシティサイクルはほとんど英式を採用しています。日本人には一番なじみのある空気口ではないでしょうか。しかし、英式は海外メーカーが多いスポーツバイクにはほとんど見られません。「英式」とは言いつつもほとんど日本で利用されているのです。
※それぞれの空気口には、先端を保護するための黒いキャップが付いていますが、今回は便宜上省いています。
チューブのゴム素材「ブチル」と「ラテックス」とは?
チューブはゴム製品ですが、どのようなゴムの素材を使っているのでしょうか。
まず1つは主な原料に石油を使用した化学合成で作られたチューブです。それはブチルチューブと呼ばれ、チューブの8割以上はこのブチルチューブが採用されています。
もう一つは、ラテックスと言われる天然ゴムを使用したチューブです。ラテックスチューブは化学合成よりもコストが掛かり、ブチルチューブよりも価格が倍以上するものもありますが、強度がありちぎれにくいため、チューブを軽量化することができます。
スポーツ自転車の軽量化やロードバイクのレース用のチューブとしても利用されています。
ブチルとラテックスは見ただけでは違いがわからないものがほとんどですが、中には違いがわかりやすいようにラテックスの方には黒以外の色を使用するなど工夫がされています。
正しいチューブの選び方
たくさんのサイズの中から、自分の自転車に合ったチューブを選ぶには、空気口の形状を確認し、タイヤをチェックすることからはじめましょう。
ほとんどのタイヤは、接地面の脇(タイヤサイド)にタイヤのサイズが書かれています。その内容と同じ表記がされているチューブを選べばよいのです。
画像を見ると、23-622と(700×23c)の2つの表記があり、どちらも同じサイズを指しています。23はタイヤの横幅を表します(23mm=2.3㎝)。622というのは、車輪(ホイール)の外径(mm)のサイズです。
700というのはタイヤの外径が約700mmという意味です。計測しているのが車輪とタイヤで別物のためこのような表記となりますが、622≒700と覚えてもらうと良いでしょう。
ロードバイクやクロスバイクでよく700cと呼ばれるサイズがこれに当たります。
実際にチューブのパッケージを見ていくと、700×18-25cと18/25-622の2つの表記が確認できると思います。
18-25cとは18cから25cまでの太さなら対応できるという意味です。チューブは伸縮性があるため、タイヤに対してワンサイズではなく、その前後のタイヤサイズまで対応できるのものが多いのです。18/25も同じ意味です。
空気口の長さ(バルブ長)に注意
自分のチューブのサイズがわかったところで、もう一つ注意したい点があります。それは空気口の長さ(バルブ長)の確認です。パッケージの画像で言うと、左側に48mmと表記されているのがバルブ長です。
チューブを選ぶ時は、車輪のリム高よりもバルブ長が長いタイプを選ばなくてはなりません。そうでなければ、空気が入れられないからです。
具体的に画像のようなことになります。リム高が高いことで、バルブ長が足りなくなり、空気口がほとんど出ていませんね。この状態では空気を入れることができません。
リム高の測り方
メジャーや定規を使ってリム高を測ってみましょう。あくまで目安ですが、リム高が30mm以内であれば50mm前後のバルブ長を持つチューブを選ぶと良いでしょう。
画像のように、リム高が30mm以上ある場合は、さらに長いバルブ長のチューブが必要です。リム高に対して、20mm以上長いバルブ長のチューブを選ぶと良いでしょう。
メカニックおすすめのチューブ
シュワルベはドイツのタイヤ、チューブメーカー。仏、米、英式全てのジャンルに対応しているチューブのラインナップは非常に細かく、耐久性でも評判が高いです。
TIOGAのチューブは他社よりも非常にリーズナブルな価格設定で人気です。私もこちらを使用しています。
VITTORIAはイタリアのタイヤ、チューブメーカーです。ロードバイク用を中心にラインナップしています。ロードバイク乗りには定番のチューブメーカーです。
メカニックが伝授するチューブ交換の方法
適正なチューブを選ぶことが出来たら、パンク修理やタイヤ交換が自分でできるようにチューブ交換の方法を解説していきます。これができるようになれば急にパンクした時も慌てずに対応できると思います。
1.タイヤの空気を抜く(パンクしている場合は不要)
仏式の場合は、空気口の先端のネジを緩めてから押し込むと空気が抜ける仕組みです。
2.空気がすべて抜けたことを確認
空気がすべて抜けると、このように車輪の中が見えるようになります。この時、チューブはタイヤの中に隠れています。
3.タイヤレバーを使いタイヤを外していく
タイヤを外すときはタイヤレバーを使います。てこの原理を使い1か所ずつ順番に外していきます。タイヤや車輪を傷つけないためにプラスティック製のタイヤレバーの使用をおすすめします。
4.タイヤの片側をすべて外す
タイヤレバーを使い1か所ずつ外していくと、タイヤの片側がすべて外れます。
5.チューブを取り出す
タイヤの片側が外れると、その間から簡単にチューブを取り出すことができます。
6.最後に空気口を取り出す
タイヤの片側からチューブを取り出したら、最後に空気口を車輪から取り出します。
7.交換するチューブに微量の空気を入れる
ここからは、交換用のチューブをタイヤに入れていく作業です。まず、チューブを入れやすくするため、あらかじめ交換用のチューブに微量の空気を入れます。空気入れを1,2回押す程度の量で構いません。
8.タイヤ全体にチューブを入れる
タイヤ全体にチューブを入れるのですが、この時にチューブがねじれて入ってしまうと、最終的に空気を入れたときにパンクや破裂の原因となるので注意が必要です。先程微量な空気を入れたのもそのためです。
9.車輪にタイヤをはめ込む
タイヤ全体にチューブを入れ終えたら、タイヤを車輪にはめ込んでいきます。タイヤと車輪の相性によって、はめるのに苦労するかもしれません。その際は無理せずショップに任せましょう。
10.チューブの噛みこみをチェック
ひと通り、タイヤが車輪にはまったら、タイヤとチューブが噛みこんでいないか、チューブがねじれていないか確認します。画像ように、タイヤをつかみリムの中を覗いてみて、チューブが隠れていたらOKです。もしタイヤが噛みこんだり、ねじれているとタイヤの中からチューブが飛び出して見えるはずです。
11.空気口の根元もチェック
嚙みこみやねじれがなければ、空気口の頭を押し込んで、空気口の根元の嚙みこみもチェックします。
12.空気を入れて完成
すべてのチェックが終了したら、空気を入れて完成です。
おわりに
交換用のチューブ、タイヤレバー、携帯用の空気入れは必須です。あらかじめバッグなどに保管しておきましょう。

WRITTEN BYVIKING the MAINTENANCE
都内のプロショップに10年間在籍後、2015年VIKING the MAINTENANCE を設立。東京・西新宿を拠点にスポーク自転車の組付け、カスタマイズ、メンテナンスを軸に展開中。年2回富士山麓でサイクルイベントも企画中。 http://www.viking-the-maintenance.com/
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