△カンパニョーロの最上位グレードコンポーネント「Super Record」一式 出典:Campagnolo
シマノに続いてカンパにもビッグなアップデートが!
カンパニョーロ(通称:カンパ)はイタリアの自転車パーツメーカー。ブレーキやディレイラーといった、コンポーネントの大手です。完成車にはシマノのコンポーネントが採用されているケースが多く身近さでは一歩劣りますが、コンポーネントメーカーとしての存在感はひけをとりません。その格調高いデザインなどには根強い人気があり、ハイエンドなヨーロピアンフレームに載せてる人が多い印象ですね。
さて、そんなカンパの12速化って何がどうよくなったんでしょう? 今回は、カンパ歴55年・メカニック歴40年のOさんに12速化の意味を教えてもらいました。
ライダーに合ったより細やかな変速が可能に
△Super Recordのスプロケット。今回アップデートされたのは、このSuper Recordとセカンドグレード「Record」。12速化に伴ってギア1枚1枚はより薄くなり、チェーンも少し薄型化。 出典:Campagnolo
「12速化」をもうちょっと詳しく説明すると、11枚だったスプロケットが1枚増えたということ。
ご存知の通り、スプロケットは大小さまざまなギアをひとまとめにしたパーツで、大きい(歯数が多い)ギアを選べば速度は落ちますがペダルは軽くなり、小さい(歯数の少ない)ギアを選べばペダルが重くなる代わりに速く走れます。走行に影響する、極めて重要なパーツですね。カンパはここにメスを入れてきたわけです。
※以下に登場する「〜T」はギアの歯数を示します。ロードバイクでは基本的に11Tが最小ギア(平坦などを高速走行する際に使うギア)で、最大ギア(ヒルクライムなどに使用)は28〜32Tが多いです。
── 12速化にはどんなメリットがありますか?
Oさん:ライダーに合った細やかな変速ができるようになります。
今回は、スプロケットに16Tが追加された形です。スプロケットの真ん中にくる16Tや17T、18Tといったギアは使用頻度が高いです。多くの人が使っているコンパクトクランク向けのアップデートとして見ると、16Tを足すのはいいチョイスだと思います。
少し補足すると、走行中は勾配や風向きの変化に応じて負荷が微妙に増減しますが、よく使う歯数のギアが1枚増え、ギア選択の幅が広がったことで、小刻みにギアを変えて繊細に対応できるようになりました。
── 新しいカンパはどんな用途向けのコンポーネントだと思いますか?
Oさん:細やかな変速が実現できるということから、やはりレース向けですね。
ツーリングなどではそこまでスピードにシビアにならなくてもいいので、よりシリアスなレース志向のサイクリスト向けの調整と言えるわけです。
その一方で、負荷に対して細かくギアを選んで走るなら、脚へのダメージを減らせるでしょう。100km超のロングライドなどでも十分に威力を発揮しそうです。
── デメリットはありますか?
Oさん:ギア鳴りやミスシフトが増えるかもしれません。
また、適切なセッティングをするのに、今までより手間がかかるでしょう。シフトワイヤーを事前に引いて伸びしろを取ったりする必要があるかもしれません。
調整面や操作面が複雑に、シビアになるようです。調整に関してはプロショップで定期的に確認してもらい、操作面は慣れでカバーする必要がありそうです。
12速化以外の主要なアップデート
△Super Recordのクランクセット。その独特の艶やかさからわかるように、カーボンが使われていますね! 出典:Campagnolo
実は12速化以外にもアップデートがなされています。主なものは以下のとおり。
- キャリパーブレーキが調整され、28Cまでのタイヤに対応
- クランクがより空力を意識したデザインに
- フロントディレイラーがダブルスプリング化、これによってフロント変速に要する手の力が少なくなると思われる
このあたりは、より太いタイヤやエアロフレームの隆盛に伴うもの。ライダーへの負荷軽減を意識したと思われる調整も実際に使っていくなら嬉しいものです。
なお、レバーが少し大型化しており、この点は小型レバーをラインナップしたシマノの新105と逆の方向性。レバーが大きいとブレーキに指が届かなかったりすることもあるので、悩ましくもありますね。
12速標準化を先取りした形になるかも?
△Super Recordのリアディレイラー。こちらもカーボンが用いられている。 出典:Campagnolo
さて、12速化は今後どのような影響を及ぼすのでしょう。
── カンパの12速化はほかのコンポーネントメーカー(シマノやSRAM)にも波及すると思いますか?
Oさん:当然、追従してくると思います。2010年の時点で「14段変速は実現可能」とうかがっていますし。
今年シマノは新しい105にディスクブレーキをラインナップし、ディスクロードの普及を加速する動きを見せました。それに対してカンパは変速面の強化を先取りする道を選んだのかもしれませんね。両社はともにコンポーネントのメーカーですが、デザインからスプロケットの歯数構成まで多数のちがいがあります。突き進む路線が異なるのも当然でしょう。
トップグレード・Super Recordはキャリパーブレーキ版一式の予定価格が約40万円、ディスクブレーキ版が約45万円。セカンドグレード・Recordはキャリパーブレーキ版が約27万円で、ディスクブレーキ版が約33万円とのこと。極めて高価ではありますが、今回お話をうかがったOさんは「カンパニョーロのコンポーネントは1960年代から故障が少なく、デザインも優れており、レバーがすり減るまで使ったことがある」と熱狂的なファンっぷり。デザイン面のすばらしさは、画像から伝わるのではないかと思いますが。
イタリアンブランドらしく我が道を行く老舗メーカーの新コンポーネント、いつかは手に入れたい憧れの逸品として、またはボーナスの投入先として覚えておく価値があるはず。2018年6月に発売予定です。