和泉葛城山(いずみかつらぎさん)にはヒルクライムルートが7本あり、総獲得標高はなんと4,689m。
和歌山側に中尾(なかお)、粉河(こかわ)、神通(じんつう)の3ルート、大阪側に蕎原(そぶら)、犬鳴(いぬなき)、牛滝(うしたき)、塔原(とのはら)の4ルートがあり、1日に2ルート登ることを2葛(にかつ)、1日に7ルート全てを制覇することを「7葛(ななかつ)」といいます。噂では12葛した人がいるとかいないとか。
気になる斜度も中々で、20%オーバーの激坂区間もあります。斜度がきついイメージのコンクリートの区間がとても多く、特に中尾と蕎原がきついです。
今回は関西のヒルクライマーを魅了する和泉葛城山をご紹介します。
目次
和泉葛城山へのアクセス
大阪府と和歌山県にまたがる「和泉葛城山」。金剛生駒紀泉国定公園の西部に位置し、ハイキングコースとしても人気です。金剛生駒紀泉国定公園には葛城山という名前の山がいくつかあり、大阪府と和歌山県にまたがる「和泉葛城山」と、大阪府と奈良県にまたがる「大和葛城山」が有名です。
和泉葛城山の山頂の展望台からは北は関西空港、南は和歌山平野が望め、夜景スポットとしても有名。また山頂周辺には日本では群生の南限となるブナの原生林があり、森林浴や紅葉が楽しめます。
輪行の場合
各ルートの最寄駅とスタート地点からの距離は以下になります。
大阪側の3ルートにアクセスしやすいのが、水間鉄道水間観音駅。蕎原ルート(6.8km)、塔原ルート(8.0km)、牛滝ルート(10.2km)です。残り1つの犬鳴ルート(11.6km)の最寄駅はJR阪和線日根野駅になります。
和歌山側の中尾ルート(3.2km)、粉河ルート(3.5km)の最寄駅はJR和歌山線名手駅。神通ルート(8.2km)への最寄駅はJR和歌山線打田駅。
水間観音駅から「蕎原ルート」の入り口まで
駅周辺は交通量が多く、路肩が狭い箇所もあるので走行には注意が必要。
車載の場合
大阪側からなら、牛滝ルートの入り口近くに「牛滝温泉 いよやかの郷」の有料駐車場があります。
和歌山側からなら、中尾、粉河ルートからそれぞれ約3kmのところに「道の駅 青洲の里」の駐車場があります。
和泉葛城山ルート詳細
大阪側、和歌山側から合わせて7つのルートがあります。関西ヒルクライムTT資料室での難易度は以下の通り。上級者向けのSからやや難易度の高いBまで揃っています。
中尾ルート:S
蕎原ルート:S
粉河ルート:A
犬鳴ルート:A
神通ルート:A
牛滝ルート:B
塔原ルート:B
和歌山側からの3ルート
中尾(なかお)ルート
和泉葛城山屈指の難コース。平均9.4%の斜度ですがスタートから3〜6kmはとにかく激坂。まっすぐの激坂、つづら折りの激坂、果樹園を縫うように走る激坂と、激坂のフルコースを味わえます。
坂のキツさ:★★★★★→15%オーバーの激坂だらけ
景色:★★★★☆→眺望、多様なルートの風景がGOOD
路面:★★☆☆☆→ほぼコンクリート舗装
車の少なさ:★★★★☆→地元の人しか通らない
楽しさ:★★★★☆→激坂好きのパラダイス
獲得標高:730m
距離:8.9km
平均斜度:9.4%
最大斜度:25%ほど
スタートから3kmは徐々に斜度をあげて登っていきます。ちなみにスタート地点付近の「広域農道」はアップダウンが激しく、ここでトレーニングされている方も多いです。
写真奥に見えるスタートから3km付近の小さい橋を越えると、路面もコンクリートになり本格的にきつくなっていきます。ここから1kmほどは20%ほどの壁のようなまっすぐな坂道が立ちはだかります。
▲スタートから4km付近のつづら折り。カーブを越えると少し斜度がゆるくなるので、心拍を整え、足を休めます。
▲スタートから4.5km付近。景色が気持ちいいが先はまだまだ。
▲写真でも見てわかるような斜度! 平衡感覚がおかしくなる坂をいくつもこなしていきます。
この倉庫前の斜度は約25%で暗峠を思い出します。ここからミカンや柿などの果樹園の間を走る激坂区間です。すぐそばに警察犬の訓練所があり、不審者に間違えられたのか犬に吠えられながらこの写真を撮りました。
▲道は細いのですが車は少ないので走りやすい。ただ平均15%ほどの激坂ですが……。
▲6.3km付近で完全に路面がアスファルトになり、なぜかガッツポーズ。
コンクリートの激坂ばかりが続くこともあり、アスファルトが恋しくなるこのルート。このあとは尾根線沿いを平坦や下りを交えながら走ります。前半3kmとここから3kmほどの区間で平均斜度を下げています。
▲牛滝、塔原ルートとの合流地点。ゴールまであと200mほど。
▲ゴール地点の掲示板。岸和田ツーリングクラブ掲示板に記帳して中尾ルートクリア!
粉河(こかわ)ルート
7ルート中最長の11.5kmを登るルート。前半のミカン畑は急坂ですがそれを越えれば斜度もゆるく景色も楽しめます。
坂のキツさ:★★★☆☆→序盤を乗り切れば後半は楽できます
景色:★★★★☆→ハイランドパーク以降の尾根線の眺望が素敵
路面:★★★★☆→アスファルト舗装で状態もいい
車の少なさ:★★★☆☆→和歌山側からの観光客のメインルート
楽しさ:★★★☆☆→7ルート中で最長距離
獲得標高:750m
距離:11.5km
平均斜度:7.6%
最大斜度:15%ほど
▲スタートから200mほどの「ハイランドパーク粉河」の看板を左へ。
▲1.0kmをすぎるとミカン畑を走るつづら折りが始まります。
▲3km付近がこのルートでいちばんきつかった印象。それでも10%強ほどなので走りやすい。
▲7.2kmの神通ルートとの合流地点。ここからは尾根線沿いを下りを交えながら走っていきます。
▲「ハイランドパーク粉河」の入り口。ここで7.5km地点。ちなみにキャンプ場です。
▲整備された尾根線を気持ちよく走ります。左に見える建物は展望台で、晴れて空気が澄んでいる日は大阪湾や淡路島を一望できます。
▲ハイランドパーク粉河からゴールまでは尾根のアップダウン。余裕があるので景色とともに楽しめます。
▲ゴールまで1km。この辺りは路面はコンクリートでところどころ10%を超える坂があります。
神通(じんずう)ルート
神通ルートは片側1車線と道幅も広く、路面も整備されていて、7ルート中いちばん走りやすいルート。スタートから5.8km地点の粉河ルートとの合流まで一定の斜度の坂が続きます。
スタート地点のすぐそばには後述する「神通温泉」があり、自販機や売店があるので補給もできます。
坂のキツさ:★★★☆☆→斜度がある程度安定していて走りやすい
景色:★★★★☆→眺望抜群
路面:★★★★★→整備されていて綺麗な路面
車の少なさ:★★★☆☆→たまに遭遇
楽しさ:★★★★☆→とにかく走りやすい
獲得標高:652m
距離:10.2km
平均斜度:8.4%
最大斜度:15%ほど
▲道幅が広く路面も整備されていて、車もあまり走らないので快適に走れます。
上記のヘアピン区間が景色がよく神通ルートのおすすめ撮影スポット。ほぼ真上から写真が撮れます。
▲12%の標識。粉河ルートとの合流地点まで10%前後と一定の斜度が続きます。
▲路面がいいこともあり、人気のこのルート。何人かのサイクリストとすれ違ったり、追い抜かれたり。真ん中のオレンジ色が僕ですが、この後すぐに後ろの方に抜かれました。
▲3km付近までくると、景色は登ってきた感が出てくるがまだまだ先は長い。
▲5.8kmの粉河ルートとの合流地点を左へ。ここからは粉河ルートと同様の尾根線のルートを走ります。
大阪側からの4ルート
蕎原(そぶら)ルート
中尾と並ぶ難ルート。2km付近から粉河ハイランドパークまでコンクリートの激坂が続きます。序盤は壁(まっすぐの激坂)で、後半はつづら折りの激坂があり、その後粉河ルートに合流します。道幅も細く車もたまに通るので注意して。
坂のキツさ:★★★★★→極悪
景色:★★★☆☆→同じ景色が多い
路面:★★☆☆☆→ほぼコンクリート舗装でひび割れもあり
車の少なさ:★★★☆☆→細い道なのに意外と多い
楽しさ:★★★★☆→激坂好きには天国、その他の人には苦行
獲得標高:633m
距離:8.3km
平均斜度:9.2%
最大斜度:20%ほど
▲スタートから1kmほど古い町並みが続くゆるい登りを進んでいきます。
▲1.5km付近の橋を渡り、道なり(左)に進むと斜度が上がり本格的に登りが始まります。橋を渡ったら斜度が上がるパターンです。
▲前半のコンクリートの壁のような坂。ゆるやかなカーブと15%の激坂が3kmほど続きます。
ルート前半のカーブはゆるいのですが、斜度がキツイ区間で心が折れないかが、蕎原ルート攻略のポイント。足を休めるところがあまりないので、軽いギアで黙々と登ります。
▲登りなのでそこまで気にしなくてもいいが、排水溝の位置もいやらしいところにある 。(*後注参照)
▲蕎原ルートいちばんの見せ場(難所)の20%オーバーのカーブ。4.4kmにあります。
▲4.5km付近で犬鳴ルートと合流。この看板を左に進みます。
▲5.1km地点の粉河ルートとの合流付近にある売店。自販機やレストラン、バイクラックもあります。
▲蕎原ルート走破。この日は中尾→粉河→蕎原と登りヘロヘロ。手には力なく3本目の「3」のハンドサイン。
自転車乗りには厄介者でおなじみのグレーチング(写真にある排水溝の写真のような網状の蓋)。
隙間がロードバイクのタイヤくらいの網なので、通り抜ける時はコワいですよね。雨あがりなどで濡れていると滑りやすく、ダンシング(立ち漕ぎ)しながら通るとスリップすることも……(私も坂でダンシング中、スリップして落車した経験アリ)
グレーチング通過には気を付けましょう!
犬鳴(いぬなき)ルート
2.8~5.5kmの高城山までの激坂区間を経て、7.4kmで蕎原ルートに合流します。中尾、蕎原ほどではないが、なかなか険しいルートです。
坂のキツさ:★★★★☆→高城山まではきつい
景色:★★★☆☆→粉河ルート合流まではあまり眺望は望めない
路面:★★★☆☆→落ち葉がやや多く、路面も荒れ気味
車の少なさ:★★★★☆→山林管理用の林道のため少なめ
楽しさ:★★★★☆→斜度にメリハリあり
獲得標高:724m
距離:11.2km
平均斜度:8%
最大斜度:15.7%
▲スタートから2.8kmほどにある200mほどのトンネル。ここを過ぎると斜度が上がります。
▲木漏れ日が気持ち良さそうに見えますが、斜度は10%オーバーなので、必死にペダルを回します。
▲コンクリート舗装に切り替わり、斜度がこれから一段と上がる。
▲スタートから4.3km付近にある斜度15.7%の標識。犬鳴ルート屈指の激坂ポイント。
上記のポイント~5.5km付近の高城山をピークに徐々に斜度が上がっていく犬鳴ルート。この区間を越えると斜度はゆるやかになっていきます。
牛滝(うしたき)ルート
はじめに20%ほどのコンクリートの激坂の後、ゆるやかな区間と急坂区間を繰り返します。今回の7ルート内でいちばん北側にあるので、大阪側からのサイクリストが多いルートです。
坂のキツさ:★★★★☆→スタート直後のインパクトが大
景色:★★★★☆→晴れていれば大阪平野が望める
路面:★★★☆☆→落ち葉が多い
車の少なさ:★★★★☆→山林管理用の林道のため少なめ
楽しさ:★★★★☆→斜度にメリハリあり
獲得標高:601m
距離:7km
平均斜度:9.1%
最大斜度:20%ほど
▲府道40号線牛滝林道入り口がスタート地点。初めからコンクリート舗装です。
▲スタート直後の20%の激坂。300mほどで斜度は一旦落ち着きます。
▲川沿いを走っているのでところどころ涼しげな景色に出会えるのが、牛滝ルートのいいところ。
斜度のキツイ所とゆるい所とのメリハリがあり筋肉ライマータイプの僕にとって、なかなか好みのルート。CMのような川のせせらぎに癒されながら走れます。
▲正確な場所は忘れたのですが、おそらく5km付近の大阪平野を見渡せる場所。晴れているのですが霞んでいるので少し残念。
▲中尾ルートとの合流地点。ここを右に曲がるとゴールはすぐそこ。
塔原(とのはら)ルート
ルートラボで平均斜度9.5%となっていますが、そこまで坂はきつくない。ただ、牛滝ルートとの合流手前に15%ほどの坂があります。それ以外はだいたい一定の斜度です。
坂のキツさ:★★★☆☆→10%前後の一定の斜度の区間がほとんど
景色:★★★☆☆→晴れていれば大阪平野が望める
路面:★★★☆☆→落ち葉が多い
車の少なさ:★★★★☆→取材時は1台も出会わなかった
楽しさ:★★★☆☆→一定の斜度を黙々と登る
獲得標高:599m
距離:6.8km
平均斜度:9.5%
最大斜度:15%ほど
▲スタート地点のバス停。自動販売機もあるので補給もできます。
▲序盤は民家や畑の側を走るので、歩行者に気をつけて徐行してください。
▲車は比較的少ないが道幅が細い林道。やや落ち葉が多いので秋には注意が必要。
▲スタートから1kmの橋を越えると徐々に斜度が上がっていきます。
▲2.2km付近のヘアピン。斜度は10%強なのでそこまでしんどくはない。
▲全体的にヘアピンが続くコースですが、斜度の緩急はあまりなく淡々と登っていきます。
▲スタートから5.5km付近には少しだけ景色が見えるポイントがあります。
▲牛滝ルート合流直前にある15%前後の坂。ここを越えれば後少し。
岸和田ツーリングクラブ掲示板とは?
「あれは何?」とみなさん思っているであろう、各ルート走破ごとに記帳していた掲示板。
1985年に岸和田市の方がだんじりの体力づくりのために自転車に乗り始め、2007年に和泉葛城山にこの掲示板を設置されたのだそうです。登った日、ルート、チーム名などを書き込むと岸和田ツーリングクラブのホームページに掲載されます。自転車で和泉葛城山に登った方はどなたでも書き込むことができます。
紀の川市周辺おすすめグルメ
和歌山側の紀の川市は町ぐるみでサイクリングを振興していて、バイクラック完備やポンプの貸し出しなど、サイクリストに優しいお店がたくさんあります。その中でも特にオススメするグルメスポットを紹介します。
二代目よなきや
3種類の豚骨、鶏ガラ、野菜で出したスープと、魚介系スープをブレンドした特製スープと、自家製の中細ストレート麺が合わさりあった絶品のラーメンをいただけます。
店主自身もランナーということもあり、遠くからランナーが走って来店することでも有名なラーメン店。サイクリストもウェルカムでバイクラックも設置しています。
観音山フルーツガーデン
2018年4月にできた、果樹園の観音寺フルーツガーデンが運営するフルーツパーラー。とれたての新鮮な果物をふんだんに使ったパフェは絶品。
▲パフェを食べるのは約15年ぶり。フルーツはもちろん下のクリームも美味。
▲2階部分がフルーツパーラーで、バイクラックの1階奥の方ではフルーツも購入できます。
住所:和歌山県紀の川市粉河3186-126
フリーダイヤル:0120-593-262
電話:0736-74-3331
営業時間:10:00~17:00
定休日:火曜日(祝日の場合は翌日休)
ヒルクライム後は、天然温泉で汗を流そう
和泉葛城山周辺は犬鳴山温泉をはじめとして温泉が多く、多くの観光客が訪れるところでもあります。その中でも今回紹介したルートからアクセスしやすい温泉をご紹介します。
犬鳴温泉センター
犬鳴ルートのスタート地点は山間の温泉街。その犬鳴山温泉にある日帰り入浴可の温泉。泉質は純重曹泉で、ヒルクライムの疲れを癒せます。日帰り入浴は大人900円。
牛滝温泉いよやかの郷
牛滝ルートすぐそばの温泉施設でキャンプ場なども併設されています。ナトリウムイオンと炭酸イオンを含んだ弱アルカリ性の泉質。入浴は大人700円。
ホームページ
神通温泉
神通ルートすぐそばの温泉施設。食事もでき、今回は食べられませんでしたが、ぼたん鍋うどんが美味しいという評判。自噴性イオン温泉という泉質らしく、地球の気圧や海の満潮・干潮、地球が自転する遠心力によって泉水の色が変わるよう。入浴は大人700円。
天然温泉 清児(せちご)の湯
水間鉄道清児(せちご)駅近くの温泉施設。コインランドリーもあり駐車場も大きいので、輪行、車載ともにおすすめです。清児の地名と龍谷山水間寺から「清龍温泉」と命名された源泉を楽しめる露天風呂やジェットバスでヒルクライムの疲れを癒せます。入浴は大人440円。
おわりに
関西屈指の激坂、和泉葛城山を7ルート登ってきました。特に中尾、蕎原は中々の険しさで、ところどころこの前の暗峠を思い出しました。
ちなみに僕は1日目に中尾→粉河→蕎原で足がガクガクするほど自身の力を使い果たし、2日目に犬鳴→神通で天候不順となり、3日目に牛滝→塔原と3回に分けて行きました。取材前に知人が7葛したので触発されて1日目に難関ルートを走りましたが、今の脚力では7葛はまだまだでした。
関西はもちろん全国のヒルクライマーの方、7葛チャレンジしてみてください!