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命を守るブレーキの調整方法~ひとりで100㎞走るためのメンテナンス講座#13

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初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて、問題なく帰ってくるためのメンテナンス方法を紹介する連載企画。続けて読んでもらえれば、ライド前に必要な準備はもちろん、ライド中のトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。無事に100㎞ライドを終えたころには脱・初心者です!

前回前々回は変速機のメンテナンスをお届けしました。多段変速のスポーツバイクでは最もトラブルが生じやすい弱点ともいえる箇所ですし、調子が悪いまま放っておくと走行不能になってしまう恐れもあるので、日頃からのメンテナンスが大事だという話をさせてもらいました。

今回はリムブレーキのメンテナンスです。スポーツバイクのブレーキはシンプルで丈夫な構造をしており、突然効かなくなるような重大なトラブルはめったなことでは起こらないように作られています。とはいえ「止まればいいんでしょ」とあまりに無頓着に乗り続ければ、いずれぶっ壊れてしまいますし、よくメンテナンスされているブレーキは思い通りの制動ができて気持ちの良いものです。安全かつ快適に100㎞ライドを走りきるためにも、ブレーキの状態に気を配るようにしましょう。

走り出す前に“片効き”をチェック!

まず走り出す前に毎回チェックしてほしいのが、ブレーキ本体が左右に片寄りなく取り付けられており、ブレーキシューがリムに左右同時に当たるかどうかです。左右のどちらかが先にリムに接触する状態を“片効き”と言います。片効きの状態では制動力が低下したり、思い通りの減速ができなくなってしまいます

▲レバーを引き、ブレーキシューが同時に当たっているかをチェックする。

片方が先に当たるようなら、ブレーキ本体を取り付けているネジを若干ゆるめ、両方のシューが同時にリムに当たるように、おおまかにセンタリング調整をしましょう。5mmのアーレンキー(六角棒レンチ)を使用します。

▲ゆるめすぎないのがポイント。

ブレーキ本体は規定トルクで締め付けましょう。シマノの取り付け指定トルクは8~10N・mです。トルクレンチを持っていない方は分からないでしょうが、イメージとしては、そこまで強く締め付けず、ブレーキ本体が動かない程度にしておきます。微調整は、センタリング調整ボルトで行います。3mmのアーレンキーが適合します。

▲センタリング調整ボルトは時計回りで右に、反時計回りで左に移動します。

このボルトでは微調整にとどめます。ブレーキのセンタリングは、輪行や車載などで案外ずれやすいんです。毎回走り出す前に、前後とも確認するクセを付けましょう
センタリング調整を行っているときに、ブレーキシューの取り付け位置も同時にチェックしてください。ブレーキシューはリムの上端から1mm以上離れた場所に進行方向が先に当たるように取り付けます。シマノは、進行方向側のブレーキシューがリムに接触したときに、バイクの後ろ側のシューが0.5mm空く角度で取り付けるよう指示しています。この角度を付けることを“トーイン”と言います。ブレーキシュー取り付けボルトを緩め、後ろ側に厚紙などを挟んでブレーキシューを締め直すと角度が付けやすいです。角度を付けるためのブレーキチューナーも各社から発売されています。

▲Tacx BRAKESHOE TUNER GRY ツールを使った調整。

リムとブレーキシューのメンテナンス

気持ちのいいブレーキングに大事なのが、リム面とブレーキシューが汚れていないことです。リムのブレーキが接触する面は、普段からパーツクリーナーや泡タイプの洗浄剤などを使って油分やブレーキシューのカスを取り除いておきましょう。アルミホイールは、ときどきホーザンのラバー砥石を使って研磨してあげると、綺麗な状態を保てます。

次にブレーキシューをチェックします。摩耗しているようなら新品に交換しましょう。ブレーキシューには交換時期を知らせる溝が掘られています。この溝がなくなったら交換時期です。ですが、そこまで減っていなくても、ゴムは紫外線や熱などで劣化します。1年に一度、長くても2年に一度は交換してください。

アルミ製のリムを使っている場合は、リムの制動面のアルミ片が削れてブレーキシューに刺さってしまっていないか定期的にチェックします。アルミ片が刺さったまま使い続けると、リム面を削ってしまいますからね。アルミ片が確認できたら千枚通しなど先の尖ったモノでほじくり出します。この作業でシューのゴムにどうしても傷が付きますが、より高価なリムが削れるよりはずっとマシです。リムにも摩耗を知らせる小さな穴が空いている場合が多いです。長年使ったホイールのリムの制動面が極端に凹んでいたりする場合は交換時期かもしれません。「まだ大丈夫だろう」と乗り続けてはダメですよ。ホイールも消耗品です。「おかしいな」と思ったらショップで摩耗具合を調べてもらってくださいね。

▲フロントライトなどで角度を変えながら強い光を当てるとみつけやすい。

また、ブレーキシューの接触面がテカってつるつるしているようならば、対策が必要です。これは熱で焼けてしまった状態で、ブレーキの効きが悪くなっているはずです。そんなときは、100~180番ぐらいのヤスリを使ってブレーキシューの表面を荒らしてあげます。アルミ片を除去し、表面を荒らしてあげることで、本来のブレーキ性能を引き出すことができます。またアルミ片がホイールを削ることが少なくなれば、ホイールの寿命を延ばすことにも繋がります。

最後に、ワイヤーの張り具合を調節して、ブレーキレバーをどれぐらい引いたらシューがリムに接触するのかを調整します。好みの感触で調整して問題ないのですが、あまりハンドルに近いところで効く(遊び幅が多い)ようにしていると、雨の下りなどでブレーキシューが減ってしまうと、ヒヤッとすることがあるかもしれません。ブレーキシューが減ればレバーの可動域が増えるので、ときどき調整しましょう

ブレーキの状態が良く制動が思いのまま、というのは、安全に速く走るために必須の条件です。スピードが出るけれど止まらない乗り物を公道で走るのは恐すぎますからね…。

この連載では、あまりに頻度が高くてわざわざショップにお願いできないことや、ライド先で自ら行う必要が生じる緊急のメンテナンス項目を解説しています。ここまでは、タイヤの空気圧を管理し、チェーンを綺麗にし、変速とブレーキを良い状態に保つところまで紹介してきました。大事なことなので何度も繰り返していますが、あくまでも、基本的にバイクのメンテナンスは信頼できるショップにお願いしてくださいね。長年多くのバイクの面倒を見てきた腕のいいプロのメンテナンス技術は、ホームメカニックの及ぶところではないです。工賃や消耗パーツの出費をケチらないことが、安全に楽しく走るために最も大事なことなんですよ。

●バックナンバー【ひとりで100㎞走るためのメンテナンス講座】
第1回/空気の入れ方
第2回/簡単なチェーン掃除法
第3回/水を使わずチェーンを洗う(準備編)
第4回/水を使わずチェーンを洗う(実践編)
第5回/出先でのパンク修理に必要な7つのギア
第6回/確実にサッと行う出先でのパンク修理法
第7回/ねじ、ナメたことない? 正しい工具の選び方
第8回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(前編)
第9回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(後編)
第10回/変速機の調整(前編)
第11回/変速機の調整(後編)
第12回/リアディレイラーが折れても走って帰れる?

監修:サイクルアシスト オオバ 大場忠徳
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