初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて問題なく帰ってくるためのメンテナンス方法を紹介する連載企画。続けて読んでもらえれば、ライド前に必要な準備はもちろん、ライド中のトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。無事に100㎞ライドを終えたころには脱・初心者です!

前回に引き続き、変速機のメンテナンスを説明します。今回はワイヤーの張り具合の調整とリアディレイラーが曲がってしまった場合の対処方法を説明します。この2つは出先でも調節が必要な場面に出くわすかもしれない項目です。ロングライド中、対処や予防方法を知らなかったために走行不能に、なんて事態に陥らないよう、しっかりマスターしてください。

リアディレイラーは真っ直ぐ付いていますか?


リアの変速が徐々に調子が悪くなっていったのならば、ワイヤー類のなじみや劣化、あるいは潤滑が悪くなったこと、またはパーツの摩耗を疑えばよくて、どんなバイクにも起こり得る不調です。問題は急に不調になった場合です。落車、輪行後に組み立てたとき、あるいは車止めなどに接触した後――。こんなときに変速が上手くいかなくなったと感じたときは、すぐに停車しましょう。そして、バイクを真後ろから見て、リアディレイラーの2つのプーリーがスプロケットの歯と一直線上に並んでいるかをチェックしてください。

真っ直ぐなモノを当てると曲がりが分かりやすい。

▲真っ直ぐなモノを当てると曲がりが分かりやすい。


一直線上にない場合は、ディレイラーハンガーというフレームとリアディレイラーの間にある部品が曲がっています。ディレイラーハンガーは、リアディレイラーに衝撃を受けたときにフレームの破損を避けるため、曲がるように作られています。

ディレイラーハンガーには溝があり、わざと曲がるように作られている。

▲ディレイラーハンガーには溝があり、わざと曲がるように作られている。


曲がったまま走ってしまうと、最悪の場合、リアディレイラーがスポークに絡んでもげてしまい、走行不能に陥ってしまいます。「そんなことめったに起きないんでしょ?」って思う楽観的な方もいるかもしれませんが、去年グループライドで2度、遭遇しました。メンテナンスを怠っていたり、運悪くリアディレイラーに大きな衝撃を受けてしまうと、けっこうありがちなんです。

もし大きく曲がっているなら、まず、近くにスポーツ自転車のショップがないか調べて、運良く営業中のショップが見つかったら、持っていって直してもらいましょう。工賃は2000円ほどです。ショップが見つからない場合は(たいてい見つからないでしょうが)、手でリアディレイラーをつかんでじわっと力をかけて曲げ直します。

「そんなことして壊れないの?」って思うかもしれません。はい、最悪壊れますよ。ショップでは専用工具を用いて修正しますが、その作業も力をかけて曲げ直していることに変わりはありません。ですから案外大丈夫なのですが、曲げ直して折れてしまうリスクは承知の上で行ってください。

パークツールディレーラー直付ゲージでの修正作業。

▲パークツールディレーラー直付ゲージでの修正作業。


手で曲げ直すのはあくまで応急処置です。ライド後、できるだけ早くショップに持っていってちゃんと直してもらってください。ハンガーの交換になる場合もあるかと思います。ハンガーが3000円ほどで、工賃は2500円ぐらいです。ハンガーが曲がってしまう事態に備えて普段からディレイラーハンガーの予備を持っておくと安心度が高いです。大きく曲がったり折れてしまったときは、交換して対処できます。

先ほど触れた、ハンガーが曲がってしまったライド仲間のひとりは、ハンガーが折れてしまったのですが、予備を持っていたので交換し、10分ほどでライドに復帰できました。もうひとりの友人は僕が手で曲げ直し、その日のライドはなんとか走り終えました。ですが、しばらく放置していたらその後、何度目かのライドでハンガーが折れて走行不能になってしまったそうです。めったにないケースとはいえ、備えあれば憂いなしです。

ハンガーには様々な形状があり、フレームによって違います。自分のバイクのモデルと年式にあったのもをショップで取り寄せてもらいましょう。海外にはDerailleurHanger.comのような、ディレイラーハンガー専門の通販ショップもあるので、ショップに頼めない人はこういうところから購入しても良いでしょう。

交換に必要な工具は携帯ツールで良いのですが、サイズの合うアーレンキーも持っておきましょうね。もしハンガーが折れてしまい、しかも予備のハンガーを持っていない場合にどうすればいいのかは今後、「出先でのチェーントラブルの対処」の項目で説明する予定です。

ワイヤーの張り具合の調整


ワイヤー式の変速システムでは変速時、手元レバーを操作してシフター内部でワイヤーの巻き取り/解放を行います。そして、ワイヤーの終端にあるディレイラーがこの「巻き取り/解放」に連動し、チェーンをギアの歯の上に導いて変速を可能にしています。前回、ワイヤーの動きを滑らかに保つメンテナンス方法を解説しました。気持ちいい変速を可能にするシフトワイヤーの条件として、滑らかに動くことのほかに、張り具合が適正であることも欠かせません。

変速調整は信頼できるプロの手に委ねるべきメンテナンス項目だと、僕は思っています。いくらスキルアップしてやり方が分かったとしても、プロの追い込み方にはかないませんし、パーツの不具合も含めて総合的に見てくれますからね。1000~2000円ほどの工賃で最良の状態にしてもらえて、同時にハンガーの曲がりやワイヤーの劣化などもチェックしてもらえるのですから、安いものです。

もちろん、ハンガー修正やワイヤー交換の必要が生じれば、追加の工賃や、場合によってはパーツ代が発生します。でも、プロの仕事に対して対価を払うのは当然ですからね。工賃をケチらないことも、気持ち良く安全にバイクに乗るために大事なことなのかな、と思います。

走行中、変速に不具合を感じ、かつハンガーが曲がっていない場合は、ワイヤーの張り具合を調整すれば調子が良くなることもあります。リアディレイラーの場合は、ケーブル調整ボルトを回します。シフトアップ(小さなギアへの変速)がしづらいときは時計回りに回します。締め込むことで、アウターワイヤーの長さが短くなるのと同じ効果が得られ、ワイヤーのテンションが緩みます。

小さなギアへ変速しづらいときは時計回りに締め込む。

▲小さなギアへ変速しづらいときは時計回りに締め込む。


逆にシフトダウン(大きなギアへの変速)がもたつくようなら反時計回りに回します。こんどはアウターワイヤーが長くなるのと同じ効果で、ワイヤーのテンションがきつくなります。
大きなギアへ変速しづらいときは反時計回りに緩める。

▲大きなギアへ変速しづらいときは反時計回りに緩める。


ケーブル調整は、アウターの途中に取り付けるアジャスターで行うこともできます。アジャスターが取り付けられている場合は走りながら微調整が可能です。回す方向はリアディレイラーのケーブル調整ボルトと一緒です。アジャスターがあれば、走りながらフロントも調整できます。

ケーブル途中に取り付けたアジャスター。

▲ケーブル途中に取り付けたアジャスター。


ダウンチューブに取り付けるタイプもある。

▲ダウンチューブに取り付けるタイプもある。



変速機は複雑でいじるのは難しい、と思っている方もいるかもしれません。そのとおりで、良い状態を維持するにはメンテナンスが欠かせない繊細なパーツ群であり、最良のコンディションで得られる細やかなギアチェンジは、地形や風向き、出力や速度に応じた効率的な走りに直結しています。チェーンが音鳴りせず、思い通りに変速が決まる状態を保つよう、普段から気を配ってください。
今回紹介したのはライド中に使える応急処置と微調整です。本格的な調整は、もう言わなくてもおわかりでしょうが、プロの手に委ねてくださいね。

●バックナンバー【ひとりで100㎞走るためのメンテナンス講座】
第1回/空気の入れ方
第2回/簡単なチェーン掃除法
第3回/水を使わずチェーンを洗う(準備編)
第4回/水を使わずチェーンを洗う(実践編)
第5回/出先でのパンク修理に必要な7つのギア
第6回/確実にサッと行う出先でのパンク修理法
第7回/ねじ、ナメたことない? 正しい工具の選び方
第8回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(前編)
第9回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(後編)
第10回/変速機の調整(前編)

監修:サイクルアシスト オオバ 大場忠徳

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