【大ピンチ】リアディレイラーが折れても走って帰れる?~ひとりで100㎞走るためのメンテナンス講座#12

初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて、問題なく帰ってくるためのメンテナンス方法を紹介する連載企画。続けて読んでもらえれば、ライド前に必要な準備はもちろん、ライド中のトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。無事に100㎞ライドを終えたころには脱・初心者です!

チェーンを切って繋げば復帰も可能

100kmライドのルートを考えるときに、はじめは平坦なルートを選びたくなるかもしれません。でも、住んでいる地域によってはどうしても峠を組み込まなければ100kmのルートが描けなかったり、あるいはヒルクライムが好きになってあえて峠をアタックするようになったりするかもしれません。自動車がほとんど通らず、自然に包まれた場所で、バイクと対話しながら己の限界にチャレンジするのは最高ですからね。

問題は、そんな人里離れた山中で落車やメカトラブルが発生してしまった場合です。タクシーが呼べるような場所ならまだいいですが、サイクリストが提案するルートにはそうじゃない場所もたくさんあります。出先でのパンク修理は以前に紹介しました。また、ライド中の変速機の不調への対応方法も前回説明しましたね。最悪なのが、ディレイラーハンガーやフレームのハンガー取り付け部が折れてしまうトラブルでしょう。

ディレイラー取り付け部が折れた!
▲ディレイラー取り付け部が折れた!

この状態ではチェーンがギアと噛み合わず、走行不能です。予備のハンガーを持っていれば復帰できるケースもありますが、そうじゃない場合はどうするか。変速を諦め、チェーンを切って短く繋ぎ、とりあえず走れる状態にします。こんなトラブルは5年、10年に一度あるかないかだとは思います。ですが、この事態に備えて、携帯工具はチェーンカッターの機能が付いたものを持っておくと、どんなに人里から離れても安心感が得られます。

LEZYNE SV 11。11種類の機能を持つ携帯ツール。
▲LEZYNE SV 11。11種類の機能を持つ携帯ツール。

チェーンカッターは11速なのか10速なのか、自分のバイクの変速段数に対応したものを持っておきましょう。チェーンを切るのは案外簡単です。チェーンの長さは、フロントはインナー(小さなギア)でリアは真ん中辺りのギアにかかるようにします。フロントが34tの場合にリア16tを選ぶと、1分間に90回転のペダリングをしたときに時速24kmで走れます。個人差がありますから、脚力や体調に合わせてこの近辺のギアを選んでください。帰途に坂道を含む場合は、より軽いギアにしておきましょう。

出先では“ミッシングリンク”で繋ごう

長さが決まったら、工具の溝にチェーンをはめて、横から突起を当ててねじ込み、チェーンを繋いでいるリンクピンを押し出して切断します。

結構力がいるので、工具をしっかり保持して回す。
▲結構力がいるので、工具をしっかり保持して回す。

問題はつなぎ方です。先ほど工具でピンを抜いた場所に新品のアンプルピンを差し込んで繋ぐ方法とミッシングリンクというパーツを使う方法があり、出先ではより簡単な後者がオススメです。

ミッシングリンク。ピンの先に溝が切られており、反対側のプレートをスライドさせて一体化させる。
▲ミッシングリンク。ピンの先に溝が切られており、反対側のプレートをスライドさせて一体化させる。

ミッシングリンクはチェーンを接続するためのパーツで、アウタープレートとピンが一体化した2つのパーツからなります。ミッシングリンクのピンをチェーンの両端のピンを抜いた穴に差し込み、スライドさせて一体化させます。手順は以下の通りです。

チェーンの両端はインナーリンクプレートになるように切断する。
▲チェーンの両端はインナーリンクプレートになるように切断する。

チェーンの両端にミッシングリンクを取り付ける。
▲チェーンの両端にミッシングリンクを取り付ける。

チェーンの長さを決めたりミッシングリンクを取り付けるときに、チェーンフッカーというチェーンに引っかけて保持する工具があると作業が格段に楽になります。写真はコンパクトで携帯性に優れたPWT チェーンフック。

内側の大きな穴に、ミッシングリンクのピンを通して一体化させる。
▲内側の大きな穴に、ミッシングリンクのピンを通して一体化させる。

左右に引っ張る。
▲左右に引っ張る。

変速はできないが走ることはできる。
▲変速はできないが走ることはできる。

これができれば、山中でトラブルに遭っても途方に暮れることなく、なんとか走って帰ってくることができます。チェーンの長ささえ間違えなければ、作業自体はそこまで難しくはないと思います。
とはいえ、チェーンを切ったり繋いだりした経験がなければ「自分ではとてもできる気がしない」と感じている方もいるかもしれません。もし優しいベテランサイクリストが通りかかれば、あなたがチェーン切断工具とミッシングリンク(あるいはアンプルピン)さえ持っていればなんとかしてくれるかもしれません。持っていなければお手上げです。チェーンカッター機能付きの携帯工具とミッシングリンクは保険として持っておきましょうね。

その優しいベテランサイクリストが、あなたのバイクを走れる状態に戻してくれたとき、あなたは心から感謝の言葉をかけるでしょう。なにかお礼をしたいと申し出るかもしれません。そのベテランサイクリストは「いや、いいんです。いずれあなたがスキルアップしたときに、困ったサイクリストに出会ったら助けてあげてください」と言い残して、颯爽と走り出すことでしょう。チェーントラブルではないですが、僕もビギナーのときに助けられ、その後、何度かトラブルからの脱出を手伝ったことがあります。万が一の備えはもちろん、困ったときに助け合うためにも、スキルを身につけることは大切なんですよ。

●バックナンバー【ひとりで100㎞走るためのメンテナンス講座】
第1回/空気の入れ方
第2回/簡単なチェーン掃除法
第3回/水を使わずチェーンを洗う(準備編)
第4回/水を使わずチェーンを洗う(実践編)
第5回/出先でのパンク修理に必要な7つのギア
第6回/確実にサッと行う出先でのパンク修理法
第7回/ねじ、ナメたことない? 正しい工具の選び方
第8回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(前編)
第9回/ロードバイクに使えるケミカルの基礎知識(後編)
第10回/変速機の調整(前編)
第11回/変速機の調整(後編)

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WRITTEN BY池田潮

フリーライター。東京杉並区出身。普段はロードバイクでグループライドを楽しんでいます。気軽な自転車で街をぶらぶらするのも好きです。好きなドラマは「ブレイキング・バッド」と「ナイト・オブ・キリング」。最近チェアリングはじめました。 近著「クロスバイクスタートブック2018」「クロスバイク購入完全ガイド2018」(ともにコスミック出版)https://www.instagram.com/ikedaushio/

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