MARINがいま、ファミリーへ届けたいもの。”カッコつけすぎない、カッコいい自転車”
2021年で35周年を迎えるMARIN BIKES。FRAMEでも “パパチャリ” ドンキーSEを幾度か取りあげてきましたが、もともとの発祥はMTBです。本格的なMTBを作り続けるいっぽう、どこか山の香りがただようアーバンバイクに、ファンキーなキッズバイクまでラインナップ。
実はこの街乗りバイク(SEモデル)やファミリー・キッズ向けバイクは日本企画。今日に至るまでの背景とバイクへのこだわり、MARINのこれからを、代表の岡山文昭さんに聞いてきました。
目次
MTBから “ファッションバイク” へ
━━ 今ではショッピングモール内のサイクルショップなどでも目にするMARINの自転車ですが、もともとはMTBブランドですよね。
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はい、はじまりはMTBです。MARIN BIKESは2021年で35周年を迎えますが、創立当初からMTBを作ってきています。日本国内で販売しているアメリカンブランドの中でも歴史あるブランドなんです。
MTBのベースがありつつ、最近ではクロスバイクやキッズバイクのイメージが強くなってきたように思います。_
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━━ MTBから街乗りバイク・キッズバイクへのイメージ遷移は意図的だったのでしょうか。今日に至るまでの経緯をお伺いできますか。
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僕がMARINの担当についたのは2006年。もともとBMXの出身で、MTBは知識もなく説得力を持たせられなかったんです。結果、販売店においてもらえない。売れなかったですね。
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MTBは完全に畑違い。単なるイチ営業マンで、おまけに知識もない。販売店様からも最初はすごく怒られました。
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━━ 試行錯誤する中で見えてきた方向性が現在の街乗りバイク、ということでしょうか。
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そうですね。当時は大変でしたけど、逆に親切にしてもらった販売店様もいて色々と学ばせてもらいました。
なかでも『街中でよく乗ってもらえるような自転車を作ってほしい』という要望は、今思い返しても強く印象に残っていますね。
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そういった背景もあって、自分の中でMARINというブランドの方向性が見えてきた。それがクロスバイクだったんです。
ファッション・スタイル重視へ。「とにかくレーシーさを排除したかった」
ライドシーンを街中にシフトする日本モデル、SE(Special Edition)を作ってみようと。
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コンセプトは “ファッションバイク” 。よりスタイルを重視しながら、日常にとけこむバイクを目指しました。
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━━ ファッションバイク! いまのMARINラインナップを見てもうなずけるコンセプトですね。日本モデルとして、まずどこから手を加えていったのでしょうか。
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最初はシンプルにカラーバリエーションの増設ですね。その翌年からはパーツセレクトモデルを2機種手掛けました。
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━━ スタイル重視という点で、一番のこだわりはありましたか?
競技っぽさ、レーシーさを取り除きたかった。ゼロにしたかったですね。
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━━ SEモデルを展開し、ファッションバイクとしてのイメージは浸透しましたか?
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うーーん、正直ファッションバイクとして浸透したかと言われると微妙だったかもしれません(笑) 当時はユーザーさんというより、販売店様にMARINを置いてもらう理由づけのためにも、”ファッションバイク” としてわかりやすく打ち出したかったんです。
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一気に知名度アップ、そして転落
SEモデルを作ったときに大手自転車販売店様に興味を持って頂けて、置いてもらうようになりました。そこで一気に知名度がアップしましたね。
今まで買わなかった層にしっかりリーチできて、2012年から2016年までは売上も右肩あがり。作ったら売れる、そんなイメージです。
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━━ ファッションバイクとしてのブランド認知がここで広まった形なんですね。
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ただし、2016年にいちど崩れてるんです。
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━━ えっ!
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MARINとしては形勢一変の年でした。複数の販売店様で在庫過多になってしまい、次の2017年モデルの取り扱い量が2016年モデルの約半分ほどまで激減しました。
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━━ これは転換期ですね……
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発想がすべて変わりました。モノを作る、つまり『色を変える』『パーツをセレクトする』、それだけではお客様が選ばなくなってしまったんです。プロダクトに注力しすぎてたんですね、マーケティングという概念がなかった。
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当時のバイヤーさんからも「よく売れるよね、なんで売れるかわからない」なんて言われていましたよ。でも当時は売れてるからいいや、と自分では思っていたんです。
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そこからはとにかく地道に飛び込み営業です、泥臭い営業のはじまりですね。
想いを乗せたプロダクトをユーザーまで
BMX時代の知り合いまで遡り、人脈ベースでとにかく足を使いました。
ちょっとでもチャンスがあったら絶対に断らなかった。2016年までほとんどしていなかった試乗会もそのひとつです。
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それまでは販売店様へ向けた頭だったんですね。ユーザー様まで行き届いていなかった。
今はユーザー様まで見据えています。販売店様にも『こうやって売ってください』と、スタイルを含めたパッケージングでご提案しています。
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━━ 想いを乗せてバイクを送り出している感じですね。
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もうね、理由をすべて説明したいんです、今は。
なんでこのモデルを作ったの、なんでこの色にしたの、なんでこのデザインにしたの、それを伝えたい。想いがつまっているから。
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昔と比べて格段に情報を手に入れやすくなったこの時代では、ユーザー様もまず「どんなブランドなんだ?」ってチェックしにくる。コンセプトを知りにくるんです。
初期のプロダクトありきの販売スタイルから比べてずいぶん変わりましたね。今はコンセプトありき。その下にプロダクトがついてきます。
いまのお客さまを見ていても、ブランドを好きになってから始めてもらっている感じがしています。
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ウソが通用しない時代ですから、正直に “よいもの” をアピールしていきたいですね。自分できちんと説明できるようにしておきたいんです。
家族へ届けたい “カッコつけすぎない、カッコいいバイクたち”
━━ キッズに向けたバイク展開は2016年からですよね。ちょうど大手販売店の取り扱いがなくなった転換期と重なりますが、ファミリー層へのアプローチは戦略ですか?
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いや、たまたまです。純粋に自分の子どもが乗るキッズバイクをつくりたいと思ったんです。
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━━ 本国モデルにもキッズバイクはあったんですよね、それではダメだったんでしょうか?
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むこうのキッズバイクはベースがMTBなんですよ、山を走破することを前提としている。
僕はあくまでデイリーユースとして子どもたちに乗ってもらいたかったですから。
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本国モデルでは前かがみな姿勢だったんです。力のない子どもが前重心になると疲れてしまい、長い時間乗っていられない。お尻でしっかり座って、ブレーキをしっかりかけられるように、ジオメトリをイチから作りなおしています。
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BMXスタイルのツーピースハンドルは、補助の役割も持ちます。ハンドルとサドルで親が支える体勢がとれるんです。
子ども車ではBMXのようにハードには乗りませんから、強度としてのツーピースというよりは、親の補助目的のほうが大きいですね。
パパにも、そしてママにも。
━━ 家族向けの自転車といえば、MARINにはパパチャリ「ドンキーSE」がありますよね。
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はい、今年で2年目になりますね。”実際のパパはこんな自転車に乗りたい” という目線で企画しました。
MARINの自転車は『1台2役』という裏設定があるのですが、このドンキーSEも平日は通勤に、週末はツーリング・山遊びと、マルチに使えるモデルです。
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今年は新しくママに乗ってほしいモデルを出しています。最大の特徴はまたぎやすいフレームですね。ハンドルバーもグッと内側にベンドさせて、前傾になりすぎずラクに乗れます。
ママチャリと一般的なクロスバイクの中間となるポジションですね。
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━━ これからのMARINが描くビジョンはどのようなものでしょうか?
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やっぱり家族です。
ファッションバイクの部分は本国でいいもの出してきてくれていて、僕が思い描いてきた方向性と合致してきた気がします。現に2021年の受注も本国モデルが各段に増えたんですよ。少し前まではSE8割(本国2割)だったところ、今年は6:4で本国モデルでしたから。
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2022年~2023年には、ママ向けe-bikeを発売する予定で現在企画をしています。このタイミングで、ドンキーもe-bikeに変更しようと思案中です。
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━━ MARINがつくる街乗りe-bike、とっても興味深い! さらに今年は日本生まれのキッズバイクがアメリカへ逆輸入されるんですよね。
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21年モデルで登場しますよ、Donky Jr.としてアメリカで商標もとりましたから。
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まとめ
今回はじめてお会いした代表の岡山さんですが、ウソのない正直さが印象に残る方でした。2人の男の子のパパでもある岡山さんが送り出す家族みんなの自転車は、ユーザー目線で考え尽くされた「正直さ」を感じさせるバイク揃いです。
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ファミリー向けバイクとして基盤を築いてきたパパチャリとキッズバイクに加え、今年はママにも提案できるモデルが登場し、近い将来にはe-bikeもお目見え予定。これからがますます楽しみなMARIN BIKES。 “家族でおそろいにできる” ブランドとして、みなさんのバイク選びの候補にあげてみてはいかがでしょうか。
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Photos © MARIN BIKES(一部FRAME編集部にて撮影)
LINK: MARIN BIKES