ストライダー カスタムの豊富な経験を持つ筆者が、カスタムの効果やおすすめパーツを紹介する連載企画。第五弾となる今回は、オフセッター・ヘッドパーツ等のカスタムがテーマです。
ヘッド回りのパーツは「ハンドリングに、大きな影響を与える部品」です。
オフセッターやヘッドパーツは、よほどの自転車好きじゃないと聞いたことがない言葉だと思います。今回は少し専門的な内容になりますが、カスタムでコーナーを軽快に曲がりやすくするためのポイントなどをご紹介したいと思いますので、ぜひ参考にしてください。
目次
オフセッター、ヘッドパーツのカスタムの位置づけ
ストライダーは「軽くシンプルに作られていることが、一番の特徴」です。ストライダーの創業者「ライアン・マクファーランド」さんが、我が子のために市販の自転車を改造して作ったのが、ストライダーの始まりだそうです。
ペダルやブレーキといった「子供にとって余分なものを全て外した」だけでなく、フレームの余計な部分は切って再度溶接し、足つき性を良くし低重心にしたうえで「徹底的に軽くして、小さな子供でも扱えるようにした」とのこと。素晴らしいアイデアと行動力ですよね。
軽くシンプルになったことで、幼い子でも乗れるようになりましたが、この時まさかレースで使うことになるとは、考えてもみなかったと思います。ストライダーに唯一不足している点を挙げるとしたら「レースで使うには、それを補うカスタムが必要」なことでしょう。
オフセッターやヘッドパーツは、レースでタイトな(小回り)コーナーリングが要求される場面で装着すると、もっとも効果が高くなります。公園等で乗るだけなら、これらのカスタムは考えなくてもいいと思います。
セルフステアとは?
自転車やバイクは、どのようにすれば曲がるのでしょうか?
傾けると、なぜ曲がるのか?
2輪車は、車体を傾かせることによって前輪のタイヤが内側に切れ込み、傾いた方向に曲がることができます。車体を傾けるだけで曲がるのではなく「傾いた方向にハンドルが切れ込んでいくことで、曲がっていく仕組み」なんです。
子供の頃に自転車で、手放し運転をしませんでしたか?車体を傾けることで、自転車の進む方向を変えることができたと思います。これを「セルフステア」と呼んでいて、車体を起こすとハンドルは真っ直ぐになり、直進してくれます。
「セルフステアは、車体が自然にハンドルを動かしてくれること」を意味します。コーナリングは、ハンドルを握る腕の力を抜くことが重要です。これは、ハンドルの自然な動きを妨げないために必要なことなので、覚えておいてください。
ステム・ハンドル・グリップ編でお話した「ステップ荷重」は、曲がる時にハンドルから腕の力を抜く技術です。これにより「コーナーを気持ちよく、曲がっていく」ことができます。
▼ステム・ハンドル・グリップ編はこちら
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余談ですが、幼児の頃からバランス感覚のみでストライダーを走らせる体験は「運動神経を鍛え、子どもの成長期において非常に効果的なトレーニングになる」ことでしょう。幼児期からストライダーに乗ることは、どんな子にもオススメしたいものです。
オフセッターの効果とは?
ストライダーは、ランバイク(ランニングバイク、バランスバイク)と呼ばれることもあります。このRUNBIKEの意味は「蹴って走らせる二輪車」と言ったところでしょうか?
「Bi」は、英語で「2」という意味ですが、2輪車にとって「この2つの車輪と車体との位置関係が、走行性能に大きな影響」を与えています。自転車(Bicycle)でも、自動二輪車(MotorBike)でも基本的なことは同じなので、これらを一緒に考えてみましょう。
旋回性能(曲がりやすさ)の鍵を握る指標に「トレール値」というものがあります。トレール値とは、フロントフォークの延長線と路面が交わる点と、タイヤの接地点の中心までの長さです。タイヤの接地点はタイヤの回転中心から垂線を引いて求めます。下図を参照してください。
トレール値は、フロントフォークのキャスター角にもっとも影響を受けますが、フロントフォークのオフセットにも密接な関係があります。オフセットがあると接地点が前方に移動するからです。図を見ると「オフセットがあると、トレール値が小さくなる」ことがわかります。(トレール値①)
逆にオフセットがない場合は、トレール値が大きくなります。(トレール値②)むずかしいですよね。とりあえず「オフセットがないと、トレール値が大きくなる」と理解しておいてください。
トレール値が大きいと「ハンドルの動きが重くなる性質があるので、俊敏にコーナーを曲がることがむずかしく」なります。バイクだとハーレーダビッドソンのようなアメリカンタイプが、トレール値が大きい代表的なものでしょう。このバイクは「ハンドルの動きは重たいが、直線は走りやすい」というのが特徴です。曲がりやすさと、直進安定性は相反するものなんです。
ストライダーには、オフセットがありません。マウンテンバイクも、トレール値が大きいようです。つまり、この手のバイクは「コーナーを小さく曲がることよりも、直進安定性を重視している」と言えます。
一方で、トレール値を小さくすることで「ハンドルの動きが軽快になり、旋回性能が向上」します。オフセッターを装着する目的は、俊敏なハンドリングにすることなんです。
コーナーを小さく曲がれると「大回りして内側から抜かれない」もしくは「曲がっている時間が短くなるので、すぐに蹴り出すこと」ができます。コーナーをスパっと曲がる姿は、ほんとカッコイイですよね。まさに、レーシングなコーナリングと言えるでしょう。
デメリットは、直進安定性が若干悪くなるので、直線でハンドル修正や体重移動が必要になることでしょう。しかしこれらは、慣れの部分(無意識)なのかな?って思います。ちなみに、ママチャリにもしっかりオフセットがついているので「オフセットがあるのは、特別なことではない」のです。
ヘッドパーツの効果とは?
ヘッドパーツを装着する2つのメリット
ヘッドパーツを装着することにより、次の2つのメリットが得られます。
- なめらかなコーナーリングができる
- ヘッドチューブのガタつきがなくなる
1.なめらかなコーナリング
ヘッドパーツは聴き慣れない言葉ですが、ママチャリにも付いている一般的な部品なんです。ヘッドパーツは、先ほど説明した「セルフステアを助ける」ものです。
ヘッドパーツの中には、ベアリングが入っていて「ハンドルの動きをよりスムーズにしてくれる」役割を持っています。ヘッドパーツを付けることで「気持ちよく、なめらかなコーナリングができる」ようになります。
ちなみにストライダーには、ヘッドパーツが付いていません。理由は「コストが上がってしまうことや、車体が重たくなってしまうこと」ではないかと思います。ヘッドパーツがなくても曲がることはできますが、ハンドルの自然な動きを妨げないためにも、ヘッドパーツの装着をおすすめします。
デメリットは「蹴って走っている時に、ハンドルがブレてしまうこと」でしょう。ストライダーを速く走らせるには(走る動作と同じように)上半身(腰)をひねる必要があるので「速く走ろうとすればするほど、上半身をひねる=ハンドルがグラグラ」してしまいます。純正のヘッドブッシュには大きな抵抗が生じているので、ハンドルの動きが重たくなり、結果としてグラグラを抑えています。グラグラは、練習を重ねることで収まってきますので、気になるのは「最初のうちだけ」でしょう。
2.ヘッドチューブのガタつき
ヘッドパーツを装着しないと、ヘッドチューブ(ハンドル)にガタつきが発生してきます。その仕組みを、簡単に説明します。
純正のヘッドブッシュは樹脂製なので、すぐにへたって(すり減って)しまいます。そして、いつの間にかフロントフォークまでもが摩耗し、ハンドルにガタが出てきてしまいます。これを巷では、「ストライダー ハンドルガタつき問題」と呼んでいます。
対策として「カスタムブッシュを入れて、フロントフォークの摩耗を抑える」ようにします。しかし、ヘッドチューブのガタは完全には抑えきれず「使用頻度により、フロントフォークの交換が必要」になります。この問題は、スピードが出るほど顕著に影響が大きくなるので、定期的にフロントフォークの点検をするようにしてください。
ガタがあるフロントフォークで走り続けることは、転倒を誘発し、危険を伴います!フロントフォークは、消耗品として割り切って使うことをおすすめします。しかしながらヘッドパーツを付けることで、このガタ付きの発生が抑えられるので、これも「大きなメリット」になるでしょう。
おすすめのオフセッター
【ZERO BIKE FACTORY】
OFFSET MAKER P32 オフセットメーカー
価格:税込6,600円(1台分)
<特徴>
レースでの使用を大前提として設計している「安全安心なZERO BIKE FACTORY」さんのオフセッターです。オフセッターは、剛性が必要とされる部品なので、材質にジュラルミンを選んで、高剛性なものにしています。そして、オフセットの向きが水平アングルなので、装着したときと外したときのハンドルポジション(ハンドル高さ)が変わりません。これは、大きなメリット!レースで一番よく見かける、大人気のオフセッターです。
他にも、自転車屋さんビッちゃんやモリワキエンジニアリングさんからも、オフセッターが発売されています。
おすすめのヘッドパーツ
SLiC StarRider スターライダー ヘッドセット
価格:税込11,440円
<特徴>
ノーマルフォーク用パーツを選ぶことで、ストライダー PROのフォークに装着できます。
※スチールフレームのSPORTやCLASSICモデルには、装着できません。
この商品は、フレームのヘッドチューブをフェイシング(取付面の面削加工)し、専用の工具が必要なため、ご自身での取付はできません。ノーマルフォーク用パーツとのセット価格(9000+取付工賃1400+税)となります。
上部にある部品が、ベアリングの蓋とクランプを兼ねているので、SLiCさんのコラムアダプターのように外からクランプで締め付けるタイプを使う必要があります。DaddyLabさんやトミーさんのようなショートアダプターや、DaddyLabさんのようなフォークコラム内側から広げて固定するタイプのステムアダプターも使えないので注意しましょう。
おすすめのカスタムブッシュ
サイクルパーク トミー TOMY×OILES 強化ブッシュ
価格:税込2,750円(1台分)
<特徴>
サイクルパークトミーさんとオイレス工業さんがタッグを組み、ストライダーのために作成した樹脂製の無給油ブッシュ。ハンドルの回転をスムーズに保ち、フロントフォークの摩耗を最小限に抑えます。オイレス工業さんは国内シェアの5割を占めるオイルレスベアリングのトップメーカーです。
カスタムブッシュとヘッドチューブにスキマがある場合には、フレームの個体差が原因なので、アルミテープ等でスキマを調整し、取り付けるようにしてください。
注意するポイントは?
レースのレギュレーションに注意
レースによってはオフセッタ―の装着が、禁止されている場合があります。参加する大会の車両規定を、よく確認してください。オフセッターをつけた方が、コーナーで有利なってしまうからなんでしょう。
純正のヘッドブッシュをお使いの場合
純正部品のままお乗りになる際は、フロントフォークを外して、ブッシュに接する部分にグリスを塗るようにしてください。抵抗が軽減され、ハンドルの動きが良くなります。
フロントフォークのクラックに注意
フロントフォークのひび割れは、ガンガン乗っていると避けようがない問題です。なぜならフロントフォークには穴が開いており、そこに応力が集中することで亀裂が発生するから。この穴をリベットやボルトで塞ぐことで、寿命を伸ばすことができます。
おすすめのクラック防止ボルト
サイクルパーク トミー クラック防止ボルト
価格:税込550円(1個)
<特徴>
フロントフォークに開いている穴に、ボルトを差し込んで締めるだけです。クラックの抑止はもちろん、入ってしまったときの応急処置にも使えます。
ただし、このボルトを取り付けていても長期間使っていると、クラックが入ることはあります。
ホームセンターで売っているボルトでも、穴の大きさが合えば問題はありません。しかし可能ならば、リベットを打つことをおすすめします。
まとめ
ストライダーは「幼児が乗る乗り物なので、そこまでカスタムしなくてもいいかな?」って思いがちです。しかし、いざ自分が実際に乗ってみると、おそらく恐怖を感じるはずです。ハンドルの動きはスムーズじゃないし、コーナーでは曲がってくれません。
オフセッターやヘッドパーツがあることでかなりハンドリングが改善されるので、ぜひ検討してみて下さい。レースに出場する方は、決して無駄な投資にならないと思います。「子供たちには、ストライダーを気持ちよく乗ってもらいたい」ですから。
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