秋から冬へと差しかかる季節。福島県の磐梯・猪苗代エリアから2つのサイクリングコースを紹介します。カジュアルに街中散走と湖沿ライドが楽しめる「イナファン」、透明度の高い澄んだ湖と雄大な磐梯山を同時に望める「イナイチ」を、サイクルツーリズムアドバイザーの宮内忍さんに走っていただきました。
目次
磐梯・猪苗代ナショナルパークサイクルウェイとは
磐梯・猪苗代(ばんだい・いなわしろ)ナショナルパークサイクルウェイは、磐梯山とその周辺の湖や街を巡るサイクリングルートの総称です。磐梯山に抱かれながら、雄大な自然に地元の歴史や文化、グルメまでたっぷりと味わうことができます。難易度と主旨の異なるコースが5つ用意され、ライダーのレベルやその日の気分で選択が可能。
天鏡湖を巡る! イナイチ&イナファン実走レポ
5つのコースのうち、今回紹介するコースは「イナイチ」「イナファン」の2つ。どちらも福島県が誇る猪苗代湖をメインとしたコースです。
コースデータ
イナファン
猪苗代湖のほとりにある、猪苗代町の街中を巡ることができる初心者向けポタリングコースです。猪苗代湖サイクリングルートで湖の豊かな自然を、野口英世記念館や土津神社でこの地域の歴史・文化を感じることができます。
距離 | 15.5km |
獲得標高* | 96m |
イナイチ
天を映す湖として「天鏡湖」とも呼ばれる猪苗代(いなわしろ)湖。福島県のシンボルともされる広大な湖を一周する、全周約65kmのコースです。猪苗代湖と磐梯山が同時に映る大迫力の景観が楽しめます。
距離 | 65.3km |
獲得標高* | 418m |
*)獲得標高:登った坂の合計。累計標高。
◇ コースアドバイザーが実走レポ!◇
今回「イナファン」「イナイチ」を走っていただいたのは、サイクルツーリズムアドバイザーの宮内 忍さん。磐梯・猪苗代ナショナルパークサイクルウェイのルート設定にも携わっています。
宮内 忍
サイクルツーリズムアドバイザー/コンサルタント
元スポーツサイクル誌・自転車レース誌・自転車ムック編集長。静岡県・茨城県・北海道ほかの自転車活用推進および自転車観光振興関連会議の委員を歴任。
【イナファン】磐梯山南麓の散走
10月下旬に「イナファン」「イナイチ」をサイクリングしてきました。
1日目は猪苗代町を巡る「イナファン」。ゲートウェイはJR磐越西線(ばんえつさいせん)の猪苗代駅です。東京駅から東北新幹線郡山駅経由で2時間強ほどなので日帰りも可能。標高500mの高原地帯なので空気が澄んでいます。
まずは道の駅猪苗代(マップ)へ。食堂・売店・観光案内所・トイレがそろっています。
磐越西線の陸橋を越え国道49号(以下、R49)へ出て東に600mほど行き、猪苗代湖へ向かう細い道へ。ここがコース南東端です。
レンタサイクルで手ぶらサイクリングも
駅前左手にある猪苗代観光協会でレンタサイクル「イナチャリ」が営業中。期間は4月~11月中旬まで、料金は普通自転車500円、電動アシスト自転車1,000円。荷物を駅のコインロッカーに預ければ手ぶらサイクリングが可能です。
営業時間:9:00~18:00(年中無休)
※休日・営業時間は変更の場合あり
※レストラン・フードコートは営業時間が異なります
住所:〒969-3132 福島県耶麻郡猪苗代町大字堅田字五百苅1番地
電話番号:0242-36-7676
白鳥浜から西へ3.6㎞が農道兼用区間と“サイクリングロード”。
左に湖面、右にそば畑越しの磐梯山を眺めながら走ります。ポケットパーク、休憩所のサイクルセンターを過ぎると終点。湖沿いをのんびり走れる前半のハイライト区間です。
サイクリングロードの西端は会津民俗館、野口英世記念館、ドライブインが並ぶエリア。コースの南西端です。茅葺屋根の野口英世生家を見学し、2階でしゃべる野口博士ロボットとご対面。修学旅行の小学生がやってきて一気に賑やかになりました。
営業時間:4~10月 9:00~17:30/11~3月 9:00~16:30
年中無休 ※12/29~1/3を除く
住所:〒969-3284 福島県耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字前田81
電話番号:0242-65-2319
R49の野口英世記念館前信号から北へ。
農業用水沿いを進むとそば店と農産物直売所のいわはし館(マップ)、その先に道祖神。
ルートよりも西にある den*en cafe(田園カフェ)で昼食。磐梯山のパノラマを眺めながらピザランチをいただきました。猪苗代町は “蕎麦(そば)の里”。昼食には手打ちそばもおすすめ。
営業時間:
平日 11:30~18:00/土日祝 11:00~18:00
L.O. 17:00(ランチ L.O. 13:30)※冬季は~17:00まで(L.O. 16:00)
月・火曜日定休 ※祝祭日は営業
住所:〒969-3284 福島県耶麻郡猪苗代町三ツ和家北500-3
電話番号:0242-93-8860
稲田の海を一直線に磐梯山へ向かう道に出ます。
稲刈り済みの田に無数の白い点。なんと飛来した白鳥たちが羽を休めていました。ここが後半のハイライト区間。
やがて磐梯山南麓の急な坂を登ると、コースの北端。会津藩祖の保科正之公の墓がある土津(はにつ)神社、紅葉の名所です。
下って猪苗代町の市街地へ。猪苗代駅へ戻る途上にある亀ヶ城公園(マップ)に立ち寄ります。城跡の石垣や土塁が残っていました。
イナファンの距離は15.5㎞、立ち寄り箇所の観光込みで半日強の行程です。土津神社への登り坂以外は平坦な舗装路で、R49を除けば交通量も少なく、のんびりと走れます。初心者向きの自転車 “散走” コースです。
磐梯山の清涼な伏流水が湧く猪苗代町には酒蔵があります。土産は地酒とそば製品がおすすめ。また猪苗代町は温泉の名所でもあります。できれば一泊してサイクリングの疲れを癒やしたいですね。
【イナイチ】猪苗代湖一周の絶景コース
散走ルート「イナファン」を走った翌日、猪苗代湖を一周する65kmのコース「イナイチ」をサイクリングしました。
猪苗代湖は火山活動によるせき止め湖と言われています。面積は103.3平方km、全国第4位の大きさ。水面の標高514mの高地にあり、冷涼な気候です。北側は猪苗代町、西側は会津若松市、南と東側は郡山市湖南町に属します。
ゲートウェイはJR磐越西線の猪苗代駅。ここがルートの北端。
湖一周サイクリングの定石どおり、道路の湖岸側を通れる反時計回りで進みます。最初の区間は駅前から湖岸を通る国道49号(以下、R49)交差点までの田園地帯です。イナファンとは逆に駅前を西へ向かいます。
秋晴れ、サイクリング日和になる予感。青空に磐梯山の頂2つがくっきりと見えます。湖に向かう道へ曲がります。振り返ると、田んぼの果てに磐梯山の “映える” パノラマ。磐梯山から湖までわずか7.5kmです。
野口英世記念館の西側でR49に突き当たる丁字路を右折します。
次の区間は、このR49交差点から国道294号 “白河街道” が分岐する強清水(こわしみず)交差点まで。
猪苗代湖北西岸沿いの道で、左手に青い水面を眺められます。交通量が多く大型車も通り路肩が狭い区間があるので、走行に要注意。
マリーナや遊覧船乗り場、翁島など、リゾート地の趣があります。R49北側にある十六橋水門へ至る寄り道コース(マップ)がおすすめ。この水門は安積疏水(あさかそすい)に湖水を流すために作られ、湖の水位を調節しています。
住所:福島県耶麻郡猪苗代町翁沢大字船場 会津若松市湊町赤井戸ノ口
R49に戻って猪苗代町から会津若松市へ入り、会津レクリエーション公園(マップ)で休憩。トイレと飲料自販機あり。ここから南岸に至るまで、湖とはしばしのお別れです。
会津の名水、強清水湧水に立ち寄り。茶屋街で名物の手打ちそばと揚げまんじゅうを味わいたいですね。その先の信号を南に曲がって白河街道へ。ここがルートの西端になります。
住所:〒969-3451 福島県会津若松市河東町八田下ノ家
次の区間は、白河街道を南下して湖の南岸まで。谷筋を広い2車線路が続きます。道幅が広く見通しが良い快走向きの道。
両側が低い丘に囲まれた稲田と赤茶色のそば畑、そして白いススキの原が続きます。道中のコンビニエンスストアで補給食を購入します。ルート上のコンビニはここと、ルート最後の方にある1軒の計2軒です。
黒森トンネル(マップ)までは登り。標高は659mのルート最高点。トンネルは全長978m、中が暗いので、前後灯は必須。ここから郡山市湖南町になります。下って福良から県道283号で湖南岸の青松浜へ。
次の区間は、水際に松並木が続く青松浜から南岸の県道376号。
青松浜から東へ進むと「全面通行止」の看板。舟津までの山道区間が12月24日まで工事中で通行止め。南側の県道の236号と234号を通る「まわり道のご案内」看板がありました。
看板といえば商業看板がなく、景観がスッキリしているのに気づきました。環境省と福島県が設置した「ここは磐梯朝日国立公園の特別地域」の看板を発見。広告物の掲出・設置が規制されているのです。コンビニエンスストア等の看板類はモノトーンでした。
東岸の県道9号を経てR49沿いの志田浜までは、ほぼ湖沿いのハイライト区間。湖面の彼方に磐梯山が眺められます。
東岸の浜路浜にはサイクリストに超人気の “小さなパン屋さんKomugi(以下、コムギ)” があります。郡山市のサイクルステーションにもなっていて、自転車工具とフロアポンプを備えています。午前中にはパンが売り切れることが多いのでお早めに。営業は木〜日曜日。1〜2月は休みです。
店の前庭は絶景ポイント。青空とたなびく白い雲、磐梯山がくっきりと湖面に写っています。 波のない湖面が天の鏡となる“天鏡湖”の出現です。この光景は東岸の更に先までしばらく続きました。朝に感じたサイクリング日和になる予感的中!
志田浜からはR49を越えて湖を離れ、磐梯山方向へ向かいます。桜並木が続く観音寺川を越えて終点の猪苗代駅を目指します。
磐梯山は巨大なランドマーク。見える頂の数で位置が分かります。3つの頂の高さが違うため、西からは頂1つ、南からは2つ、東からは3つ見えるのです。
イナイチは距離65.3㎞・獲得標高415m・最大標高差約140m。中級向きのコース。大きな峠はないのでサイクリング初心者でも1日行程で完走可能です。
磐梯山南麓の散走 ”イナファン” と、猪苗代湖一周の絶景コース ”イナイチ”
イナファンとイナイチは共にゲートウェイがJR猪苗代駅です。イナファンは時計回りで磐梯山南麓の観光地をのんびり巡る初心者向きの散走ルート。イナイチは反時計回りで猪苗代湖を一周する、景色がいいロードバイク向きの初・中級者ルート。両ルートは一部が重複しているので組み合わせが可能です。
白鳥が待つ初冬の猪苗代湖を堪能してみてはいかがでしょうか。
文・写真:サイクルツーリズムアドバイザー・宮内 忍
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