肩が凝ったら胸を揉め!? 整骨院の先生に聞く、サイクリストのセルフメンテナンス法【後編】
世田谷区経堂に院を構える「はなまる整骨院」。今回の記事では、その院長を務める中野浩樹先生にサイクリストの体のセルフメンテナンスについてお聞きしています。
前編ではヒザやアキレス腱の痛みを取る方法をお聞きしましたが、後編では、サイクリストに多い背中や腰、肩のコリのセルフメンテナンスの方法をお聞きします。肩のコリを治すストレッチ方法は、デスクワークの方にもおすすめの内容ですよ!
前編はこちら。
・ヒザが痛んだらお尻を叩け!? 整骨院の先生に聞く、サイクリストのセルフメンテナンス法【前編】
腰、背中、肩のセルフメンテナンスの方法
ーー 前編ではヒザやアキレス腱のセルフメンテナンスの方法をお聞きしました。後編ではサイクリストが悩みを抱えることの多い腰や背中のメンテナンス方法をお聞きしたいと思います。
中野浩樹先生(以下、中野) 「まずは腰。主に関係している体のパーツは骨盤と太もも裏のハムストリングス、お尻の大臀筋(だいでんきん)、あとはお腹の方にある腹直筋(ふくちょくきん)と呼ばれる筋肉も関係しています。
自転車がらみの腰痛の原因は先ほど説明した腰回りにある筋肉の疲労が主に関係しているんですが、人によって骨盤が前に傾斜しているのか、後ろに傾斜しているのかで対処方法が違います。
なので、セルフメンテナンスが難しいんです。同様に背筋も体の後ろにあるので、ほぐしてくれる相手がいないと対処が難しいんです。」
ーー セルフメンテナンスが難しい箇所もあるんですね。
中野 「もちろんストレッチもできるんですが、前編でも説明したように体は様々なパーツが組み合わさってできているので、痛みの原因は痛む箇所だけにあるわけじゃないんです。
セルフでできることもたくさんあるんですが、プロしかできない体のメンテナンスもたくさんあるんですよ。たとえば怪我の予防とか。筋肉の緊張をほぐしてあげると、関節も柔らかくなって、怪我の予防もしやすいんです。
症状の中には、痛みが無く、自分が気付いていないものもあります。そうした箇所の治療も、プロなら原因を突き止められることがあるんですよ。」
ーー 痛みがない箇所にも原因がある場合があるんですね、それが分かるってすごい。そういえば僕長距離を走っていた時に肩のコリがひどかったんです。対処する方法はあるんでしょうか?
中野 「肩ならありますよ。肩の痛みは肩甲骨の動きが悪くなっていることで起こりすい症状です。自転車の場合、その多くが、肩が内側に巻き込まれることが原因になっています。
肩が内側に巻き込まれると胸筋が縮まりコリの原因になります。胸筋の緊張をとると肩甲骨が外側に戻るので、鎖骨の下の胸筋を押してマッサージしてあげます。あとは、前腕、上腕の内側にある筋肉の緊張をほぐすことも必要です。
前腕、上腕の内側のストレッチの方法なんですが、腕を後ろに地面と平行に伸ばし、壁に手のひらの内側を当てて伸ばすんです。」
試しにストレッチを試してみると、肩甲骨と背骨の筋肉が痛い! でも、すごく効いてる感じがします。
中野 「けっこうコリが溜まってたみたいですね。コリや痛みって、筋肉の血流が悪くなってる状態だから、マッサージや鍼、お灸で血流を良くするんです。
患者さんによって反応も様々ですし、体の筋肉を押してみて、患者さんの反応を見ながらどんな治療法にしていくか決めていきます。痛みの原因になる箇所も様々です。
コリや痛みは毎日の生活習慣や姿勢もからんでくるので、何回も通う必要がある人もいるし、その日のうちに良くなってしまう人もいて、患者さんによって千差万別の施術が求められます。」
ーー 痛む箇所を重点的にストレッチすればいいわけではないんですね。患者さんによって施術の方法も違うという話もなんとなく分かる気がします。
中野 「そうなんです。肩のメンテナンスでお伝えした時は胸筋をマッサージすることを伝えましたよね、そんな風に、一見関係ないように思える箇所も痛みに関係しているので、セルフメンテナンスで取れない痛みはプロに相談するのが良いと思いますよ。
それじゃあ、最後に自転車競技をする人に役立つ小技を教えましょうか。」
スポーツに適した体をつくる技
中野 「競技前に意図的に興奮した状態をつくりたい時や、リラックスした状態をつくりたい時がありますよね?これを司っているのが交感神経と副交感神経という自律神経です。
交感神経が優位に働くと体が興奮状態になります。副交感神経が優位に働くと、逆に体を休めるリラックス状態になります。」
ーー それって自分でコントロールできるんでしょうか?意図的に切り替えられれば、すごく役立ちそうですが。
中野 「呼吸でできるという説がありますね。あと按摩マッサージ指圧の考え方で、皮膚や筋肉にスピーディで強い刺激を与えると交感神経が優位になると言われてます。
例えば、体を叩くことですね。スポーツ中継を見ていると、試合前に選手が気合いを入れるために自分の頬をはたいたりしますよね。頬でなくても良いんですが、腕でも太ももでも、体のどの部分でもいいので、スピーディで強い刺激を与えると、ある程度の興奮状態になると言われてます。」
ーー 逆に副交感神経を優位にしたい場合はどうすればよいでしょうか?
中野 「副交感神経はやわらかくてゆっくりとした刺激を体に与えてあげれば働くと言われてます。例えば手のひらでゆっくり撫でてあげるとか。
これも体のどの部分でもいいので、やわらかくてゆっくりとした刺激を与えると、リラックスしやすい状態を作ることができます。」
スポーツ前には体を叩いて、興奮した状態をつくる。体を休ませたい時は体を撫でてリラックスした状態をつくる。これはスポーツだけじゃなく、仕事の時にも応用できそうな方法です。
最後に中野先生がこの業界に入った、ある理由を紹介したいと思います。
中野 「僕、この業界に入った理由が『モテたい』という不純な理由だったんですね。前職の時は女の子との接点が全くなくて。親父に整骨や鍼灸の仕事をしてみないか?と持ちかけられたのもあるんですが、この仕事なら女の子との接点ができるかなって(笑)
結果的に若い女の子にモテることはなかったんですが、お婆ちゃんやおばちゃん、患者様に必要とされモテるようになりました。この仕事をやり始めた理由は不純だったんですが、今は患者さんから『痛いところがとても楽になった!』て言って頂くことに喜びを感じています。
スタッフ全員国家資格保持者で、スキルの高い施術をしますので、体の不調を感じたら、当院にいらしてくださいね。」
最後にお茶目な一面も見えましたが、中野先生は施術に入ると真剣そのもの。取材の終わりに簡単なボディケアをしてくれましたが、とても気持ちよかったですよ!
自転車のエンジンは乗る人の体です。愛車のメンテナンスと共に、ご自身の体も大事にされてくださいね。
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WRITTEN BYスズキ ガク
1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI」