尾道の石坂をダウンヒル! 「RED BULL HOLY RIDE 2016」レポート
出場者インタビュー
マウンテンバイクのライダーにとって、「ホーリーライド」に出場するということはどういうことなのか?
そこで出場選手の1人、自転車メーカー「スペシャライズド」の MTB テストライダー、藤田翔也さんに大会前日の貴重なお時間を頂いてインタビューしてきました。
藤田翔也 (ふじたしょうや)さん
MTB ダウンヒルライダー(ジャパンシリーズ エリートクラス)、スペシャライズド テストライダー。平日は静岡の自転車ショップで会社員として働きながら、休日はライダーとして活躍中。
———今回何回目の出場ですか?
今回の尾道大会で3回目の出場になります。レッドブルホーリーライドは人気のレースなので、エントリーサイトがオープンになっても受付開始五分で枠が埋まってしまうほど。油断していると出場できないんです。実は1回目京都大会は申し込みそこねて出場できなかったんです。
いわゆるダウンヒル競技と違って、出場150人中のトップを決めるのがこのレース。タイムトライアルではなくてトーナメント戦で、そこがホーリーライドの面白さだと思います。第2回愛媛の石鎚神社の大会から、第3回の大阪勝尾寺大会にも出場して、前回の京都石清水八幡宮の大会ではベスト16に入りました。
———あらためて、ライダーにとってホーリーライドの魅力は何ですか?
通常ダウンヒルのレースは、決められた山や森のなかをかけめぐるダートのコース。ジャンプのセクションがあったり、景色が美しかったり、自然の中を走る爽快感が魅力だけど、ホーリーライドは普段絶対に走れない場所、非日常のロケーションを走る刺激があります。
予選、決勝とレースが進みますが、タイムを競うレースではないので、上位選手は予選では無理をしません。僕の場合は予選では20位くらいに照準を合わせるようにしています。そこはホーリーライド独特の走り方かもしれません。
今回のコースは狭い路地が多くて、地面は石やコンクリートで危険度が高い。天気が悪い
と地面が濡れてさらに危険です。わざわざ危険を求めることはしないけど、その危険が魅力でもあります。普段練習しているスキルやテクニックがホーリーライドのコースでどれだけ通用するか、それを試せる特別な場所です。
———ホーリーライドに向けて特別な練習はしていますか?
特別な練習はしていません。ほとんどぶっつけ本番です。大会前日にコースウォークの時間がとられていたり、予選前に試走の時間があったりしますが、実際に走るまで本当にわからない。他のライダーさんも同じなのではないでしょうか。ただ、落差や段差や速度の感覚は普段のダウンヒルの経験が活きてきます。
そもそも練習できるようなコースではないし、当日試走してみるまでわからない、本当にぶっつけ本番のレースです。ただ、機材(自転車)のセッティングは石段などに適したホーリーライド用にしています。
第3回大阪のレースの時は雨だったのですが、予選で気合いを入れすぎてしまって、滑って転倒して…、コンマ数秒で予選に落ちてしまったんですね。だから予選はそんなに飛ばさないようにしています。前回の京都では、ほどほどに走ってちゃんと予選を通過できたので。予選でがんばっても、ポイントもないし賞金もないのでほどほどに。
———ホーリーライドで勝つためには?
基本的にやっていることはダウンヒルなので、ダウンヒル競技の上位選手がだいたい決勝に残って、番狂わせはあまりないレースかもしれません。危険度の把握など、普段の経験が活きるので。そしてスキルがないと、気持ちや度胸だけではなかなか勝ち残れないレースです。
今回のコース後半では石畳の部分があって、晴れの日でも地面が滑ってひやっとします。そしてハンドルが壁に当たりそうなほど凄く狭い場所があったり、90度のクランクがあったり、人が並べないほど狭い道が多いので勝負が決まる部分がだいたい限られてきます。急な斜面が多いので、いかにブレーキを握らないかが重要になってきます。
決勝では4人で走るので、1人でやるレースとはブレーキングの仕方もラインの取り方も変わってくる。隣の人と接触すればすぐに転倒につながるし、狭いコースを抜いたり抜かれたり、観客はハラハラしてしまう。そこがこのレースの面白さだと思います。
今回の尾道のコースはみんなが初めて走るコースで攻略法がない状態。本当にゼロスタートなので、だれが勝つかわからない。そうなるとテクニックのあるダウンヒル競技の上位にある人が勝つ可能性が高くなると思います。
———レッドブルのレースはエクストリームなレースが多いですが、やっぱり怖さはありますか?
斜度や落差に関しては、海外のコースでもっと凄い場所で走っている経験があるのでそれほど恐怖心はないのですが、やはり怖いのは石やコンクリートですね。通常のダウンヒルコースは地面が土なので、もし転んでもダメージが少ないのですが、第3回の大阪レースで転倒した時は、おもいきり固い地面に肘を打って、しばらく痺れがとれませんでした。
今回の尾道大会では今までのコースと比べても危険度が高いので気が抜けません。こんなところを自転車で走れるのか? というコースになっています。僕も危険を求めてこのレースに参加しているわけではないので、細心の注意を払っています。
むしろ、スポンサーが付いているような上位選手のほうが、安全には気を配っていますね。もしケガをすると他のレースに出られなくなってしまうので。今回も危険度の高さから、参加を見送ったライダーたちもいます。敢えて危険なレースに出ようという人は少ないと思いますね。走る楽しさもあるけど、楽しんでる暇のないコースです。
ただ、僕らのようなダウンヒルライダーだけではなく、勝負の結果に関係なくホーリーライドに参加すること自体を楽しみにしているライダーたちもたくさんいます。中には、そんな格好で走るのか? と思うほどユニークな服を着ている人もいます、前回はスーツ姿の人がいました。
他にも、ファットバイクで走ったり、サスペンションの付いていない自転車で走ったり、他のダウンヒルレースでは絶対に見られないようなライダーたちを見ることができます。そういう人たちをチェックするのも観戦の楽しみかもしれませんね。
Red Bull Holy Ride:公式サイト
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WRITTEN BYKiyota Naohiro
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