ブルベ200km「イザベラ・ヘブン」ロードバイクで津軽半島海岸沿い・竜飛岬巡りの旅

一週間で4本のブルべでSR、合計1500kmの自転車旅を続けるヘブンウィーク3本目。

●前回までのあらすじ
2017年ゴールデンウイークに開催された「イザベラ・ヘブン」という200・300・400・600kmの4本を1週間で走るブルベの2本目を無事走り終えたHitomiさん。1週間でSR(シュペール・ランドヌール)の称号をとれる親切設計。毎日走れて幸せだから“ヘブン・ウィーク”ですが、別名“ヘル・ウィーク”とも呼ばれるというあたり、諸々をお察しください・・・

イザベラ・ヘブン1本目はこちら>>
イザベラ・ヘブン2本目はこちら>>

300kmを完走し、400kmは観光DNFしたとはいえ9割以上は走ったので、2本合わせて約700kmを走ったことになります。そして400kmフィニッシュの翌5月3日、朝7時に200kmブルベのスタートです。今日のルートは、不老不死温泉から津軽半島を海沿いに行き、竜飛岬を通って、青森駅まで行く200kmです。

ヘブン中、苦しいこともきついことも当然あるのですけれど、やめずに走っていればなんとかなるし、走り終われば思い出フィルターがかかって辛い記憶はぼかしがかかるみたいです。

当然、身体中筋肉痛。実は当初は、この200を走らず休養日にすることも考えていたのですけれど、結局走ることにしました。まだ走ったことの無いルート、好いお天気、走るのが当然の顔をした仲間たち。そうだよね。走らなくちゃもったいないよね。それに、たった200kmだもの。

だいぶ距離感覚が壊れてきています。

鯉のぼりが追い風を泳ぐ中、不老不死温泉をスタートしました。

青空に鯉のぼり。これはきっと追い風。

Start 不老不死温泉~PC1鯵ヶ沢(49km地点)

スタートしてすぐ、後ろを走っていた人に「お嬢さん、空気抜けてますよ」と言われます

「ええ?!お嬢さん?わたし???あら。。。(ぽっ)」
「そっちじゃなく!空気抜けてるって」

ありゃま。ほんとに。リアのタイヤがぺしゃんこ!走り出して早々、神奈川隊はストップして、T中さんがわたしのタイヤに空気を入れてくれます。こんなにしていただくなんて、ほんとうにお嬢様みたい。すっかりお任せモードになるわたし。

おととい、バルブが壊れて空気が全部抜けたのですが、どうやらその後ビートがうまくあがっていないようです。チューブレスタイヤはこういうとき厄介です。それでも乗り心地の良さで、チューブレスを知ってしまったらもうクリンチャーに戻れない…。

しっかり空気を入れてもらって再出発。ありがとうございます!海が綺麗で気持ちいい。写真を撮ったりしながら今日も楽しく進みます。

軽快に坂を上って行くリカンベント。鯉のぼりもついています

途中、快速S木さんが道ばたに止まっています。
「どうしました?」と尋ねると「大丈夫です。大丈夫じゃないけど大丈夫です」と。
後から聞いたら、宿の部屋の鍵を返すのを忘れて持ってきてしまったとのこと。たしかにそれは大丈夫だけど大丈夫じゃない案件。S木さん、意外とお茶目さんですね。鍵はPC1に居たスタッフに頼んで宿に返却してもらったそうです。

アップダウンの続く中、坂の途中でリカンベントのGenさんに追いつきました。リカで上りって相当きついはず。でも余裕の表情。ランドヌールの中には、こういう何かがオカシイ人も多少はいます。ブルベを走らない人たちから見たらまとめてみんなオカシナ人種かもしれませんが、中ではそれなりにヒエラルキーらしきものがあります、オカシサの。普通のロードバイクでブルベを走るのでは物足りなくなっている人たちは、やっぱりイカレテいるというかイカシテいるというか。

海と空を眺めながら気持ちよく走る

PC1鯵ヶ沢~通過チェック 竜飛岬 (122.6km地点)

昨日の400kmでも通った鰺ヶ沢にあるPC1に到着しました。今日のランチは、十三湖にあるしじみラーメンにしましょう、と話していると、近畿チームのまきよさんにそのお店の場所を質問されました。

この近畿チーム、とにかく速い。300でも400でも何度も何度も抜かれました。なぜ何度も抜かれるかというと、たくさんの場所を寄り道・観光しながら走っているから。寄り道して超速で走り、また寄り道して、ほとんど寄り道しない人たちと同じくらいの時間にゴールするという、速さを生かした充実観光ヘブンを堪能しているのです。かっこいい…素敵です。キューシートには、予習した立ち寄り先がしっかり記載されています。準備の段階からとっても楽しんでいるのだろうなあ。ブルベの楽しみ方はほんとうに人それぞれです。

PC1のすぐ近くには「わさお」で有名なきくや商店があるけれど、神奈川隊は寄らずに再スタート。一目散に十三湖のしじみラーメンに走ります。お目当ての店は「和歌山」。十三湖のすぐほとりにありました。

日本海に面した十三湖は汽水湖。

十三湖は津軽半島にある汽水湖で、冬は天然記念物指定の白鳥が飛来します。特産物が海と川に育てられたしじみで、それをたっぷり使ったラーメンが人気なのだとか。和歌山は民宿にもなっているようで、お店は混んでいましたが10数分ほど待って座ることができました。念願のしじみラーメン、やっぱりスープが美味しい。疲れた内臓をしじみが癒してくれることでしょう。そう、ブルベで疲れるのは筋肉よりも内臓だったりします。

しじみラーメン。美味しい!

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 満足して走り始めると、名物「ババヘラ」もちらほらと。おばあちゃんがへらですくってくれるアイスクリームだからババヘラなのだとか。「じゃあさっきのあれはおじいちゃんだったからジジヘラ?」なんてことをしゃべりながら進むと、道沿いに七つ滝がありました。左は海。右に滝。贅沢な光景です。

七つあるから七つ滝だそうです。雄大。

そしてしだいに見えてきた、あの遠くに見える山の上の道が竜飛岬への登りですね……。あれを上るのか……。峠は普段は遠望できることは少ないので、こうして目に見えると、高すぎて遠すぎて絶望的な気分になります。無理でしょう、とても上れない!と思うのだけど、いわゆる「べた踏み坂」と同じで見た目ほどはきつくないかもしれないという一縷の望みを抱いて走ります。

でもね、やっぱりきつかったです、竜泊ライン。いきなり12%。そしてこれが延々続きました。7~8%になると楽に感じるくらい。海が遠くなる。ピークが近づく気配は無い。うねうねと曲がるヘアピンカーブを何度も何度も曲がって、曲がる度にまだ先があることにがっかりする、その繰り返しです。

竜泊ラインを上る。標識には11%と書いてありました。

そしてただでさえきつい登りに、さらに敵が現れました。小さなコバエのような虫がたくさん寄ってくるのです。蚊柱のように虫にたかられて、ちょっと大きめのもいるし、刺したり噛んだりする虫だったらどうしようと、必死に手で払うのだけどまったく離れてくれません。

「やだー!」「もー!」とわめきながら登る羽目に。必死に上ると、前方にいる神奈川隊のT橋さんとI熊さんが「わあ、虫が来たー」と笑いながらスピードをあげていってしまいます。後から聞いたら「ひとみさんが黒い虫にいっぱいたかられて登ってくるから逃げた」と。ひどい。

怒ったりべそかいたりしながら登るわたしの姿は、みなさんの笑いを誘ったようで、写真やら動画に収められて後日SNSにアップされてしまうのでした(恥)。

喉が痛くなるほど叫び続けて、坂がきついのさえ忘れて、約7km、やっとやっとピークの眺瞰台にたどりつきました。ようやく虫から解放されて力が抜けます。きつかった…ほんときつかったです。無駄なエネルギーをたくさん使ってしまいました。

遠く美しい景色

眺瞰台は絶景でした。来た道を見下ろせばここを上ってきたんだ…と感慨深いものがあります。

眺瞰台から見た上ってきた道

眺瞰台で記念写真。かなりくたびれています
眺瞰台で記念写真。かなりくたびれています

通C 竜飛岬~Finish 青森駅(200.7km地点)

 眺瞰台を下って、竜飛岬、そして写真ポイントの階段国道へ。もうここから先はきつい登りはありません。

竜飛岬。「津軽海峡冬景色」の歌の碑もありました。

階段国道の写真を撮って、あとは70kmちょっと、のんびり青森駅へ向かいましょう。……というはずでしたが、そうすんなりはいかず。

これが不思議な階段国道。国道339号。見るだけにするべきでした

まず階段国道で「せっかくだからこの階段を下りて行こうよ」と誰が言い出したのか、自転車を担いで階段を下りることになってしまいました。国道なのに道路が階段になるという怪談な道。まあしょうがないか、と自転車を持ってクリートのシューズで気を付けて下り始めたのですが、え……すごく長くありません?なかなか、なかなか、下に着かないんです。

なんちゃってシクロクロス気分を味わえばよかっただけなのに、なんと362段も階段があるんですって。うっそーん!?長すぎます。

しかもわたしの運動神経の無さと度胸の無さといったら情けない限りで、わたしを先頭に大渋滞発生。うう。面目ない。「腰がひけてる!」と後方からぜっとさんの声が。ほんとその通りです。「でもSPD-SLじゃあしょうがないよね」とどなたかが優しいフォローをしてくださるのが聞こえました。わたしのシューズはただのSPDですが。

階段国道を下りる。たしかに腰がひけてます。Photo by のっぽさん

おそらく想定の2倍近い時間をかけてようやく下りきりました。ブルベ中にやることじゃありません。ブルベ中じゃなくても、二度とこんなことしないと心に誓います。

虫と階段にヒットポイントを奪われつつ、ゴールを目指して海沿いの道を走ります。そこまでは海の向こう、遠くに北海道が見えていました。そうそう、最初は岩木山も後方に見えていましたよ。よく晴れた素晴らしいお天気の日で、地元の方が「こんなに遠くまでよく見えるのは珍しい」というような意味のことをおっしゃってました(たぶん。津軽弁は難しいのです)。北海道と言われたほうに見えた、遠く綺麗な形の山はなんだったのかな。海と山と、絶景を楽しみながら走る幸せ。もう登りもないし。

どうもフロントのシフトの具合が悪いらしく、インからアウターにうまく上がらないので、アップダウンはもう嫌になっていました。もちろんそうじゃなくても坂は嫌いです。リアのタイヤの空気もあやしいし。

途中コンビニで最後の休憩をし、さてゴールへ、と思ったら、神奈川隊のT中さんとT橋さんが先にお店を出て行ってしまいました。ええ!? ここまで来て置いて行かれるなんて。がーん。

慌てて追いかけるけど、なかなか追いつきません。ぜっとさん&のっぽさんのAJたまがわコンビも一緒に走ってくださいました。この日一番の踏み倒し。でも追いつかない。もうこれ以上脚を使ってもしょうがないので追いつくのは諦めることにしました。初日から一緒に走ってきて、T&Tさんお二人は明日の600は走らない予定だと伺っていたので、最後は一緒にゴールしたかったです。

途中でシャーッと軽やかに走ってきたリュウさんが前をひいてくださいます。
「え?神奈川は女子を置いていくんだ。置いて行かれたわけね。へえ」と同情だか笑いだか。
遠くに山並みが見えたので「あれは北海道ですっけ」と尋ねたら「あれは八甲田でしょう!」と。
え?あれ?そうか、竜飛岬をまわったので、もう南下しているのですね。

日が暮れて少し暗くなりかけた頃に青森駅前にゴール。T&Tさんに置いて行かれた文句を言ったら「あれ?まだ行かないから先に行ってって言わなかったっけ?」と。言ってない言ってない!

それからリュウさんやきむけんさん、K隊長と居酒屋さんでお疲れ様会。リュウさんも明日の600は走らないそうです。600の前夜に呑んだのは初めて。でも楽しかった。ビールも美味しかった。今日の絶景の話などして、明日に備えて軽く切り上げます。

この200km、走るかどうか迷ったけど、やっぱり走ってよかったな。竜飛岬の上りはたいへんだったけれど、お天気に恵まれて景色もよくて、素晴らしい絶景ライドでした。そして不思議なことに、走れば走るほど脚が回るようになってきています。疲れているはずなのに。たぶん、負荷をあまりかけずに、6~7割の力で走るからなんとかなっているのかも。

まあ走って後悔したことは今まで一度もないのです。DNSやDNFはたいてい、どんな理由のときだって、ちょっと後悔は残るものですが。

 これで3本、900km走破しました。さあ、残るは600km。明日の朝6時に旅の最終章スタートです。

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WRITTEN BYHitomi

2014年にブルベを走り始め、その年は4回600kmリタイアでSRならず。翌2015年600km初完走、同年600kmを6回完走、トリプルSRとなる。AJ神奈川スタッフ。RaphaCyclingClubメンバー。愛車はDE ROSA。

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