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東大生大島くんの最終結論「ツール・ド・おきなわ本番で力を発揮するために必要なことはこれだけです!」

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自転車歴たった3ヵ月の東大生・大島くん。国内市民レースの最高峰「ツール・ド・おきなわ」100km部門に出場するために日々トレーニングに励んでいます。

2016年の100km(U39)完走率は73.2%! チーム所属のライダーでも脱落する過酷なレースに向け、初心者東大生は頭脳でどうアプローチしているのでしょうか?

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こんにちは。東京大学農学部4年の大島拓司です。いよいよツール・ド・おきなわが目前に迫ってきました。

もうここまで来たら、頑張ってトレーニングしてもそんなに変わりません。「自分の力をいかに成長させるか」よりも「自分の力をいかに本番で発揮できるか」が大事になってきます。

そこで今回はロードレースなどのサイクルイベント本番で力を発揮するために必要なことについてまとめました。すね毛も剃りました

ツルツルのすねはローディーの証?

基本中の基本、脱水症状の対策計画を正確無比に作る

脱水症状対策の必要性

まず、脱水症状対策は必須ですよね。サイクルイベントは基本的に屋外で行われますし、暑い季節に行われるものが多いので、他のスポーツに比べて特に注意が必要です。

特に、沖縄は11月でも東京の9月くらい暑いうえにレースは日中なので、県外から参加の方は注意しましょう。普通にセミが鳴いてます。

気象庁の気象データより筆者作成

脱水症状に陥ると、パフォーマンスが低下するだけでなく、めまい、吐き気、頭痛、脚をつるなどの症状が出ます。めまいや吐き気に襲われている中、集中力を要する集団走行をするなんて危険すぎますし、時速60kmでのダウンヒルなんかした日には、最悪死にます

私今まで長距離走った後に頭痛くなったりふらついたりすることがあったのですが、今考えると軽い脱水症状ですね。(笑)

何を飲むべきかの最終結論

じゃあ水を飲めばいいのかというと、話はそこまで単純ではありません。結論から言うと、塩分と糖質が適度に含まれている飲み物を飲む必要があります

ただ水を飲めばいいというものではない

まず、塩分に関してですが、汗にはナトリウムなどの電解質が含まれています。なので、水だけを摂取していると血液中のナトリウム濃度が低下し、低ナトリウム血症という状態に陥り筋肉の痙攣などが発生しやすくなります

逆に、塩分を摂取しすぎると脳が「体内に水分が不足している!」と錯覚して汗をかきにくくしてしまい、結果熱中症に陥りやすくなります

なので、水とともに適度な塩分を摂取しなければなりません。

また、糖質に関してですが、Kamijoら(2012)は、軽い脱水状態の健康成人男性に糖質含有量の異なる3つの電解質含有飲料を飲ませ、血漿(血液中の液体成分)の量を測定したところ、糖質を含む飲料の方が含まない飲料より血漿量の回復が速かったという結果を得ています。

Kamijoら(2012)より一部改変 ©American Physiological Society

というわけで、運動中は塩分と糖質を適度に含むものを摂取すると良いのです。

「適度に」と少しぼかしているのは、個人差やその人の状態によって適した含有量が変わってくるためです。基準としては、塩分は0.1~0.3%、糖質は4~8%が良いという説が一般的なようですね。

プロでも、スポーツドリンク(糖質多め、塩分少なめ)を飲んでいる人もいれば経口補水液(糖質少なめ、塩分多め)を飲んでいる人もおり、厳密に何%と言い切ることはできません。自分でいろいろ試してみて、ベストな配合率を探ってみてください

私は今回、無難にスポーツドリンク(ポカリスエット)で挑みます。経口補水液はまずいので。

重くならないようにちょうどいいボトルの量を体重から割り出す

では、量はどのくらい飲めばいいのか。結論から言うと、脱水率が2%を超えないように水分を補給する必要があります。

脱水率というのは以下の数式で算出されるものです。

(走行前体重—走行後体重)÷走行前の体重×100=脱水率(%)

例えば、運動前の体重が65㎏で運動後の体重が63㎏だったとしましょう。(こうした体重減少はほぼ汗による水分量の減少です。)

このとき脱水率は(65—63)÷65×100=3.07(%)となり、2%を超えているので脱水状態に陥っている、と言えるわけです。

適切な水分補給量に関しても、個人差もある上に運動強度や気温などの影響も受けるため一概には言えません。普段の練習から運動前体重と運動後体重を図って自分にとっての適切な水分補給量を見極めたいですね。(もう遅い)

一応目安としては、持久系競技だと20~30分に200mlくらいが良いと言われているようですね。

ボトルが二個持てるようにゲージを2つにしました。

補給食の量と質の最終結論

補給食の必要性

もちろん補給食の準備も必要です。連載第三回でも書きましたが、自転車に乗るのはとてもカロリーを消費します。今回、私が出場するのは市民レース100km(アンダー39)の部なのですが、ゴールまでに必要な消費カロリーをざっくり計算すると3000kcalくらい。

自転車で走ることは思った以上にカロリーを使う

エネルギー源となるのは主に糖と脂肪ですが、その利用割合は下図のように運動強度によって変わります。高強度の運動(例:100m走)だとほぼ糖が使われ、低強度の運動(例:散歩)だと糖と脂肪の利用割合が半々くらいになります

山本順一郎編『運動生理学』より抜粋
筆者注)VO2max(%)は運動強度を表します。

ロードレースは運動強度が度々変わるので糖と脂肪の利用割合は一概には言えないですが、今回は糖:脂肪=8:2くらいと置いておきましょう。とすると、糖で賄われるのは約2400kcal分ですね。

糖は肝臓と筋肉に蓄えられていますが、その総量は約2000kcal。これだけでは足りません。走りながら補給食を食べる必要があります

補給に必要な適正量にはバッファを持たせる

では、どれくらい補給すればいいのでしょうか?

先ほどの消費カロリーやエネルギー利用割合に関する試算はあくまで目安にすぎません。なので、余裕をもって補給したいですね。

私は今回、飲み物と併せて1000kcal分くらいを走りながら摂取することにします。

何を補給とするか、試行錯誤の上の最終結論

では、何でカロリーを補給するのが良いでしょうか。

オススメの補給食はこちらの記事にまとまっていますが、大事なのは固形タイプより液体タイプの方が吸収が速いという事でしょう。

また、前回の記事で300km走ったときに、走りながら羊羹を食べて死ぬほど気持ち悪くなったトラウマがあるので、固形タイプは避けたい。

そこで、今回は練習で一回使ってイイカンジだった「グリコ パワープロダクション ワンセコンドCCD ジェルドリンク」を持っていこうと思います。本当はいろいろ試したかったのですが、時間とお金がなかったのでやむなし。

あらかじめ持っていくボトル2本に加えて給水所で2本スポーツドリンクのボトルをもらえば300kcalは摂取できそうなので、ジェルドリンクを4本とジェル1個持っていけば合計1000kcalですね。

今回持っていく補給食たち

パフォーマンスを向上させる物質の効果を論文で検証する

補給食を選んでいると、「クエン酸やBCAAが疲労回復に効きます!」と書かれているものが多いですが、その是非に関しては議論が分かれているようですね。

例えば、三宅ら(2001)は「クエン酸摂取が運動後の血中乳酸濃度の減少に効果的である」ことを明らかにしました。当時は乳酸が疲労の原因であると考えられていたため、乳酸濃度の低下=疲労回復という言説が広まります。

しかし、最近では乳酸が疲労の原因という説は否定され、クエン酸が疲労回復に効果的という言説も真偽は定かでなくなっているようです

クエン酸神話は崩れたようです

BCAAに関しても、有酸素運動のパフォーマンスを向上させることを明らかにしているものは発見できませんでした。

しかし、カフェインに関してはパフォーマンス改善への効果が科学的に立証されています。

カフェインは有効だと科学的に立証されている

Kovacs EM(1998)は訓練されたトライアスリートおよびサイクリスト数名にタイムトライアルテストをさせたところ、運動前および運動中にカフェインを摂取した時の方が記録が伸びることを明らかにしました。血中乳酸濃度の測定ではなく実際のタイムの測定なので、信憑性は高いですね。

そんなわけで私は今回、運動前にコーヒーを飲んで運動中にジェルタイプの補給食を1つ摂ることにしました。

ロードバイクのメンテナンスもして準備は万全

忘れてはならないのが、ロードバイクのメンテナンスですよね。

こちらの記事などを参考に、ロードバイクの最終点検をしましょう。

特にチェーンの洗浄・注油は、ペダルが劇的に軽くなるので欠かせませんね。

これが…
こうなる。

すね毛でエアロダイナミクス効果をアップするのはマストという最終結論

すね毛を剃りましょう。

ふざけてないですよ。大マジです

こちらの記事によると、Specializedの所有する世界で唯一の自転車用風洞装置で行われた実験で、すね毛を剃ることで約7%の空気抵抗が削減できることが判明したそうです。

これは40キロのタイムトライアルを1時間で走る人が、すね毛を剃るだけでタイムを79秒も縮められることを示します。ツール・ド・おきなわ100kmなら2~3分は縮められそう

なので、剃りました。

ツルツルでキモチイイ

これで完璧!本番頑張るぞ!

参考文献

  • 気象庁「過去の気象データ検索」(2017/11/8アクセス)
  • 日本体育協会「失われる水と塩分を取り戻そう」(2017/11/8アクセス)
  • 三宅義明(2001)「ヒトにおけるレモン果汁およびクエン酸摂取が運動後の血中乳酸濃度に及ぼす影響」『日本栄養・食糧学会誌』第54巻第1号,29-33
  • 山本順一郎編(2014)『運動生理学』化学同人
  • Kamijo Yほか(2012)「Enhanced renal Na+ reabsorption by carbohydrate in beverages during restitution from thermal and exercise-induced dehydration in men.」『American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative and Comparative Physiology』Vol. 303 (8), R824-R833
  • Alex Hutchinson「The curious case of the cyclist’s unshaven legs」(2017/11/8アクセス)
  • Kovacs EM(1998)「Effect of caffeinated drinks on substrate metabolism, caffeine excretion, and performance.」『Journal of Applied Physiology』Vol. 85(2),709-715
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