こんにちは、シクロクロッサーの向山です。シクロクロスで使う機材の中で、選ぶのが難しいものに「タイヤ」があります。実はシクロクロスでは、「ブランドの数が少ないのに、タイヤを選ぶのはフレームを選ぶより難しい」と言われています。それはなぜなのか、シクロクロスのタイヤについて、意外と知られていない情報を交えながらお話ししたいと思います。

シクロクロスタイヤでは圧倒的にチューブラータイヤが優勢




ロードバイクの世界では、練習用タイヤはクリンチャータイヤが主流ですよね。僕が出場してきたレースでも年々チューブラータイヤの使用率が減って、その分クリンチャータイヤの使用率が上がっているように感じています。チューブラータイヤは性能が高いけど、メンテナンスが面倒だし、値段も高いですからね。


▲シクロクロスではチューブラータイヤが一番高いパフォーマンスを発揮する。それを踏まえてタイヤはもちろん、ホイールも選びたい。

しかし、シクロクロスに関しては、ヨーロッパのプロや日本のトップ選手はもちろん、アマチュアでも上位クラスの選手はチューブラータイヤを使用していて、クリンチャータイヤを使っている人はほとんどいません。なぜかというと、クリンチャータイヤは段差の多いオフロードではリム打ちパンクをしやすいからです。

クリンチャータイヤでリム打ちパンクを避けるためには、皆さんもご存じの通り空気圧を上げる必要がありますが、それはオフロードを走る際の「タイヤの空気圧を下げる」という原則とは真逆になり、段差でタイヤが跳ねてしまい走りにくいのです。

ちなみに、近年ロードの世界で増えているチューブレスタイヤはクリンチャータイヤより高いパフォーマンスを誇り、シクロクロスの世界でも徐々に増えています。それでも、シクロクロスに一番向いているのは現時点ではチューブラータイヤと言えるでしょう。

これからシクロクロス用のホイールを購入する方は、以下説明する各タイヤの特性を考慮して商品選定を行っていただければと思います。

シクロクロスタイヤはコンディションによって使い分ける



▲同じメーカーの3種類のタイヤ。シクロクロスではタイヤはモータースポーツのF1のように路面のコンディションに合わせて使い分ける

ロードであれば、高性能なレース用タイヤなら、だいたいどんな条件でも良い走りができますが、シクロクロスの場合、どんなに優れたタイヤでも、コンディションにマッチしていなければ性能を発揮しません。

このあたりは、タイヤ選択が勝負を左右するモータースポーツF1の考え方に似ているかもしれません。
F1の場合、ドライであればノーマルタイヤ、雨が降ったりやんだりなら、インターミディエイト、ハードレインならウェットタイヤを装着しますが、シクロクロスも同じように状況に応じて最適なタイヤを準備します。

私が使っているVittoria(ヴィットリア)のシクロクロスタイヤ、TERRENO(テラノ)シリーズを例にとって説明しましょう。

汎用性の高いMIX(ミックス)



▲汎用性の高いタイプのタイヤ。グリップ力があり、走りも軽い。

あらゆる路面状況に対応するノブ(ゴムのスパイク部分)をあしらい、多少の雨でも対応します。ドライコンディションでも滑りやすい芝などではこのタイヤが一番速いです。
もし、タイヤを1セットしか準備出来ない状況であれば、まずはこのタイヤの装着をおすすめします。

晴天や砂ならDRY(ドライ)



▲低いノブを使ったタイヤ。乾いたスムーズな路面で速い。また、砂のコースでも砂の抜けが良くて走りやすい。

その名の通り、ドライコンディションに適したタイヤ。中央部分はヤスリのようなダイヤ目になっており、サイドにはコーナーでグリップを高めるノブがあしらわれています。また、このタイプのタイヤは、お台場で開催される「シクロクロス東京」のような砂のレースにも適しています。

雨や泥ならWET(ウェット)



▲泥用のタイヤ。よく地面に刺さるノブを使用し、ノブとノブの間隔を開けて、泥が詰まらないようにしている

雨のマッドコンディションに適したタイヤです。ノブが大きいので、走行抵抗が大きい反面、泥のような地面が柔らかい状況では路面をしっかり捉えて高いグリップを発揮します。また、泥はけを良くするために、ノブとノブの感覚を広く取っています。

ここまでが基本的なタイヤの特徴と使い分け。
しかし、実際のレースでは「このパートはこっちのタイヤが速いけど、あのパートはあのタイヤの方が速い」と言う具合に複雑な要素が絡み合い、タイヤの選択は意外と難しいのです。

タイヤの選択がレースでどう影響するかの例



▲いろいろな路面を走る、シクロクロスレースのようす(C)Rapha

例えば、数年前の雨の中行われたシクロクロス東京の話。
砂区間と、ドロドロになったシングルトラックと言う相反するセクションをどう攻略するかがポイントになったレースでした。

レース中盤、私が砂セクションを走っていると、砂の速さに定評があるベルギーの選手が後ろから迫ってきて、私はあっさり周回遅れになりました。

しかし、このベルギーの選手は砂用タイヤを装着し、私は泥に適したウェットタイヤを装着していたため、泥セクションに入った途端、あっさり抜かれたベルギーの選手に私が追いついたことがありました。かなりの強豪選手なのですが、タイヤが合わない泥セクションでは本当に苦戦しており、私のような格下に追い付かれたと言うのは、シクロクロスのタイヤ選択の難しさを物語っています。
(ちなみに、このベルギー選手は次の砂セクションで飛ぶように走っていき、その後会うことはありませんでした)

シクロクロスタイヤの空気圧について


先ほど、クリンチャータイヤの話でも触れましたが、空気圧の設定はとても重要です。どんなに良いタイヤも空気圧が間違っていれば宝も持ち腐れになってしまいます。


▲低圧用のゲージ。これがあるとかなり便利です

空気圧が低ければパンクのリスクが上がるうえに、コーナーの立ち上がりなどでタイヤがよれて踏ん張りが利かなくなります。逆に空気圧が高過ぎたらタイヤが跳ねて思うように進めなくなります。

ただ、適正な空気圧は乗りて好みもあります。時間をかけて自分の遣いやすい空気圧を見付けていかないといけません。

また路面コンディションによっても適正な空気圧は変わってきます。
マッドコンディションなら、少し高めにして、柔らかい泥に硬いタイヤを刺すようにして走ります。砂の場合は、タイヤが埋もれないようにギリギリまで空気圧を落として、タイヤを潰して走ります。
また、路面がガタガタであれば少し空気を抜いてショック吸収性を高めますが、ガタガタしている中に石や木の根っこが隠れていると、パンクしやすいので、空気圧の下げ過ぎも禁物。
色々な要素が絡み合って難しいので、空気圧の見極めは経験が必要ですね。

また、シビアな空気圧の調整には、低圧専用のゲージを活用しましょう。良い手応えのあった空気圧を覚えておけば、低圧ゲージを用いて再現することも可能です。

おすすめのシクロクロスタイヤブランド


ここまでシクロクロスタイヤの種類などについてご説明してきましたが、これらを踏まえておすすめのシクロクロスタイヤのブランド(メーカー)をご紹介したいと思います。

Vittoria(ヴィットリア)



(画像出典:ヴィットリアジャパン
▲今季モデルチェンジを果たしたヴィットリア。自分も使いましたが、恐らく量産系メーカーでは最強のタイヤ

ロード用タイヤでも有名なイタリアのヴィットリアのTerreno(テレノ)シリーズ。私自身もSNEL CYCLOCROSS TEAMで数年前から使用しています。以前は硬いゴムで出来たノブを刺して使うことでグリップを稼ぐタイヤでしたが、今シーズンフルモデルチェンジを果たし、すごくしなやかになり、面圧でグリップを稼げるタイヤになりました。
Vittoriaのシクロクロスタイヤは恐らく量産メーカーの中では世界最高のタイヤです。

ヴィットリア テレノ DRY1(チューブラー)
・ケーシング:コアスパン320TPI
・コンパウンド:G+Isotech 3C
・サイズ:31-28″、33-28″
・重量:460g(33-28”)
・希望小売価格:11,000円(税別)

ビットリア テレーノ ドライ 31-28″ チューブラーをAmazonで見る

Challenge(チャレンジ)



(画像出典:Challenge)
▲国内での流通量が多く入手しやすいチャレンジ。名作のグリフォなどラインナップも豊富。

名作「グリフォ」を手掛けるイタリアのChallenge。クセのないフィーリングが人気で、国内での流通量も多く手に入りやすいことも魅力。

チャレンジ シクロクロス グリフォ33(クリンチャー)
Amazon参考価格 6,709円


TUFO(テュフォー)



(画像出典:トライスポーツ
▲耐パンク性が高いテュフォー。ノブを地面に刺してグリップを稼ぐ硬めのタイヤで特性を活かして使うと使いやすい

チェコのTUFO(テュフォー)はとてもタフなタイヤ。独自の構造でチューブを廃し、高い耐パンク性を誇ります。しなやかさに欠ける反面、タイヤの硬さを活かして、地面に刺すような走り方を得意としているので、初心者やロード系のサイクリストには扱いやすいタイヤです。

シクロクロス テュフォー
34mm 700c 340g
カラー:RDxBK
max.4.5bar(65psi)
TPI:210 Sidewall area,315 Under the tread
9,000円
テューフォーをAmazonで見る

国内代理店:トライスポーツ

DUGAST(ドゥギャス/デュガス)



(画像出典:DUGAST
▲世界チャンピオンも使うドゥギャス。僕も1シーズン使用しましたが、素晴らしいタイヤです

本場ヨーロッパのプロ選手たちがサポート外でも自分で購入して使うと言う超高級タイヤ。
ハンドメイドでしなやかに作られている反面、量産されていないので、日本国内での入手が困難なお宝タイヤ。自分も1シーズン使ったことがありますが、素晴らしいタイヤでした。

ファーストバード オリ
Sim Works 参考価格21,000円

まとめると、「タイヤがシクロクロスの勝負の分かれ目」


いかがでしたでしょうか。シクロクロスは自転車競技の中でもかなりタイヤの性能がものを言う競技です。ぜひ自分にぴったりのタイヤを見つけて下さい。