初めまして、篠と申します。
山が好きで山ばかり登っています。
SNSでは「山は性癖です。」と冗談で言い続けていたら、いつしかそれで覚えてもらえるようになりました。
年間累積標高35万mを超える年もあったので、いろんな人にドン引きされましたが、近頃ヒルクライムレースに本気で取り組むようになってからは、山の新たな楽しみ方にも目覚めました。登れば登るほど、飽きるどころかヒルクライム沼は深まるばかりです。
そんな私ですが、実はロードバイクを始めた当初は坂は大の苦手でした。
ロードバイクに出逢えた奇跡
はじめに自己紹介しますと、私は生まれも育ちも中国です。日本で暮らしはじめて今年で13年目になります。
中学生のころ、日本のアニメにどハマりして、日本という国に興味を持ちました。一人で日本の高校に進学しようと決めたのはそのすぐあとのことでした。大学4年生の時に『弱虫ペダル』という漫画に影響され、ロードバイクを始めて今に至っています。それからは山を登るために仕事や住む場所まで変えてきました。
13歳の時に思い切って日本に留学しなければ、今頃自転車には乗っていないのだろうと思うと、違う国でここまで夢中になれる趣味に出会えたことに、もはや運命を感じました。
何事も勢いは大事!初心者は怖いもの知らず
ロードバイクは普通の自転車と違って、そこまで力使わなくても速く進んでくれるから、片道8km程度ならすぐそこという感覚が不思議で、最初は乗るだけでワクワクが止まりませんでした。
その頃は新宿に住んでいたので、池袋の自転車屋までの往復がちょうど16kmぐらいの距離でした。初めて家から往復した時、自分の足で16km漕いだんだ……!とかなり感動したことは今でも鮮明に覚えています。
もっと自分の足で遠くまで行ってみたいと思うようになって、32km、64km、128kmと走行距離を延ばしていったのは、自転車に乗り始めてわずか一週間での出来事でした。初めて100km超えを走った日はその日の昼に思い立って夕方に出発、帰宅が翌朝の5時だったという……。よくも悪くも行動力だけは人一倍あるので、正直無謀なこともいっぱいしてきました。
漫画からロードバイクに入ったので、スプリンターだの、クライマーだの、脚質云々の話には興味津々でした。大して乗り込んでいない段階で分かる訳がないと今なら客観的に見られますが、当時はただ素直に自分は何に向いているのか気になりました。
「そうだ、山を登ってみよう」
ロードバイクを購入して4ヶ月間、それまではサイクリングロードや街中しか走ってこなかったので、峠道というものは未知の領域で、怖いけどすごくワクワクしました。
初めて登った峠は、関東の方なら誰もが知っているであろう「ヤビツ峠」でした。
ピクニック気分で撃沈、初ヒルクライムの洗礼
都内から最短距離でナビアプリを付けたら、裏ヤビツの方に案内されました。
秦野方面から登る表ヤビツに比べて、宮ヶ瀬方面から登る裏ヤビツルートはかなり緩い登坂です。距離18kmに対して上昇量は500mアップ未満、最初の10kmほどはほぼ平地とアップダウンの繰り返しです。
一番の失敗は真冬の2月に登りに行ったことですかね……。
真冬だと山の道は凍結するんだ…と…その日に初めて知りました。無知って怖い……。
標高300mの宮ヶ瀬湖周辺の路肩にすでに積雪があったのですが、札掛橋(ラスト6km地点)からは完全に北斜面となり、10cm以上の積雪とアイスバーンの連続。
普通はその状況だと元の道を引き返すところですが、何故か意地になって頂上を目指しました。
結局雪で登れない区間や斜度のキツい区間はほぼ降りて押し歩き、頂上まで3時間はかかったと思います。
簡単には登れないから山に魅せられた
初ヒルクライムの感想は、「とても辛かった」の一言でした。
普段街中を颯爽と走っていたのが嘘だったみたいに、山に入ると時速5kmでしか進めなくて、これ降りて歩いた方が速いのでは?と、誰もいない山奥で思わず声出して笑ってしまいました。恥ずかしながら、もしかしたら最初からすいすい登れるかもしれないと、どこか淡い期待を抱いていた自分がいました。
かなり悔しかったですね……。
頂上から秦野方面に降って行った際に、軽々と登ってくるサイクリストとすれ違って衝撃を受けました。自分と違って重力に逆らって登れる人はとてもスマートでかっこよく見えました。
ちなみに初ヒルクライムの装備はというと、ユニクロのヒートテック、原宿で買ったフード付きのパーカー、スキニージーンズ、百均の毛糸の手袋。真冬の雪山とは思えない舐めきった格好といったところですね。今思えば無事生きて帰ってこられて本当によかったです。
また、サイクリングはピクニックだと思い込んでいたので、合皮のリュックを背負って中に1日分の食料と水分補給のペットボトル3本を入れて登っていました。
「軽量化」という言葉を全く知らなかった時代なので、なんだか懐かしいです。
でも、とても辛かったはずなのに、不思議と山を嫌いにはなれませんでした。
むしろ簡単には登れなかったから、山に憧れ、恋をした。
ヒルクライムは芸術、峠道はロマン。
最初は苦手意識すら抱いていた自分がどうやって山と付き合ってきたのか、どこで踏み外して今に至ったのか。各地の峠を巡った体験や、ヒルクライムの魅力、ここは行って欲しいマイナーな峠道紹介など、これからの連載で書いていく予定です。
よかったらお付き合いください。