【初心者ライダー実践講座】指でバランスを整える方法~自転車の処方箋#18

「自転車の処方箋」は、元プロロードレーサーの管洋介さんが、サイクリストの悩みにスパっと回答する連載企画です。今回は番外編として、FRAMEの読者を招き、管先生が直接レクチャーした模様をお伝えします。

初心者でも劇的にバランス感覚が高まる!?

———今回参加してくれたazuさんとmugiさんは、ともにロードバイク歴が2年以内。走ってきた総走行距離は1000km程度です。二人のロードバイクとのストーリーを聞いてみましょう。

azuさん 「健康のためにジョギングをしていたのですが、マラソンに挑戦したらすごくキツくて…。『他に楽しいスポーツをとりいれよう!』と考えた末にたどり着いたのがトライアスロンでした。とはいえ小学生以来ほとんど自転車には乗っていないですし、少し不安もあります。お気に入りのスコットで、アルプスあづみのセンチュリーライドにチャレンジしてみたいですね」

mugiさん 「通勤用にクロスバイクを新調しようと自転車屋さんを訪ねたところ、付き添っていた夫がロードバイクの美しいフォルムにゾッコンとなり、私を差し置いて購入!『ずるい~』と当初の目的をすっかり忘れ、私もロードバイクを購入していました! ママチャリの感覚では難しいロードバイクに、基礎を知らずに乗っているのも…と思い受講しました」

———こうして集まったお二人に“平地のダンシング”をテーマにバランス感覚をつかむコツを学んでいただきました。

まずはお腹で車体のバランスをとれるようになろう

———最初に直線路をお二人にスタンディングの状態で徐行してもらいました。するとペダルを回していた時とは一転、自転車のバランスを保とうと少しナーバスになる姿が…。

管さん 「中腰で不安定と感じる大きな原因のひとつに、ハンドルを押さえ込んで上体を浮かそうとする動きが挙げられます。これではスピードが落ちるほどハンドリングで安定をとろうとするからですす。まずはペダルを漕がずにクランクを水平に両足荷重でスタンディングし、お腹を伸ばして体幹を硬め、重心のニュートラル位置をつかみましょう。さらにヒジとヒザをリラックスさせて上体を上下に重心移動してください」

———するとmugiさんは、やや腰が反り気味ではあるものの胸と腰が同時に落ちて、腰回りの体幹で安定をとれるようになりました。

mugiさんの中腰フォーム。目線を前へ向け続けることで、お腹が伸びて体幹で車軸の重心バランスがとれている。
▲mugiさんの中腰フォーム。目線を前へ向け続けることで、お腹が伸びて体幹で車軸の重心バランスがとれている。

———一方のazuさんはお尻が最初に後方へ落ちてしまい、ももの筋肉がが張ってプルプルと震えています。

azuさんの中腰フォーム。ハンドル荷重にすることを意識しすぎて腰が後方に大きく落ちてしまう。
▲azuさんの中腰フォーム。ハンドル荷重にすることを意識しすぎて腰が後方に大きく落ちてしまう。

管さん 「ヒジを内側に構えすぎると、胸の位置とハンドルへのリーチが遠くなって腰が後へ落ち、ハンドルをつかんで中腰をキープしようとしてしまいますよ。ヒジを絞らずに、やや外に開いてお腹を伸ばし、上下に重心を動かしてみましょう」

「ヒジをやや外へ開くイメージで」とレクチャーする管先生。
▲「ヒジをやや外へ開くイメージで」とレクチャーする管先生。

管さん 「ブラケットを強く握り込んでしまうと腕、肩まわりが強張り、ハンドルを押さえ込んでしまうので、ブラケットと手の内側に隙間を空けるように構えましょう。ブラケットをやや軽めに握り、中指を中心に持つとでヒジが軽く外へ開き、ハンドルが懐に入り安定感が増します。ワキも少し開のでお腹を伸ばしやすく、体幹でバランスを取りやすくなりますよ」

ブラケットと手の内側に隙間を空けるように構えると、ハンドルが懐に入りやすくなる。
▲ブラケットと手の内側に隙間を空けるように構えると、ハンドルが懐に入りやすくなる。

段ボールを振るイメージでダンシングしよう

管さん 「体幹で中腰のニュートラル位置をつかむ」と「中指を中心にブラケットを握りヒジを外へ軽く開く」。この2つを複合し中腰で安定が取れると、一気に平地のダンシングのフォームへ近づきます。そして以前に紹介した、肩幅程度の段ボールを抱えて中に入ったボールを真ん中へ戻すように振るイメージを組み合わせると、ダンシングの動作は完成です。

エアーでダンシングの振りを確認する二人。
▲エアーでダンシングの振りを確認する二人。

管さん 「ペダリング中はカカトを上げた状態をキープしてダンシングをしてみましょう!」

———少し重めのギア、少し軽めのギア、リズミカルに踏んでいけるギアを確認しながらダンシングの練習をはじめると、瞬く間に上手くなっていくmugiさんとazuさん。10分も走ると平地のダンシングフォームにも自信が出てきたように見えました!

400mの直線路を2往復しただけで平地のダンシングのフォームを身につけたmugiさん。
▲400mの直線路を2往復しただけで平地のダンシングのフォームを身につけたmugiさん。

管さん 「ダンシング中も頭が揺れず非常にリズミカルな平地のダンシングができていますね!体幹を軸にペダリングに合わせてバイクを振っていく、美しいフォームです」

mugiさん 「指1本で身体の意識する部位が細かく変わってくることに驚きました! 平地のダンシングに適正な重心の位置も学ベたのは嬉しいですね」

ヒザが閉じすぎて腰の引きが少し強いものの、安定感が増してきたazuさんのペダリング。
▲ヒザが閉じすぎて腰の引きが少し強いものの、安定感が増してきたazuさんのペダリング。

管さん 「バイクにしがみついた感じが抜けて大きく改善しましたね! 頭がブレずに力みを抜いてダンシングができています。中腰での安定感も大きくアップしていますよ」

azuさん 「上半身や腕の使い方で重心の位置をコントロールし、低速でも転ばない安定感を得ることができました!」

管さん 「女性は男性ほど力がないだけに、重心バランスのポイントをつかめば軽やかにバイクをコントロールできますね。今回のお二人の上達の早さをみて、改めてそう思いました! 女性が颯爽と華麗に走る姿はカッコいいですね!」

●バックナンバー
第1回:上手い下りの走り方
第2回:楽しく上るための回転数と心拍数の関係
第3回:予習が上りを楽にする
第4回:緩い上りは“もも裏”で効率的に上る
第5回:平均勾配7.8%の激坂の走り方
第6回:斜度に合わせてシッティングとダンシングを使い分ける
第7回:バイバイ立ちゴケ! 走行スキルを高める“スタンス”とは?
第8回:「自転車が下手だな」と思うなら…各段にうまくなる“チョコチョコ乗り”を
第9回:段ボールでマスターする平地のダンシング前編
第10回:“華麗なダンシング”のための3つのポイント
第11回:スマートに止まるブレーキングの極意
第12回:安全に止まるためのバイクコントロール
第13回:3つのスキルでコーナリングの達人になろう(基本編)
第14回:3つのスキルでコーナリングの達人になろう(外足荷重編)
第15回:3つのスキルでコーナリングの達人になろう(リーンイン・リーンアウト編)
第16回:リム打ちパンクは“抜重”で回避する
第17回:【カッコイイ】段差回避のテクニック“ホッピング”

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BY管洋介

1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。

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