ストライダー カスタムの豊富な経験を持つ筆者が、カスタムの効果やおススメのものを紹介する連載企画。第九弾となる今回は、ストライダーレースで好成績を残すための練習方法がテーマです。導入編①では、子供たちの身体的・精神的特徴や成長に必要なトレーニング、ストライダーの効果について取り上げます。
導入編②では、ストライダーにどう取り組むか、レースに出場する際に必要な「スポーツマンシップやメンタルスキル」についても触れています。ぜひ参考にしてください。
▼導入編②はこちら
目次
練習方法もカスタムするのが効果的
いまの子供たちは、外で多様な遊びをしなくなってきたことが影響してか、運動能力が低下してきています。驚くことに、逆上がりや登り棒、雲梯(うんてい)、側転、でんぐり返しなど、以前は当たり前にできていたことができない子が増えています。
「子供たちには個人差があり、成長のスピードに違いがあります」が、最初はできなくても練習すれば必ずできるようになるものです。ストライダーにおいても同様で、効果的な練習をすれば、必ず上手く走れるようになります。そのためには、ストライダーの練習方法もカスタムしていくことが必要です。
注:ここでのカスタムとは「目的を達成するために、必要に応じて仕様を変更すること」を指しています。目的(何のためにやるのか)を決めると、方向性が明確になります。
子供は段階的に成長する
よく言われているのが「子供は、大人のミニチュアではない」ということ。
まだ骨や関節ができあがっていないので、身体に無理な負担をかけることを避けなければなりません。子供と大人の身体は大きく異なっていて、大人と同じようなトレーニングをするとケガをしてしまいます。大人は負荷を上げていくことで、体力や筋力が向上しますが、子供には自重をかける程度が推奨されています。
「スポーツは、ケガとの戦い」とも言われています。ケガを防ぎ、スポーツを長く楽しめることは、人生をより豊かにしてくれることでしょう。そのためには、子供たちの身体ついての知識を学び、科学的根拠に基づくトレーニングを取り入れるようにしてください。
スキャモンの発育曲線
アメリカの医学者「リチャード・スキャモン」さんが、子供の発育についてとても分かりやすく説明しています。このグラフは、身体のさまざまな器官の成長パターンを一般型(身長、体重など)、神経型(運動の器用さやリズム感)、生殖型(生殖器)、リンパ型(内分泌器官、リンパ節)という4つの型に分類し、20歳の時を100%として、これらの成長による変化を曲線で表したものです。
スキャモンの発達曲線を見ると、子供の成長段階と身体的な特徴がイメージしやすくなります。ストライダーの練習方法をカスタムするうえでも重要なポイントなので、ぜひこのグラフを頭の中に入れておきましょう。
運動神経をつかさどる神経系
4つの型の中でもっとも注目して欲しいのが「神経型」です。神経系とは、頭で考えたことを身体に指令する神経回路のこと。反射神経だったり、リズム感だったり「いわゆる運動能力のこと」を指します。器用な人ほど、この神経系の発達がすごいのでしょう。
幼児期は神経系が発達する時期
神経型の曲線を見ると、5歳で大人の80%くらいまで到達しており、12歳の頃には大人とほぼ同じくらいになっています。これは、身体を思い通りに動かせるかどうかの神経回路が、すでにでき上がっていることを意味しています。裏を返せば「それまでに、回路をつなげておく必要がある」ということです。
手先を動かす遊びで集中力がアップ
幼少期から「切る、貼る、折る、塗る、結ぶ、巻く、通す、丸める、包む、ちぎる」といった動作の遊びをすることで、指先がとても器用(巧緻性)になると言われています。この巧緻性(こうちせい)が優れている子ほど、集中力があって、勉強することも苦にならないそうです。外遊びも大事ですが、神経型に注目してみると、手先を動かす遊びの大切さも無視できないと言えます。
「即座の習得」が可能なゴールデンエイジ
ゴールデンエイジ(黄金期)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
近年では9〜12歳頃を「ゴールデンエイジ」と呼んでいますが、神経の発達がほぼ完了しているため、高度で複雑な運動が見ただけですぐにできてしまう「人生の中で特別な時期」と言われています。
ゴールデンエイジは運動能力を伸ばすことに適しており、この時期までに「神経回路がたくさん繋がっていればいるほど、なんでも出来てしまう」状態になります。神経回路は、脳が動きを覚えると、いつでもその動きが再現できます。「練習は身体で覚えろ!」などと言われていますが、数年先でも身体が無意識にその動きを覚えていることってありますよね。
運動神経の基礎を築くプレゴールデンエイジ
幼少期にしっかりと運動のベースを築いていれば、その後劇的に運動能力が開花するゴールデンエイジでの活躍につながっていきます。プレゴールデンエイジ(3〜8歳)は、敏しょう性を鍛える最適な時期であり、脳の神経回路に刺激を加えれば加えるほど、運動能力が向上します。
これこそが、プレゴールデンエイジが大切と言われている理由です。運動能力が高ければ、スポーツをすること以外にも、車の運転をより繊細に操作することもできるでしょう。器用さを引き出す時間は、限られているということを覚えておいてください。
子供たちの精神的な特徴
内発的動機づけが必要
プレゴールデンエイジの子供たちは、一つのことに長い間集中することができません。瞬時に色々なものに興味が移ってしまうので、練習にも工夫が必要です。無理に強要しても、本人のやる気スイッチが入っていなければ、どうしようもできません。まずは「楽しくワクワクさせる」ことがポイントです。
気をつけたい「バーンアウト」
ストイックな取り組みは、親子にとって長続きしません。そして、その多くはスポーツから離れてしまう傾向(バーンアウト)があります。子供に自覚が生まれてくると、何のためにやっているのかが分からなくなるからです。
最近ではサスティナブル(持続可能性)な取り組みが注目されていますが、単純に「楽しいからやりたいと思えることが、長続きする秘訣」だと思います。怒ってやらせる(外発的動機付け)だけでは、子供を変えられません。
成績ではなく過程・努力を重視
子供は「好きなことをする時ほど、驚くほど熱中する」という特徴を持っています。そして、負けたくない、親に認められたい、話を聞くのが苦手というのが一般的だと思います。競争に負けたり、物事が思うようにいかない時に怒ったり泣いたりするのは、自らをコントロール(感情の抑制)することが、まだできないからです。
挑戦する(できないと言わない)、最後までやりきる(負けてもいいから諦めない)、ルールを守る(ズルをしない)、失敗を許す(まわりを尊重する)ことができるようになるだけでも、十分な社会性をもった人に成長できます。
子供の成長に必要なトレーニング
運動神経を左右する「コーディネーション能力」
運動能力は、7つの能力が複雑に組み合わされています。これらをうまく調整できる能力を「コーディネーション能力」と呼んでいます。複雑な動きをしようとすると、思い通りに身体が動かないことってありませんか?その運動能力のことです。
コーディネーション能力の構成要素
バランス能力 | バランスを正しく保ち、崩れた態勢を立て直す |
リズム能力 | リズム感を養い、動くタイミングを考える |
変換能力 | 状況の変化に合わせて、素早く動きを切り替える |
反応能力 | 合図に素早く反応して、適切に対応する |
連結能力 | 身体全体を使って、スムーズに動かす |
定位能力 | 動いているものと自分の位置関係を把握する |
識別能力 | 道具やスポーツ用具などを上手に操作する |
神経系を鍛えるトレーニングが効果的
プレゴールデンエイジの時は、脳にいろいろな刺激を与え、このコーディネーション能力を高めてあげることが大切です。
運動神経を鍛えるトレーニングは、スポーツだけでなく情動面でも効果が得られます。まず、7つの能力を総合的に向上させることにより、スポーツの6つの基本動作(走る、跳ぶ、投げる、打つ、捕る、蹴る)を短期間に身につけられます。応用力のある動きや新しい発想ができるようになりますし、脳の働きが活性化するので、情動面の改善にもつながると言われています。
鬼ごっこやドッチボールなどは、楽しみながらできる効果的なトレーニングと言えます。体幹トレーニングやリズムトレーニングなども、YouTubeでさまざまな方法が紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
柔軟運動も必要
柔軟運動も忘れてはいけません。可動域が広いことは、体を大きく使って力を最大限に伝えることができます。これは、スポーツ選手にとって大きなアドバンテージになります。さらに、体が柔らかいことは、ケガの予防にもつながります。
ストレッチは即効性が高く、関節の動きがすぐに改善しますが、すぐに元通りになってしまう特徴があります。継続的に、ストレッチに取り組むことが一番でしょう。
ストライダーに乗ると、どんな効果があるの?
近年、ストライダーが注目されているのは、ランバイクに乗ることで身体をバランス良く(バランス能力、連結能力、識別能力)動かせるようになるからです。さらにレースに参加すると、スタート時には(リズム能力、反応能力)、コース走行では相手に反応することで(定位能力、変換能力)が高められます。
レースへの参加で得られるもの
ストライダーレースは、さまざまな能力が絶え間なく複雑に絡んでくるので、コーディネーション能力を高めるには、うってつけと言えます。そして、子供は選手として尊重される存在になります。
子供たちはルールを守り、フェアプレーをしながら、相手と一緒にコースを走ります。そして、自分の判断でチャレンジを繰り返し、ゴールの瞬間まで全力で走り続けるのです。これは、多くの親が感じる「ストライダーをやってて良かった!」と思える瞬間だと思います。
スポーツの土台を築ける
U6ランバイク選手権が掲げている「ランバイクを全てのスポーツの始まりに」と言う言葉は、いろいろな動きが身につくランバイクに乗ることで、その後のスポーツの土台を築こうというキーワードです。
“ランバイクを全てのスポーツの始まりに” U6 RunBike JAPAN CUP公式サイト
レースへの参加は未来への投資
子供たちが幼い時からスポーツの楽しさを知り、その後の活躍に繋がるストライダーレースに参加することは、未来への投資とも言えます。しかしながら、子供たちにとって「歩く・遊具で遊ぶ」という経験も必要なことですので、ストライダーに乗せすぎるのは避けたいものです。やはり、さまざまなことを体験させてあげることが一番なのでしょう。
※投資とは、お金をたくさんかけるという意味ではなく、調べたり、会場に連れて行ったりする親御さんの時間やエネルギーのことです。
導入編②では、ストライダーにどう取り組むか、レースに出場する際に必要な「スポーツマンシップやメンタルスキルについてご紹介します。
▼導入編②はこちら
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