2020年最新|ランドナー「旅する自転車」おすすめ12台
キャンプや小旅行の足として活躍するランドナー。往年のファンはもとより、近年のアウトドアブームで気になりだした人もいるだろう。
ランドナーはいわゆるロードバイクとどう違うのか。ランドナーの特徴から、完成車のおすすめはもちろん、現在もオーダー可能なランドナー工房まで、「自転車×旅」の魅力がたっぷりつまった世界を堪能いただこう。
ランドナーとは「旅する自転車」
ランドナーとは、フランス発祥のツーリング車のこと。フランス語の「ランドネ」(小旅行)に由来する「旅する自転車」の意だ。日帰りや2~3泊程度のキャンプ旅行用途で使われることが多く、バッグ類をたっぷり積み込める仕様になっているのが特徴。
これに乗り、日本一周や世界一周にチャレンジする猛者も後を絶えない。
ランドナーの変遷
クラシカルな雰囲気が魅力のランドナーだが、時代にあわせランドナーのスタイルにも少しずつ変化が見られる。舗装路など環境の変化、パーツの互換性から、今や純ランドナーというよりも、新世代ツーリング車ともいえるモデルも浸透し始めている。2017年に惜しまれつつ生産終了となったGIANTの「グレートジャーニー」もそのひとつだった。
一方で、昔ながらのクラシックスタイルを愛好する人たちのための「正統派ランドナー」も、現在まで変わらず存在し続けている。
*)Wレバー:ダウンチューブの左右につけられる変速シフター。現在の手元操作できるシフターと違い、ハンドルから片手を離して変速する。
ロードバイクとどう違う?ランドナーの特徴
旅仕様に設計されたランドナーは、普通のロードバイクと一味違う。特徴的なパーツを解説しよう。
ハの字型ハンドル
ロードバイクとの違いは、まずランドナー用に設計されたドロップハンドル。ハンドルを握った手がフロントバッグに干渉しないよう、ハの字形状にされている。
フレーム:クロモリ製&ホイールベースが長めのジオメトリ
頑丈で剛性があるクロモリ(クロムモリブデン鋼)製が主流。非常に優れた強度重量比を持ち、溶接が容易である。衝撃に強く、しなやかなウィップ感を持つことから自転車フレームに活用されてきた。現在、ロードバイクの主流はカーボン製だが、転倒などで破損したフレームは修復が難しい。しかしクロモリ製は溶接を加えることで修復が可能で、マニアからの信頼も厚い。難点は腐蝕耐性が十分でないことである。
◆修復可能ってどういうこと!?自転車旅のプロが実体験を元に解説。
またチェーンステーのチューブが長めでホイールベースが大きい。これは直進安定性を高めるため、あるいは太いタイヤを履いてフェンダーを装着するためなどの理由がある。これらすべてが疲れにくく長距離を走れるための仕様なのである。
太めのタイヤ
700×23〜25Cのロードバイクに比べ、ランドナーの履くタイヤは太い。650A、または650Bという26インチ系のリムを使用するからだ。そのため650×35Aや650×38Bといったサイズのタイヤが主流。幅は30mmほどだ。
左がランドナー向けパナレーサー コルデ・ラヴィ(Amazon)、右が一般的なロードバイククリンチャータイヤパナレーサー ジラー(Amazon)
エアボリュームが多くなるため、荷物を積んだ際も安定性に優れている。また、荒れた路面でも衝撃を吸収するサスペンション替わりとなり、ライダーの疲労を軽減。若干低圧でも走ることができ、接地面積が大きめとなることから乗り心地も良い。
荷物積載のためのキャリア
キャリア=荷台を取り付けられるダボ穴が必然的に設けてあるランドナー。できれば走行中は身体に荷物を背負いたくない。荷物はキャリアに載せ、身軽に走りに専念できるほうがよいだろう。通勤通学でもキャリアはあったほうが楽ちんだ。
泥除け:雨天走行も想定
泥除け=フェンダーも必要なパーツ。出先は好天ばかりではない。ロードバイクは見た目や重量の面で取り付けしないことが多いが、ランドナーの場合は雨が降ることを想定してフェンダーを取り付けることを推奨する。標準装備しているものがほとんどだ。
輪行がしやすい設計
旅先への移動、またはトラブルで鉄道を利用する際、輪行のしやすさはランドナーにとって大きく重要。折りたたみ式のフェンダーやダブルレバー式シフト、フォーク抜きヘッドなどの仕様で、輪行袋にすっきり収納できるように設計しているものを選びたい。
また旅先での機材アクシデントを考慮し、どこでも入手しやすいパーツ構成となっているモデルが主流だ。
ランドナーがハマるシチュエーション
「旅」と一言で言っても、そのスタイルは多岐に渡る。その一例を紹介していこう。それにランドナーは決して旅専用ではないのだから、ランドナーで街を流したっていいのだ。
キャンプ
前後にキャリアを取り付け、キャンプ道具をたっぷり詰め込められる。最近はキャンプ道具も軽量でかさばらないから、ランドナーとの融和性も抜群。
◆まずはご近所キャンプ、やってみる?
→「クロモリロードバイクで行く「ゆるキャン」、初心者はどんな装備を準備すればいい?」
◆自転車×キャンプの魅力にどっぷり浸かる!
→「自転車旅のプロ山下晃和さん(モデル兼トラベルライター)が、バイク&キャンプの楽しみ方を伝える連載企画」
◆関東の自転車で行けるキャンプ場をピックアップ
→「初心者むけ!自転車でいけるキャンプ場15選 ~関東編~」
小旅行や長距離ツーリング
長距離ツーリングでも活躍するランドナー。旅先を渡り走り、ときには輪行で別の場所へ移動するなど、旅の領域がグンと拡がるのが魅力だ。
日本一周・世界一周
旅のプロフェッショナルはランドナーで日本、そして世界を走破する。大荷物を積んでも丈夫な機材をオーダーメイドするなど、その夢を追う者は絶えない。
通勤通学や街乗りなど日常使いにも
日々の足替わりになってくれるのが、ランドナーのもうひとつの特徴。キャリアラックとフェンダーを取り外し、街を優雅に走り流すのも良い。
【完成車】ランドナーおすすめ7選
ここからは実際のモデルを1台ずつご紹介していこう。まずは完成車(DAVOSのみフレームセット)で入手可能なモデルだ。
ARAYA(アラヤ)|TURツーリスト
日本におけるホイールのゴールデンサイズであるハチサン26×1-3/8を採用したモデルで、オールラウンドな走行性を有しており、かつ日本の自転車店ならほぼ入手可能。フレームポンプ用のペグやアルミ製のフェンダー、フロントバッグをサポートする前キャリア、輪行を考慮したダルマネジやチェーンフックなど、ランドナーの仕様をふんだんに盛り込んでいる。カスタムによって本格ランドナーのサイズともいわれる650x38Bのホイールを装着することもできる懐の広さも魅力である。
- 価格:99,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・クラリス
- サイズ:490mm, 530mm
- カラー:ナチュラル―カーキ、ボルドーレッド
TREK(トレック)|520 Disc
開けた道のために作られたスチール製ツーリングバイク。トレックのラインナップの中でも最も長い歴史を持つ。ラックとフェンダー用マウント、登り坂に適したワイドなギヤ比、安定したツーリング向けジオメタリーにより、荷物を満載して数日間の旅に出たり、一日中冒険したりするのに最適な一台。
- 価格:145,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・ソラ+アリビオ
- サイズ:48、51、54、57
- カラー:Anthracite、Diablo Red
公式HP:520 Disc|TREK
丸石サイクル|Touring Master(エンペラーツーリングマスター)
長く愛されるスタイルを現代に継承する650Aランドナー。オリジナルヘッドパーツと分割式泥除けの採用でコンパクトに輪行が可能だ。カットラグで組まれたオールクロモリフレームは、美しさだけではなくタフさを兼ね備え、あなたと旅の道具一式を確実に目的地へと連れて行ってくれる。
- 価格:130,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・クラリス
- サイズ:490、520、550mm
- カラー:グリーン、オレンジ
公式HP:Touring Master|丸石サイクル
LOUIS GARNEAU(ルイガノ)| BEACON9.0
カナダ生まれのルイガノによるランドナー。リアキャリアを標準装備し、バッグを用意すれば今すぐにでも旅に出られる一台だ。ハンドルは特殊な形状(8の字)を描くバタフライ型で握る部分が多く、さまざまなポジションをとることができて長距離ライドでの疲労を軽減してくれるだろう。付属のセンタースタンドは、大きな荷物を搭載したままでも安定して駐輪することが可能。チューブのバルブは旅先でも簡単に空気を充填できるよう、あえて汎用性が高い米式を採用している。
- 価格:105,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・デオーレLX
- サイズ:370、420、470、520mm
- カラー:LGマットブラック
MASI(マジィ)|スペシャーレ・ランドナー・エリート
イタリアの自転車ブランド・マジィの2020年モデル。格式的なランドナーというよりは、走破性バツグンの650B×47mm極太タイヤにシマノ・105コンポ、ディスクブレーキと、トレンドのグラベルロード的要素を汲んだ現代的なモデル。それでいて鋲打ちサドルやスキンサイドタイヤといったクラシカルなスペックも魅力的。バッテリー切れの心配がないハブダイナモライトなど、ランドナーらしい長旅への装備も万全だ。
- 価格:199,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・105
- サイズ:49、51、53、56
- カラー:グロスブラック
公式HP:SPECIALE RANDONNEUR ELITE|MASI
DAVOS(ダボス)|603 ランドナー
その名はスイスの山間にある景勝地・ダボスに由来する、フカヤのオリジナルブランドの一台。クラシックテイストを求めるオールドタイマーから、耐久性を重視するツーリストまで、多くのユーザーから高い評価を受けてきたシリーズの復刻版だ。前モデルまではデカールだったヘッドマークをバッジに変更。ダイナモをリアステーに取り付ける際に、電線をフレーム内部に通すための穴も用意されている。650Aは軽快車で使われる26インチのタイヤと同じため、緊急時の交換は便利だろう。リアエンド幅は130mmを採用。
- フレームセット価格:62,963円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- サイズ:480、500、520、540mm
- カラー:ディープグリーン、フロリアローズ
*)推奨パーツ仕様の完成車参考価格:139,657円(税抜)
公式HP:DAVOS|FUKAYA
KONA(コナ)|スートラ
MTBの世界で定評があるKONAが手掛けるランドナー。剛性が高いクロモリフレームにブルックス製サドル、コルクのバーテープ、BarConシフター、フェンダーとラックを標準装備。また、コンポーネントには最もワイドなギヤ比のシマノ・デオーレ(3×10速)を搭載し、転がり抵抗の少ないWTBホイールを採用している。タイヤは700×40C。2020年モデルはチェーンガードを装備、日常使いにも最適だ。
- 完成車価格:168,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・デオーレ
- サイズ:46、48.5、52、54
- カラー:グロスデザートグリーン
公式HP:SUTRA|KONA
【オーダーメイド】おすすめ5選
ランドナーのオーダーメイドを受け付けている工房もある。選んで間違いのない工房を厳選して紹介しよう。
トーエイ
設立は1955年。日本のランドナーの歴史はトーエイ(東叡社)とともに歩んできた。美しく調和のとれた自転車を作ることで人気が高い。ランドナーなどツーリング車を得意とするが、ロードバイクや小径車など幅広く制作可能。フレームはもちろん、キャリアやステム、変速機などもオリジナルで作ってしまう技術力は、海外でも高く評価されている。
オーダーは全国各地のトーエイフレーム取扱店を通じて注文できるほか、埼玉県川口市の工房でオーダーの相談・制作も受けている。2020年現在の納期は、3ヶ月から半年ほど。
東叡社のイマがわかるインスタグラムも要チェックだ。
公式HP:東叡社
グランボア
日本のオーダーメイド工房。ランドナーはただ走るための道具ではなく、幾年月も共に過ごす旅の相棒だ。乗り手の個性に合わせたフレーム素材からの自転車作りに定評があるグランボアは、ノスタルジックなものだけではない。機能重視の現代のパーツで構成されている。フルオーダー、セミオーダーともに可能。
SWワタナベ
トーエイに12年勤務した後、伝説のビルダーと呼ばれる梶原利夫氏に師事した渡辺捷治氏が独立して作った工房。氏が作り出す自転車は、車種でカテゴライズされることがない。「ランドナーを作る」ではなく、どんな乗り方をするのか、どういう道を走りたいのか、どんな旅をするのか、乗り手のライドスタイルを徹底的に追求して自転車が作られていく。こだわりは「走りが楽しい自転車を作ること」。競輪のプロ仕様フレームでも優秀な成績と高い評価を得ている。
公式HP:SW.WATANABE
パナソニック FJC5(セミオーダー)
パナソニックのオーダーシステム「POS」によるカスタムモデル。大陸横断も可能にするロングツーリング専用車だ。ハードなアドベンチャーライドにおいてフレームにトラブルを負ってしまった場合も、クロモリなら一時的な修理がどこの国でも可能。ダブルバテッドチューブを採用した快適な走りや耐久性は、多くのサイクリストによって実証済みである。オプションでフロントキャリアを用意。
- 販売形態:フレームセット
- 価格:115,000円〜(税抜)
- カラー:全34色
- サイズ:460、510、550mm
公式HP:FJC5|Panasonic
CHERUBIM(ケルビム)
1965年、日本にスポーツサイクルが普及する以前の時代に創業された、オーダーメイド自転車の老舗工房。中でも「Super Touring」は、今の時代の規格で蘇ったランドナーだ。オーダーランドナーは敷居が高いと思われがちだが、そんなことはない。歴史を継承しつつモダンなテイストを散りばめ、より現代的な走りを実現。全体的なフォルムや細部に至るまで美しさを纏ったモデルは、あなたと世界中を旅する生涯のパートナーになってくれるだろう。ちなみに現在、世界一周の自転車旅行を敢行中の高橋せんまる氏も、ランドナーではないがケルビム製バイクに乗っている。
公式HP:CHERUBIM(ケルビム)今野製作所
2019年のランドナーも見てみる
まとめ
昨年度までラインナップされていたラレーのクラブスペシャル、ミヤタのアイガー、そしてビアンキのアンコラがカタログから消えた。いずれも良質なランドナーだったため、いささか寂しさを感じている。実際に今、ランドナーを作っているメーカーは絞られているのが現状だ。しかしランドナーに興味を持っていたり、実際に旅自転車として乗っている人は少なくない。少数精鋭のモデルの中から自分好みの一台を練ったり、旅を夢想してランドナーを探し求めるのは楽しいこと。そしてハマればハマるほど奥が深いのがランドナーの世界だ。決してスピーディーで、何かと競って走る自転車ではない。マイペースで走る喜びを知ることができるのがランドナー。旅の相棒として、その存在は大きい。