ストライダーの練習をカスタム!【導入編】~より子供の成長に合わせ・より効果的なトレーニングを②~
ストライダー カスタムの豊富な経験を持つ筆者が、カスタムの効果やおススメのものを紹介する連載企画。第九弾となる今回は、ストライダーレースで好成績を残すための練習方法がテーマです。
導入編①では、子供たちの身体的・精神的特徴や成長に必要なトレーニング、ストライダーの効果についてご紹介しました。
導入編②では、ストライダーにどう取り組むか、レースに出場する際に必要な「スポーツマンシップやメンタルスキルについて取り上げます。ぜひ参考にしてください。
▼前編はこちら
目次
ストライダーにどう取り組むか?
ストライダーは、どのように取り組むかでその効果が変わってきます。その取り組みは、大きく分けて「運動」と「スポーツ」の2つに分けることができます。
「運動」と「スポーツ」の違い
運動とは「一人でできるもの」だと思います。例えば、ランニングやストライダーに乗ること自体は、運動と言えるでしょう。これに対して、スポーツは競争相手がいたり、個人競技であっても審判が必要になったり、運動とは違ったゲームの要素が追加されます。
スポーツの世界は厳しいものですが「何のためにやっているのか?」を考えると、スポーツをすること自体が楽しかったり、仲間と一緒にプレーすることが好きだったりと、楽しいからやっていることが多いのかと思います。
大切なのは「楽しむこと」
ここで注意したいのが、厳しさのみを追求してしまい、本来の目的を見失ってしまうことです。スポーツから楽しさを奪ってしまうことは、避けなければなりません。ストライダーを運動に使うのか、それともスポーツとして使うのかで大きな違いがありますが、どちらにせよ楽しませてあげてください。そして1回でもいいので、ストライダーレースに参加してみてください。それは親子にとって、かけがえのない時間となるはずです。
プレイヤーズファーストの意味
「プレイヤーズファースト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
プレイヤーズファーストは「選手の成長が一番」という意味で、指導者やサポートする人々が守るべき考え方を表す言葉です。もともとは「プレイヤーズファースト、ウィニングセカンド」(選手の成長が一番、勝利は二の次)という形で使われていました。
選手第一とは、選手の希望をすべて叶えることではありません。判断の基準は「その子にとって、何が一番よいのか?」ということです。
参照:合言葉はPlayers First!!|日本サッカー協会
結果にこだわりすぎない
スポーツに限らず、音楽などでも親御さんがコンクールの入賞(勝ち負け)にこだわるあまり、結果的にお子さんが楽器や音楽を嫌いになってしまうケースがあるそうです。
まず大人が、いまどんな態度をとるべきかをきちんと理解することが必要です。勝ち負けにこだわりすぎて、試合で負けたら終わりだとか、レースで勝てないからこの子には向いてないなどと思ってしまう感覚を持つ大人が多いように感じます。
一方的な叱責をしない
我々大人が気をつけたいのが、子供が大人の顔色をうかがっていないか?ということです。「なんで、言われたとおりにできないんだ?」「練習通りにやりなさい」こうした声を聞くことがありますが、上手くできなくて怒鳴りつけられたら、子供はどんな気持ちになるでしょうか?
本当に子供のため?
子供は、小さな大人ではありません。子供と大人では、経験が違います。大人が言ったことが、すべて伝わるとも思えません。ここで考えてもらいたいのが「それって、本当に子供のためになっているんですか?」ということです。
子供を尊重し、より良い環境作りを考えていくことが、我々大人に求められる姿です。この目的に従っていれば「子供のために」をうたい文句にした「じつは、自分(親の欲求)のため」の言動は、できないはずです。
失敗の経験も大事
どの子にも、才能が伸びる瞬間は必ず訪れます。早咲きの子もいれば、遅咲きの子もいます。他の子とは比べずに、その子の成長を応援してあげてください。子供の努力が報われなくても、ガッカリしないでください。才能がある子供と才能がない子供がいるという考え方は、捨ててください。
子供にとって、他人と比べられることは、何よりもつらいことです。信頼し、認めてあげることで、その子にとって大きな力になるはずです。そして、失敗できる環境を提供することも、子供にとっての学びのチャンスとなります。失敗は、成功につなげればいいのです。
結果ではなくプロセスを褒める
褒めて伸ばすことは大切ですが、褒め方には注意が必要です。子供が褒められるために行動するようになると、親の顔色ばかり気にする子供になってしまいます。そして、結果だけを褒めてしまうと、子供はそれが達成できないとわかると、途中で挑戦をやめてしまったりもします。結果ではなく、そのがんばり(プロセス)を褒めてあげてください。
やる気スイッチが入る「声かけ」を
「結果がすべて」ではありません。レースで優勝したことがすごいのではなく、優勝できるように練習をがんばってきたことが素晴らしいのです。「スタートの蹴り出しが良かったね」とか具体的に褒めることも、何が良かったのかが明確になり効果的です。
自分で努力したいと思わせるような「主体性を持たせる声かけ」をしてあげると、子供は勝手に上手くなります(笑)「やる気スイッチが入る」声かけを探してみてください。
スポーツマンシップとは
スポーツマンシップの3つの心構え
- 尊重(相手や仲間、審判を尊重する心を持つこと)
- 勇気(自らの責任を持って決断し、実践する勇気を持つこと)
- 覚悟(勝利を目指して、全力を尽くして楽しむ覚悟を持つこと)
スポーツは相手に勝つと楽しいものですが、その相手がいないと楽しめません。レースで対戦するのは敵ではなく、相手なのです。そして自分だけではなく、対戦相手もいいレースをしようとしてこそ、素晴らしいレースが実現されます。自分さえ良ければいいという考えは、受け入れられません。
スポーツマンシップは、いいレースをするための心構えであり、勝つためにはどんなことをしても良いはずはなく、相手を押したりすることは許されることではありません。それを理解している人が、真のスポーツマンです。
スポーツマンの定義は、運動能力が高い人や運動が好きな人ではなく、運動する人でもありません。そもそも、運動能力とは関係がないものです。
勝利より大切なこと
スポーツは勝利することを目標にしますが、スポーツマンシップを理解することで、勝利よりも「もっと大切なこと」に気づくことができます。それは、仲間を思いやり、目標に向かって全力で努力し、自分を成長させることです。スポーツマンみたいにカッコ良く人生を生きていくことは、ルールを尊重し、勇気をもって何事にもチャレンジし、全力で人生を楽しむことにつながるのだと思います。
「グッドルーザー」を目指そう
スポーツは勝つこともあれば、負けることもあります。試合は相手がいることで、自分で全てをコントロールすることはできないからです。負けや失敗した時にそれを認め、そこから立ち直ることもスポーツマンに求められる姿です。
グッドルーザー(良き敗者)という言葉をご存知でしょうか!「良き敗者」とは、負けっぷりのいい人。結果を受け止めて、成長の糧にできる人です。
「お前のミスが原因だ」とか「相手がズルいやつだった」とか「審判のジャッジが…」などと、負けた言い訳を探す選手やチームは、負けたことを糧にできません。
「相手を称える」ことを忘れない
東京オリンピックのサッカー男子の試合で、日本とのPK戦で負けたニュージーランド代表が「試合後に残したホワイトボードに大きな反響」がありました。「日本代表の幸運を祈っています。頑張れ!」というメッセージを、ロッカールームに残したのです。これこそ素晴らしいスポーツマンシップ、本当に素敵な国、ニュージーランドバンザイと賞賛の声があがりました。
負けることは残念で悔しいことですが、ふて腐れたり、大泣きするのではなく、まずは戦った相手をリスペクト(称える)する。これが、グッドルーザーの考え方です。
「言い訳」をしない
シドニーオリンピックでは、柔道の篠原信一さんが決勝の誤審で敗れたことがありました。本当は「内股すかし」という返し技で「一本」でしたが、逆に「有効」をとられて負けてしまいました。その時、篠原さんは「弱いから負けたんです」と、一切の言い訳を口にしなかったそうです。
波紋を呼んだ「メダル拒否」
日本開催となったラグビーW杯では、残念なことがありました。決勝戦の後に行われた表彰式で、敗れたイングランドの一部の選手に、首にかけてもらった直後にメダルを外す行為があったのです。いくら悔しいからと言って、首にかけてもらった銀メダルをすぐに外してポケットに入れるのは、グッドルーザーのとるべき態度ではありません。
負けを糧に
人の真価が問われるのは、チャンスではなくピンチの時です。
負けたことを受け入れることは、どこが及ばなかったのかを考える機会になります。上手い下手に関わらず、全力で勝利を目指し、負けたら敗因を改善して、またチャレンジすればいいのです。
グッドルーザーになることで、負けたことを貴重な体験として学ぶことができます。これはスポーツをやる上で、とても大切なことです。
メンタルスキルの重要性
スポーツは、気合いで勝てるほど甘くありません。よく「気持ちで負けるな!」と言う声を聞くことがありますが「強い気持ちが欠けてるから、いい結果が出ない」のではありません。大切なことは、心の準備をすることです。
試合に臨む前にメンタル(気分)を整え、周囲からの期待を受け止め、不安に対処し、本番に備えるのです。困難な状況や脅威に直面している状況に対して、うまく適応できる能力(レジリエンス)があれば、結果が変わってくるのではないでしょうか。
トライする(して欲しい)3つのこと
- プレッシャーをコントロールする
- 自信がある人になる
- プレッシャーを与えない
プレッシャーをコントロールする
プレッシャーとは精神的な圧力(圧迫)を言いますが、プレッシャーには大きく分けて2種類あります。
- 自分で作り出すもの
- 他者からもたらされるもの
プレッシャーを感じることは、いいこともあります。それは、心地よい緊張感です。適度な緊張感は、自らが大きく成長できるチャンスです。しかし、逆にプレッシャーがいい影響を与えない時があります。大きなプレッシャーを感じると悪い影響(ストレス)を作り出してしまい、自分のプレーができなくなってしまいます。
プレッシャーは、チャンスやピンチの場面だったり、親が応援に来ている時、もしくは何でもない場面でも感じることがあります。つまり、これらは自分で作り出しているものがほとんどなんです。これが分かったら、あとは対処法を身につけるだけです。
対処法①:発想を転換して「ストレスを挑戦と受け止める」
プレッシャーを重荷と感じずに「期待が大きいということは、自分に可能性があるんだ。自分なら、きっとできる!」と思うようにして、それをエネルギーに変えてください。ピンチをチャンスに変えるんです。
対処法②:ポジティブに考える
人間は、考えていることが行動に出ると言われています。「失敗したら嫌だな」と考えるから、失敗してしまうのです。失敗しないためには「どうすればいいのか」を考えるようにしてください。
対処法③:あらかじめ想定しておく
先が見えなかったり、想定外のことが起こると、人は不安になるものです。そして、いつの間にかパニックになってミスを引き起こします。これは、どんな選手にも起こりうることです。そうならないように、これから起こることをいくつか想定しておいてください。
「自信がある人」になる
自信がある人は姿勢が良くて、堂々としていて、歩く時も前を向いています。相手から自信がないように見られると、それだけで「なめられてしまう」ものです。逆に、強そうに見られたとしたら「今日は勝てない」と、勝手に弱気になってくれるかもしれません(笑)
作戦①:強そうに振舞う
たとえ自信がない時でも、まずは顔を上げ、胸を張り、勝者のように(自信があるように)振舞うことを意識してください。相手の反応が変われば、結果も変わってきます。それが自信につながっていくのです。
作戦②:自分を信じる
何かに挑戦するとき、「こんなこと自分にはできない」「できる気がしない」「こんな練習きつすぎる」「優勝するなんて無理」そんなふうに考えていませんか?自分ができないと思っていれば、できることだってできなくなってしまいます。
自信とは、「自分を信じる」ことです。
自分に向かって、以下のような言葉をかけてあげてください。
「自分にはできない」→「きっとできる」
「こんな練習きつすぎる」→「がんばりたい」
「試合に勝つ自信がない」→「これをやれば必ず勝てる」
作戦③:繰り返し練習する
どんなことでも練習をすれば、ある程度はできるようになります。そして、できたことが自信につながり、さらにがんばれるようになります。自信は、自分以外の誰かがつけるものではありません。自分自身でつけるものです。
自信をつけたいと思ったら、練習を繰り返してしてください。そうすれば、自信がない状態でいることの方が難しくなります(笑) 負ける気がしない状態に持っていくのです。
プレッシャーを与えないようにする
ついついやってしまいがちな「優勝したらご褒美」といった、結果主義の子育てはやめたほうがいいと思います。「負けたらご褒美はないよ」と言っているようなものなので、結果が出なければ、自分には向いていないと思ってしまうかもしれません。そうなったら、やる気が入らず負のスパイラルに陥ります。
内発的動機づけを高める
勝てないことで、子供のやる気がなくなってしまうのは良くあることです。いまの自分ができる「全力プレー」が出せたなら、それは素晴らしいことです。そもそも、ご褒美のためにがんばるという動機付け(外発的動機)の使いすぎは、良くないと思います。「レースは楽しい、うまく走れたから嬉しい!」と自分から行動できる(内発的動機)ように変えていってください。ご褒美というより、お祝いという感じがいいですね。
失敗を許し期待を自制する
どんなスポーツでも同じですが、親の期待がプレッシャーになっています。そして、一番やってはいけないことは、悔しくないのか?と怒鳴ったり、怒ることです。「負けたら悔しがれ」と伝えることも逆効果です。次に向かって切り替えることができた方が、泣いているよりずっといいと思います。子供の失敗を許し、親は期待を自制する必要があるのです。
※メンタルスキルは、メンタルコーチの荒木香織さんの著書「心の鍛え方」を参考にしました。ラグビーW杯で、日本代表選手やエディー監督を支える大きな力になった方です。あの「南アフリカ戦のトライ」は多くの感動を呼びましたが、荒木さんのコンサルテーションの成果なのかもしれません。
まとめ
挑戦することを止めなければ、どんなにゆっくり進んでもいいと思います。目先の勝利を追い求めるのではなく、長い目で子供の成長をサポートしてあげてください。頑張ったことがすぐに結果に出るとは限りませんが、努力しなければ何も生まれません。諦めず一生懸命がんばったことは、とても大きな財産になります。努力した時間は、子供たちにとって価値のある時間なのですから……
さて次回は、実践編になります。ストライダーの練習方法や効果的な練習、各ランバイクチームの特色や練習会についてをご紹介したいと思います。
▼前編はこちら
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WRITTEN BY"ランバイクカスタム講座"管理人
東京都在住。個人ブログ「Tsuguo Yamaguchiのランバイクカスタム講座」を書いています。自身が所有していたレーサーレプリカNSR250SEをカスタムした経験から、子供用のランバイクも妥協のないカスタマイズをしています。大学で自動車工学を学び、専門分野はエンジンです。二輪・四輪以外にも、ヨットの運転も大好きです。