サイクルスポーツジャーナリストで、さらに国内トップクラスの強豪ヒルクライマーでもある “ハシケン先生”が、自転車がさらに楽しくなるように、乗り方のテクニックや愛車のカスタマイズ術を紹介する連載企画です。今回は、ヒルクライムを少しでも楽に、さらにはビックリするほど走りが変わるチューブラータイヤを紹介します!
上りの切り札、それがチューブラー
苦手な上り坂で、少しでも楽をして速く走りたい! そんな想いを叶えてくれる存在が軽量タイヤです。転がり、グリップ力、快適性といった走りの基本性能に加えて、ヒルクライムで重要な要素が軽さです。回転部分の中でも、とりわけ外周部に位置するタイヤは、軽くなるほど登坂性能が高まる傾向にあります。しかも、費用対効果も抜群です。
今回、ピックアップするのはチューブラータイプです。タイヤのタイプについては、こちらをチェックしてくださいね。パンク時にインナーチューブを交換するだけですぐに復帰可能なクリンチャータイヤとは異なり、パンク時にはタイヤ自体を交換する必要があるチューブラータイヤは、決してデイリーユースに向いているとは言えません。
それでも、チューブラータイヤには、軽さや乗り心地の良さを追求できる注目のモデルがあります。レース用の決戦タイヤとして割り切れば、ヒルクライムで切り札になります。それでは、オススメの軽量チューブラータイヤを紹介しましょう。
ヴィットリア コルサスピード チューブラー
世界中のトッププロチームへの供給率が高いイタリア生まれのヴィットリア。「コルサスピード」というモデルは、軽さと転がりのよさを追求したプロ御用達のレーシングタイヤだ。微粒子素材「グラフェン」を配合した極薄カーボンシート「G+」を採用。重量は23Cで200g、25Cで205gと軽量タイヤとしては重めだが、数値以上に転がりのよさを実感できる。また、軽量タイヤながら、ゴツゴツした突き上げを感じない快適性の高さも魅力だ。軽さを追求した結果、トレッド面は薄く耐久性はさほど高くないが、決戦仕様としてならパンクリスクを恐れるほどではない。
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Elite JET
知る人ぞ知る北欧チェコ発の総合タイヤメーカー「テュフォー」の最高峰レーシングモデル。実測重量は157〜158gほどで、モデル名に偽りなし。筆者自身も何度もヒルクライムレースで使用した経験を持ち、抜群の登坂性能に魅力を感じている。やや硬めの乗り心地ではあるが、比較的路面状況が綺麗であれば急勾配であっても軽やかな転がりを引き出してくれる。タイヤ幅は20mmと細くグリップ力は低めなので、下山時には少し注意が必要だろう。
ソーヨー シームレスロードCR h160
大阪の化学繊維メーカー「ダイワボウプログレス」が贈る自転車競技向けの高性能レーシングタイヤ。h160は、ケーシングを円形に包む際の縫込みを必要としないシームレース構造が最大の特長だ。これにより、真円形状を実現できるため、グリップ力の向上や快適性を高められる。実際、20Cで160gと超軽量ながら、シルキーで滑らかな転がりを体感できる。さらに、細身のタイヤながら路面を捉えるグリップ力も高い。決戦用にふさわしいプライスだが、ヒルクライムモデルとして人気だ。
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上りたいなら、1セット持っておいても損しない
チューブラータイプは、タイヤとリム面の作りがシンプルなため、タイヤ単体はもとより、ホイールとセットで考えた時の重量の軽さがヒルクライムレースでは武器になります。また、クリンチャーとは違ってタイヤが円形構造のため、路面からの振動をタイヤ自体がいなしてくれるところもメリット。もちろん、細身の軽量タイヤの場合は、空気圧が高すぎると、快適性を失うだけでなく、路面からの突き上げが高まって転がり抵抗が増えてします。チューブラータイヤのメリットを生かすためにも、適正空気圧をきちんと見つけましょう。
最後に、高性能クリンチャータイヤが普及している現在、チューブラータイヤのシェアは高くはありません。しかし、軽さや滑らかな走行感といったチューブラーならではのメリットは、ヒルクライムレースで大きな武器になることは事実。レースに向けた決戦タイヤとして、1セット持っておいて損はありません。
●バックナンバー「教えてハシケン先生」
第1回 上りのペダリングのコツは空き缶つぶし?
第2回 “上りやすい”フォームで走ろう!
第3回 ペダリングはタイミングが重要
第4回 ダンシングは“踏まずに乗せる”がポイント!
第5回 キツい坂道を楽に走るための呼吸法
第6回 “休めるダンシング”で急な上り坂も怖くない!
第7回 ラクに上れる!シフトチェンジの基本テクニック
第8回 腰が痛いと思ったら・・・1分ストレッチで筋肉をほぐす
第9回 首・肩のコリは30秒ストレッチで解消
第10回 お尻の痛みを解消する3つの方法
第11回 ひざ痛を予防するフォームとセッティング
第12回 努力いらずで楽に走れる“ながらエクササイズ”
第13回 座って寝て早くなる体幹トレーニング
第14回 いつもの階段で“ペダリング筋”を鍛える
第15回 “ながらエクササイズ”を実戦で確認する!
第16回 上る前の下準備“ウォーミングアップ”4つのポイント
第17回 一番カンタンな軽量化。インナーチューブを交換しよう
第18回 ヒルクライムにオススメの軽量クリンチャータイヤ